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テニスもADHD度も格上の人とガチ勝負したら、混沌恋愛市場で戦う決意ができた話

前日急募:俺に1ゲームも取らせず勝てば料金タダ。勝てば500円。負けたら1000円。

何やこの魅力的な募集は。

主催者プロフィール欄には、モデル体型・登山家・NTRP4・4※テニスの時間、急な変更あり。などといろいろおもろそうなのが書いてあった。

モデル体型とかはどうでもいいとして、特筆すべきは、NTRP値だ。自称4・4はかなり高い。※は気になったが、さすがに前日で変える事はないだろう。

迷わず申し込んだ。
ちなみに俺のNTRP値は自称4.14である。

1 コメダ珈琲で蕩ける脳プレイで惨敗した後、約束の11時の5分前に俺氏到着。

その3分後に主催者は現れた。確かにすらっとしていてモデル体型ではある笑
とりあえず、どうもーと、会釈すると、向こうも会釈してくる。


しかし、なぜか主催者は何も言葉を発しない。


無言で、準備体操すること5分。しびれを切らして、それとなくアイコンタクトで合図すると、話し始める。

モデル「実は、6時からコートが空いてたので、時間変えようと思ってたんですよ。でも、そのとき0時を過ぎてたので、申し訳ないかなあと思って。」

あの※の内容、結構重要な伏線だった―!!あぶねぇ。
前日の何時に言われたとしても、朝6時に行くわけねぇだろww

「・・・ああ~そうだったんですね!」

モデル「とにかく練習を始めましょう。練習でもアウトだったらしっかりコールしてください。」ストップウオッチで時間を正確に測った練習だった。

一度、俺が打ったボールが逸れて、まだ人が来てない左隣のコートに入ってしまった。
取りに行こうとすると、
「あ、ボール取らなくていいから。時間もったいないんで。」

その割には、コートの後ろにちょこんと入ってしまった右隣の人のボールに対しては、
「ボール取って下さい。」と厳しく注意する。
(もっと、言い方あるやろ・・・笑)

そして、独特のフォームだ。このフォームなのに、とにかく全くと言っていいほどミスらない。こちらがミスをすると、露骨に嫌な顔をする。なんか不思議と笑みがこぼれてくる。

俺、分かっちゃったぞ。

この人、

絶対ADHDやwww


時間きっちりの練習を終わるなり、
モデル「すいませんね。不愛想で。」と初めて笑顔を見せた。

「いえいえ、テニスなんて、そんなもんですよ!」

モデル「実は僕、ADHDなんですよね。しゃべりすぎちゃうから、なるべく寡黙でいるようにしてるんです。」

「あ、そうなんですね!(知ってたで。)」

自分も、ADHDの気質持ってるんでその気持ち分かります。笑」

モデル「へぇ。たとえばどんな?」

「俺、不注意特性あるっぽいんですけど、テニスの試合で、テニスシューズ忘れたんですよ。その時履いてたのが、ドンキのやっすい靴で。」

モデル「え・・・、え、えーとなんかかっこいいですね。勝ったんですか?」

「いやいや、勝てるわけないですよwww」

モデル「へ~、すごいですね・・・」

お前が引くんじゃねぇwww


「それにしても、NTRP4.4ってすごいですね!上級じゃないですか?」

モデル「いや、そんなじゃないですよ笑 ちなみにアラサーさんは?」

「自己判断ですが、NTRP4.1ですかね!」

モデル「いやwww4.1ってクソ弱いですよ笑 まあ、試合やってみれば分かるでしょうけど。」


(・・・こいつwww絶対負かしたる。)

2 ゲームスタート


まあ、ADHDだし、(パコーン)自己評価の判断もめちゃくちゃ・・・(バコーン)・・・いや、この人、

ガチで格上の4.4(上級)や。


自分もADHD気質があるのに、忘れていた。
ADHDは特定の分野には、オタクレベルの分析力があるのだ。

・サーブは的確に深く入ってくる。
・レシーブもきっちり打ってくる。
・甘い球が来れば、コースを狙って打ち、確実にボレーしてくる。
・そして、うぃにんぐショットが決まるたびに、「カモン!!」と大声で言ってくる。

2ゲーム取られて悟った。
ああ、これ、

ADHDのテニスや。


だが、この勝負。負けられない戦いがここにある。
ADHDの強みは、決まったルーティンは確実にこなせる。しかし、裏を返せば、そのルーティンを崩せば、ミスが出るはずだ。
そこで、俺がとった作戦は、

「チェンジオブペース」だ。


深い打球、浅い打球、回転ボール。スライス。右に打つと見せかけて左に打つトリックプレー。とにかく変化を付けた。

徐々に俺のペースにはまっていき、一気に、形勢逆転し、ゲームカウントは3-2になった。

「うぎゃー!」「あー!」「ふぉおオオ!!」

そして、あんだけ周りの人を指摘しといて、取られたときの叫びがうるさい。ただ、分かりみが深いのはなぜだろう。

しかし、この作戦は終焉を迎える。この方の適応性は半端なかった。そう、チェンジオブペースのテニスそのものが、相手のルーティンとして攻略されてしまったのだ。
それでも、なんとか意地で食らいつき、ゲームカウント6-6になった。

でもな、ここからが俺の神髄だよモデルさん。第二シーズン。

真源流「無限沼」のスタートだ


無限沼は、相手が疲弊した時に発揮する。
実は序盤で、なるべくこちらは温存し、相手を走らせることに注力した。
そして、ここから、左右にムーンボールを無限に打ち、沼らせる。相手の戦闘意欲は削がれ、甘くなった玉を、しとめる戦法だ。

想定通り、沼にはまったモデル。
甘くなったチャンスボール。

これで、終わりだ。ありがとな4.4。俺はお前を超えて4.5になる。

しかし、チャンスボールをオープンコートに放ったのに対し、菊丸なみのフィジカルで、カウンターショットを打たれた。

テニスの王子様、確か5巻の菊丸より


な、なんだと。

「よっしゃーー!カモーーーーン!!!!!」
モデルの咆哮が響き渡った。

その一打から相手はリズムに乗り、ゲームカウント6-8で敗れた。

・・・ああ。

めちゃくちゃ悔しいーーーーーー!!!泣

モデル「ありがとうございます。なんか、接待テニスを脱却できましたよ!俺の力を引き出せた気がします。」

そうだよ・・・俺はしょせんスポンジですぐううう

源「んで、俺のテニスレベルはどうでした?笑」半分自虐で聞いた。

「いや、僕とレベルはさほど変わらないですよ・・・。めちゃくちゃ上手でした。

・・え?・・・この人推せる。


とはいいつつ実は、

モデル「いやwww4.1ってクソ弱いですよ笑 まあ、試合やってみれば分かるでしょうけど。」

と言われたとき、俺は気づいていた。


モデル「いやwww4.1ってクソ弱いですよ笑(多分、あなたのレベルは4.1以上だと思います。)まあ、試合やってみれば分かるでしょうけど。(試合やったら、あなたがもっとうまいことが証明できますよ)

そう、オレもデート中行間が読めないからよく分かる。

ただ、伝え方が少し間違ってるだけで、めちゃくちゃいい人だということだ。

そうなんだよ。言っていることが伝わらないこのもどかしさ。生きづらさ。すごくわかる。
幸いにも、俺は友人や先輩にボロクソに指摘されたので、ある程度社会では適応できるようになった。

3 モデルのすげぇ生活


試合後、テニス談義になった。モデルが最初に話してた通り、9割はその人が話していたけど。その中で、めちゃくちゃ有益なアドバイスもいただいた。

「でも、10歳下かあ・・。」と遠くを見る。
「まだ、伸びる余地があると思いますね。特にフォアは素晴らしかったです。頑張ってください。」

この人はお世辞とか忖度をしない。真実だ。だからすごく説得力があった。だからこそ嬉しい。

約束通り、敗者の1000円を渡すと、
「これで豪華なおかずが買える。俺車中泊で三重から旅してるんで嬉しいです。」

!?!?!?

この方は、夏は車で関東の山々をクライミングをし、合間にテニスやボルダリングをして、鍛えているそうだ。

誰よりも自由で、誰よりも人生を謳歌していた。人間としての深みも俺より遥かに格上だったことを思い知らされた。


4 エピローグ

たまに思うことがある。
この世界が、恋愛至上主義の世界じゃなかったら?既婚者が勝者、独身は敗者みたいな価値観を植え付ける社会じゃなかったら?

別の分野では、そこそこうまくいっていても、
恋愛市場(マッチングアプリ、婚活パーティー、合コンなど)だと、自分がいかに劣等種か思い知らされる。まるで、綺麗すぎる水道水で口をパクパクさせるカメルーンの魚のように。

「また、次の機会にお願いします。」

そのメッセージが来るたびに思う。
ああ、また素を出しちゃったなって。本気で、分かり合える女性はいないんだ、素を出してはいけないんだと。


「男は、車道側を歩け」とか、
「蛙化現象が起きるから、フードコートではきょろきょろしてはいけない」とか、
「デートで、ホットペッパーとか公務員割引とか使っちゃいけない。」とか。

でもさ、そんなの時と場合によるやん?
ほんとにフードコート見つからないときあるやん?
絶対安くなった方がお得やん?

でも、「そんな価値観」を徐々に出していくと、ことごとく俺はフェードアウトされ、淘汰される。

分かってる。分かってる。分かってるけど分かりたくない。
この市場は生きづらい。

でも、恋愛市場で生き抜くと決めたからには、彼女できるまで毎日投稿をすると決めたからには、このままじゃダメなのは分かってる。

よし、そろそろ潮時だよな。
自分の過去と向き合う時がきた。

なぜあのお台場デートは失敗したのか。

なぜ、3回目の動物園で告白できなかったのか。

なぜ、あの時手を取れなかったのか。


ずっと逃げてきたけど、そろそろ向き合わないといけない気がする。己の過去と向き合え。

いつかの次回 恋愛廻戦~懐玉・玉砕編~始動。



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