見出し画像

マッチング葬送のフリー✖️ゲン第5話「コメダ珈琲【小豆小町】の幻影」

モーニングルーティンの土曜朝のコメダ。
店員が来るなり、
「小豆小町の桜、ホット、ローブパンにイチゴジャム、卵ペーストでお願いします。」
と、こなれ感を出して唱える。

ふっ。決まったぜ。

店員「・・・・・あの~」

店員「小豆小町桜はないんですよ。」


!?!?!?

思考がフリーズした。
店員の目線に促されるまま、メニュー表をめくった。

何度めくっても、そこにあるはずの桜ちゃんがいなかった。

「えっ、あの、えっ」

陽キャの皮を被った陰キャの素がにじみ出す。

店員「申し訳ございません。」

「えっ、これって、もう出ないんですか。あれですかね!材料不足で一時的に提供中止とか!」


店員「いえ。小豆小町はもう提供しないんです。」


「あっ、うっ、じゃあ・・・どうしようかな。・・・・この、か、かふぁらて、カフェオレで・・・。」



普段なら、桜ちゃんを啜りながら、手帳を書いたり作業を始めるのだが、結局食べ終わるまで、何も手につかなかった。

そう、おれは桜ちゃんが本当に大好きだったのだ。



そうか、この喪失感はマッチングアプリと一緒だ。

あの日あの時まではうまく行っていたのに。気づけばブロックされたあの瞬間。
二度と会えないのかと絶望に沈む喪失感。

でも、いつかまたどこかで会えるかもと願う1μの期待感。

俺が選んだのはS&P500で、選んでないオルカン。



俺は、桜ちゃんの幻影を半年は追い続けるだろう。
過去にすがりつき、前に進めない日々。
そうだ。あの瞬間だ。
サマータイムレンダして、あの夜のあの瞬間に、ちゃんと気持ちを伝えられていたなら。


代わりに飲んだ目の前のカフェオレは、確かに優しい味がしてうまい。
甘めのジャムパンや、ちょっと塩気がある卵ペーストとの相性は抜群だった。物足りない気がするけど、日常に溶け込んでいけるはずだ。


店員「お済みの皿をお下げします。」



しかし、思い出してしまう。
何かが足りない。
小豆の甘みが主張しすぎて、ジャムパンとケンカする桜ちゃん。
でも、その個性がすごくすきだったんだと思う。



消えてくれない幻影。

しかし、このままいけば、カフェオレも飲めなくなるのだろう。


当たり前の日常も当たり前じゃないときがくる。

新しい日々を。

今を。

未来を。

上手に生きられるのだろうか。


かならず何かがなくなるときがくる。

だから、みんな。


後悔する前に、一緒にコメダ行こうな。終わり。



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?