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かつての里山に暮らす動植物     その3 ~虫たち①~

 今回は虫についてです。かつての職場に虫好きの同僚(虫愛づる姫君だった)がおり、それまで草木のことしか知らなかったわたしに、大いなる影響を与えてくれたものでした。以来、当たり前だが森のなかにはたくさんの虫がいて、それらを少しづつ知っていこうと思ったのでした。

 これはアケビコノハガというガの幼虫。その色・模様も、枝につかまっている姿勢もとにかく独特。おそらくこの姿勢は警戒、もしくは威嚇をしているのだろうと思われる。目玉のような模様も敵を驚かせるためか?

ちなみに成虫はこんなガ。黄色と黒の模様のあるのが下翅(かし=したばね)なのだが、茶色の上翅(じょうし=うえばね)を閉じればまさに、横にある枯葉とそっくり。実際、枯葉だろうと思って近づいた瞬間、羽根を広げて飛び去ったときには下翅の模様が空中に浮かび上がって驚いた。これもまた、敵から身を守るための手段なのだろう。

 虫についてといいながら、最初に”イモムシ”をあげてしまったのもおかしな話かもしれないが、とにかく、ガにしろチョウにしろ、イモムシ、ケムシの類は森や林のなかで意外に目に付き、そして気を引く。ほかにも独特な姿形、模様をしたものが多い。

 これはオオミズアオ(ガ)の幼虫。

 その体色はまさに、食べた葉の色がそのまま出ています、といった感じで、ぷくぷくとした体はもう、思わず口に入れたくなるようでもあるのだが、これで新緑のなかにでも紛れていれば、外からはまず見つからないだろう。

ちなみにオオミズアオはこんなガ(残念ながら車にでも轢かれてしまった)。カイコガの仲間で、純白に青味がかった大型のガだ。

 こちらはリンゴドクガの幼虫。いかにも毒々しいケムシだが、見方を変えればかわいいし、きれいといった感じすらある。バラ科の木の葉(リンゴもそう)を食べる。

 こちら種名はわからないが、おそらくスズメガの仲間。イモムシの仲間はこうして、裏側にくっつきながら葉を食べるようである。これなら上側からはまず見つからないだろう。そしてこうして見ると、横からも見つけにくいことがわかる。葉と色は似ているし、体の模様が葉の筋(”葉脈”という)に見えなくもない。

キイロスズメ(ガ)
マイマイガ

 とにかく、イモムシ、ケムシの仲間は一見、ギョッとはするが、よく見るとその姿はじつにユニーク、そして多彩である。どうして成虫になる前からこんなにも多彩なのかと、ふと疑問に思ったりもするが、とにかく、一度、魅力に感じてしまうとつい、新緑の季節には彼ら彼女らを探してしまうようになる。ただ、当然のことながら、鳥や他の天敵に食べられないよう、見つけにくい姿だったり、その生やした毛に毒をもっていたりする。なかにはわざわざ毒のある植物の葉を食べて自分の体のなかにも毒を貯め、天敵に食べられないようにしているものもいる。どうしても避けられがちなイモムシ、ケムシであるが、なかなか興味深い存在なのだ。

 かつての里山はいま、さまざまな草木が生え、かつ落葉樹林であることが多いため、柔らかい若葉が主食のイモムシ、ケムシにとってはとてもいい環境なのに違いない。これからの新緑の季節、若葉のなかにイモムシ、ケムシを探してみる、なんていうのも楽しい。

つづく


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