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職場の人間関係『腐ったみかんの方程式』その解き方|【読書日記】職場を腐らせる人たち

本書の結論
職場を腐らせる人とは
腐ったみかんです。

どうも、読書セラピストのタルイです。



いきなり古い話で申し訳ないですが、

あなたは「3年B組金八先生」に
出てきた「腐ったみかんの方程式」
ご存知でしょうか?

これは
箱の中のみかんが一つ腐り始めると
他のみかんも腐ってしまう。


だから、
腐ったみかんは
早く取り除かなければならない

というものです。


この方程式の問題に
金八先生はこう言います。

「辛いことがあって、あちこちぶつかっていれば、そりゃ風通しが悪くなってどこか腐ってくる。でも、人間の精神が腐るということは絶対ない!!


人間の精神が
腐るということは絶対ない!!



この言葉は、
人間の回復力と成長の可能性を信じる
教育者の姿勢を示しています。

人は過ちを犯すかもしれませんが
それを乗り越えて
より良い自分になることが
できるという

素晴らしい希望のメッセージです。



さて一方で、
精神科医としてこれまでに
7000人以上を診察してきた
片田珠美さんの著書によると

多くの企業のメンタルヘルスを
されている片田さんへの相談内容で

最も多い悩みは
職場の人間関係に関するもの

その大体が
職場を腐らせる人の言動
悩まされていることが
少なくないそうです。

長年にわたる臨床経験から痛感するのは、職場を腐らせる人が一人でもいると、その影響が職場全体に広がることである。腐ったミカンが箱に一つでも入っていると、他のミカンも腐っていくのと同じ現象だ。

本書より


さてさて、

果たして
「人間はみかんじゃない、
精神は腐らない
」というのは
フィクションなのでしょうか?


本書の内容を加味した上で
私の結論をお伝えします。

どうやら、
職場を腐らせる人たちがいると
『まわりの人間の精神』が
腐るようです。



そもそも
職場を腐らせる人とは
どんな属性の人なのか?


本書の第一章には
15人の職場を腐らせる人たちの
実例が紹介されてます。

1.根性論を持ち込む上司
2.過大なノルマを部下に押しつける上司
3.言われたことしかしない若手社員
4.完璧主義で細かすぎる人
5.あれこれケチをつける人
6.八つ当たり屋
7.特定の部署にこだわる人
8.いつも相手を見下す人
9.相手によって態度を変える人
10.他人のせいにする人
11.不和の種をまく人
12.他人の秘密を平気でばらす人
13.その場にいない人の悪口を言う上司
14.陰で足を引っ張る人
15.ストーカー化する人

本書より


なんか「いるいる」と
言いたくなりますね!

本書では
この15タイプの腐っている原因を
事細かに精神医学用語で解説しています。

この中から、
私がよく遭遇する
「根性論を持ち込む上司」
ピックアップしました。


◆根性論を持ち込む上司の心理


本書では、ある50代の男性が
営業部長を務める
食品会社の例が書かれてます。


この部長は日々
「気合と根性」を強調します。

訪問したり
電話をかけた数を
報告させたりもします。

そして
不満を抱く社員には
怒りをぶつける光景が
日常化していました。

彼は自身が若い頃にその精神で
成功を収めた体験を繰り返し語り

暗に残業を強要して、
定時退社した社員には
制裁を与えることさえあったそうです。


この不適切にもほどがある
昭和型の部長を構成するキーワードは

「幻想的願望充足」
「バカの一つ覚え」
「マニック・ディフェンス」

の3つです。


順に解説していきます。


⚫️幻想的願望充足

幻想的願望充足とは
理想と現実の間のギャップを
埋めるために

私たちが心の中で作り上げる
理想化された状態です。

気合いと根性を強調する上司の
思考回路の根底には

「みんながやる気を出せば
すべてがうまくいく」


と考えがちだが、

「すべてがうまくいけばいいのに」
という願望と

「すべてがうまくいく」
という現実を混同しています。

これは特に
子供の頃によく見られる
心理的な現象です。


現実の厳しさから
一時的に逃れるための
手段として機能します。


しかし、
成人になってもこの傾向を
持続する人々
がおります。

こうした彼の行動は、
実は現実を受け入れたくない
「現実否認」の表れだそうです。


⚫バカの一つ覚え


要は、
自分の考えや指示などを
言葉にして伝える「言語化能力」
十分ではない可能性があります。

彼のような営業職のリーダーは
体育会系の根性論を仕事に持ち込み

現実に合わない目標を押し付けたり

計画不足を根性論で
カバーしようとする傾向がある。

しかし、
これは現在の経済状況や環境では
通用しない手法であり

もう多くの人が、
その幻想性に気づき始めています。


上司や先輩からの指示を
実行することで
成果を上げてきた彼らは

自らのアイデアや学習には
あまり興味を示さない。

しかし、
彼らがリーダーとして
立場を変えると

新たなアイデアや
戦略が必要とされる中
とたんに行き詰まる。

どうしても
アイデアが思い浮かばないから

自分の成功の原動力になった
気合と根性の必要性を
繰り返すしかなくなる。

…これは悲しい人生です。


⚫️マニック・ディフェンス


これは困難な状況に直面した際に
気分を高揚させて
活動性を高める防衛機制です。

人間は目の前の現実を
直視したくないと
「軽躁状態」になるのです。


たとえば、
愛する人を亡くしたのに
「大丈夫、大丈夫」
と元気に振る舞ったり

多額の借金に
苦しんでいるにもかかわらず、
「金くらい何とかなる」
と楽観的に考えたりする人がいます。

しかし、
その躁状態は現実逃避であり
根本的な問題解決にはなりません。

そのため、
躁状態が収束した後には、
喪失感悲しみ罪悪感などの感情が

より強く押し寄せてくることが
一般的です。



ここで余談ですが、
「根性論を持ち込む上司」に
部下が絶対言ってはいけない
「言葉」が書いてありました。

それは、

「あなたのやり方は現実的ではない」
「あなたは現実を見ていない」


などと口が裂けても
言ってはいけないそうです。

部下にとっては、
彼の現実否認や行動に対して
直接的に指摘することは難しいです。

しかし、
具体的な数字や客観的な意見を提示し、
現状を認識してもらう努力

必要になります。

そこで、
彼らが現実を見るよう促す際には
非難や攻撃的な言葉を避けて

建設的なアプローチを取ることが
重要なのでした。



◆職場が腐る最大の原因


なぜ、腐った人間を
みかん箱で放置するかの如く扱うと
職場全体が腐ってしまうのか?


本書ではその最大の原因として
精神分析で「攻撃者との同一視」
と呼ばれる心理メカニズムが
働くことが挙げられるそうです。

これは、その人が
過去の屈辱的な体験を乗り越えるために
その体験を引き起こした人物の行動を
無意識に模倣する防衛反応です。


例えば、
虐待を受けた子ども
大人になってからも
同じ行動を繰り返すように

または
パワハラを受けた社員
昇進後に部下に対して
同じような行動を取るなどです。


このような行動は、
自分が受けた不公平を正当化するため

または
その体験を克服するための
試みとして行われることがあります。


このように、
職場を腐らせる人がいると

『まわりの人間の精神』が
腐るのです。


攻撃的な人がいる職場は、
その負の影響が広がりやすく

健全な職場環境を維持するためには
早期の対処が必要なのです。


問題が深刻化する前に
対処することが重要です。


◆どうやったら職場を腐らせる人は変われるのか?

防腐剤入り塗料で塗ってみるとか🤔


あなたはここまでを読んで

職場を腐らせる人が
変わることはないのか?

と疑問に思ったかもしれません。


これに関して本書の結論は
「難しい」です。

ほとんど不可能といっても
過言ではないそうです。


金八先生のように

「根気強く言えば
変わってくれるだろう」


謙譲の美徳を持ってすれば
加藤優のように反省してくれるだろう。


…というのは

前述しました
願望と現実を混合する
幻想的願望充足』
他ならないのです。

加藤優のようには変われない…


なぜ、
職場を腐らせる人は
変わらないのか?


理由は以下の4点です。

①たいてい自己保身がからんでいる
②根底に喪失不安が潜んでいる
③合理的思考ではなく感情に突き動かされている
④自分が悪いとは思わない

本書より

このように
自分が悪いとは思わず、
自己正当化に終始するのが

職場を腐らせる人の思考回路です。


さらに拍車をかけるような
構造的要因
現在の日本にはあるそうです。


その最たるものが
次の3つです。

①平等幻想
②渦巻く不満と怒り
③自己愛過剰社会

本書より

①平等幻想

戦後の民主的な教育によって
「みんな平等」
と教え込まれたことが

他人との
ちょっとした差に敏感になった

側面があるそうです。

江戸時代のように
歴然たる身分の違いが
あった時代なら、

ただ、あきらめるしかなく
気にしていなかった。



しかし、
昭和の一億総中流時代から
みんな平等を刷り込まれた
現代の日本人には

「平等なはずなのに、
 なぜこんなに違うのか」

と不満を抱かずには
いられないそうです。


私はこの心理を
「みんな平等」バイアス
と名づけてみました。


②渦巻く不満と怒り

これは、
日本が貧乏国になったことが原因です。

昭和の一億総中流から
平成の大不況

中間層の6割から7割が
貧乏になりました。

さらに令和になって
コロナ不況と続いて
ロシアのウクライナ侵攻と
円安の影響で物価高

こういう状況では
不満と怒りが渦巻くのも
当然かもしれません。


③自己愛過剰社会

日本にナルシシストが 
増えたということです。

これは日本だけの問題ではなく
むしろアメリカのほうが
強い自己愛者が多い

『自己愛過剰社会』によると
アメリカがこのように
なってしまったのには

「自尊心をもち、自分を表現することや『自分を好きになること』ができる社会を築こうとするうちに、アメリカ人はうかつに大勢のナルシシストを生み、さらに誰もが彼らに似た振る舞いをする文化を築いてしまった

本書より

自尊心、自己表現、
自分を好きになること…

確かにこれ全部、
最近の日本の風潮とも合致してますね。

特に15のタイプのうち

3.言われたことしかしない若手社員
8.いつも相手を見下す人

彼らは完全に
「自己愛過剰社会」で育ち
自身を過剰評価しているため

自分の認識が周囲と
ずれていることに気づかない。

むしろ、
「自分の希望を認めてくれない
 周囲のほうが悪い」

と思い込み怒りを覚える

その怒りから復讐願望が生まれて
職場を腐らせる言動につながることも
少なくないそうです。

本書によると
現代の教育において
何が一番問題かといえば

「甘やかし、褒めすぎる親たち」
だそうです。

子どもの欲求を最優先するあまり
何でも買って与える

褒めれば褒めるほど能力が
伸びると思い込んでいるのです。


実際には大したことがなく
むしろ本当はダメなのに
それをきちんと指摘せず
褒めてばかりいると

自分自身を「すごい!」とか
「素晴らしい!」とか思い込む
ナルシシストが生まれやすいのは
当然です。


やはりもう
「褒めると叱る」の文化は
通用しなくなってますね。


①平等幻想
②渦巻く不満と怒り
③自己愛過剰社会

これらを例えるならば、
構造的要因とは
土壌のようなものです。

今の日本には、
みかん箱に入って腐る以前に 
発達段階で根腐れする環境
あるといえるかもしれません。


自分を腐らせないように
防腐剤を見つけなくてならない🤔


◆どうやったら実害が少なくて済むか?

根本的な解決が
できないことがわかった以上

職場を腐らせる人からの被害を
最小に抑えることです。

「リスクを軽減する」
「ダメージコントロールを行う」

そのためにはターゲットにされないこと

そしてターゲットにされやすいのは
『弱くておとなしい人』
です。


ターゲットにされてしまう特徴は
以下の3つ

★権威への恐怖
成長後も教師や上司など「偉い人」に畏縮してしまう
断れない:わがままや恩知らずと思われる恐怖
★罪悪感
責任転嫁の達人は非を相手になすりつけ罪悪感をかき立てる
自信のない人は自分のせいだと感じやすい
★承認欲求
努力の原動力になることもある
周囲の期待に応えているかを知る指標
完全に無視はできない

断れない理由が

権威への恐怖にしろ、
罪悪感にしろ、
承認欲求にしろ、

職場を腐らせる人は
いずれかをつついてきます。


弱くておとなしい人以外にも
ターゲットにされやすい人は
以下の8つです。

①他人の話を間に受ける人
②経験不足の人
③何となくおかしいという直感に蓋をする人
④他人を喜ばせたい願望が強い人
⑤自身がない人
⑥他力本願な人
⑦波風を立てたくない人
⑧孤立している人

以上のうち3つ以上あてはまれば
ターゲットにされる
可能性がアリだそうです。


ではターゲットにされないために
私たちはどうしたらいいのだろうか?

弱くておとなしい人に
「強くなれ!」
「自己主張しろ!」

といっても
すぐには変われません。


職場を腐らせる人が
変われないのと一緒ですね。


本書の解決策は
別のところにありました。

断る練習──「部分交渉」から始めよう

本書より


つまり断る技術を
身につけろということです。


上司から厄介な仕事を
断る練習をまとめてみました。

1. 時間的な交渉:
「今ちょっと忙しいので、明日まで待ってもらえますか」

2. 条件提示:
「今、別の案件を抱えているので、この部分だけでもいいですか」
「□□さんがここをやってくれるなら、残りはやります」

3. 部分交渉:
「そこまでの数字は無理ですが、ここまでならやれるかもしれません」
「一人では無理ですが、誰か手伝ってくれるのならやってみます」


ポイントは全てを断るのではなく、
部分的に断る練習をするのです。

要は、
職場を腐らせる人に対しては
こちら側は

ちょっと面倒くさい奴になる
ということです。

面倒くさい奴と
思わせることに成功すれば
職場を腐らせる人は
あなたを敬遠します。


これは解決策として素晴らしいですね。



◆まとめ:みかんは腐らせる前に腐らせないシステムを

いかがでしたか?

今まで私が【読書日記】で
紹介した中でも

なかなか強烈な
インパクトのある本でした。

本書が売れているのも納得です。


では最後に
本書のまとめと私の感想です。


・職場を腐らせる人たちは15タイプ
・職場を腐らせる人たちは変われない
・ターゲットにされる人も変われない

・断る技術「部分交渉」を身につけよう


私が今回一番勉強になったのは
幻想的願望充足』です。


フィクションのドラマを楽しむことは
悪いことではありません。

しかし、
誤った価値観や人生観を
形成してしまうのは問題です。

金八先生の中で描かれている教師と
生徒の関係は理想化されています。

現実世界では、
教師と生徒の間には
様々な問題が発生します。

ドラマの影響で、
現実世界の教師や生徒に対して
過度な期待を抱いてしまうと

人間関係に
悪影響を与える可能性がありますよね。


同じように
「職場の人間関係」も
考えなくてはなりません。

理想と現実のギャップを
職場や同僚に対して
過度な期待をもって埋めるのは問題

自分の理想を相手に押し付けてたり
相手の意見を
聞き入れなかったりするため
コミュニケーション不足に陥るのも
問題です。

『幻想的願望充足』によって、
職場でのストレスが
増加してしまうのは大問題です。



本書では
職場を腐らせる15人について

精神科医的に
腐らせる成分を教えてくれます。

それだけでも

「だからウチの職場が腐ってるんだ!」

と気づきを得られ、
とりあえずは溜飲が下がる
かもしれません。

職場を腐らせる人の被害に遭って
ボロボロになる前に

是非『職場を腐らせる人たち』
お読みください。


目次

■第1章 職場を腐らせる人たち
事例1 根性論を持ち込む上司
事例2 過大なノルマを部下に押しつける上司
事例3 言われたことしかしない若手社員
事例4 完璧主義で細かすぎる人
事例5 あれこれケチをつける人
事例6 八つ当たり屋
事例7 特定の部署にこだわる人
事例8 いつも相手を見下す人
事例9 相手によって態度を変える人
事例10 他人のせいにする人
事例11 不和の種をまく人
事例12 他人の秘密を平気でばらす人
事例13 その場にいない人の悪口を言う上司
事例14 陰で足を引っ張る人
事例15 ストーカー化する人

■第2章 なぜ職場を腐らせる人は変わらないのか
1たいて自己保身がからんでいる
2根底に喪失不安が潜んでいる
3合理的思考ではなく感情に突き動かされている
4自分が悪いとは思わない
一番厄介な「ゲミュートローゼ」
背景にある構造的要因
1平等幻想
2渦巻く不満と怒り
3「自己愛過剰社会」

■第3章 腐る職場でどう生きるか
まず気づく
1重苦しい雰囲気
2不和やもめごと
3心身の不調の増加
4沈滞ムード
5疲弊
見きわめる――自己保身か、悪意か、病気か
ターゲットにされやすいのは弱くておとなしい人
断れない三つの理由
ターゲットにされやすい人のその他の特徴
1他人の話を真に受ける
2経験不足
3何となくおかしいという直感に蓋
4他人を喜ばせたい願望が強い
5自信がない
6他力本願
7波風を立てなくない
8孤立している
ターゲットにされないために
断る練習――「部分交渉」から始めよう
意地悪なまなざし
できるだけ避ける
ときにはやり返すことも必要


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