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【著作権の話#5】二次創作系の同人誌は著作権的にほとんどアウト! なのに、なぜ野放しに!?

私はオタクではありません。オタクにネガティブな印象があるから言っているわけではありません(少しあるけど)。「オタク」と呼べるほど、1つのジャンルを極めたとはいえない、という消極的な理由からです。「オタク気質」はあると思うのですが、興味のある分野、作品も浅い知識しかないのです。
認めたくはないのですが、見た目はオタクなのにオタクじゃないという、面白みがない人間なんです。
オタクといえば、かつてオタキングと呼ばれた岡田斗司夫さんの本を編集したことがあります。そもそも著者としてアプローチする人は、何らかの分野を極めた人が多いものです。そういう方と接すると、とてもじゃないですが、自分を「オタク」などとは名乗れませんよね。

さて、私の中でオタクのイメージといえばコミケ、同人誌です。行ったことはないのですが、メディアとかネットを見ていると、コミケに行っている人はオタクっぽいからです。
とはいえ、そういう同人誌を買ったことがあります。高校生のときにちゃんとした書店でエヴァのエロい同人誌を買いました。出版業界も何も知らないなりに、こんなのを書店で売っていいのか、権利関係は大丈夫なのか、と思ったものです。

ということで、そもそも、そういう二次創作の同人誌の著作権ってどうなってるの? と思って開いた本が宮本督『これだけは知っておきたい「著作権」の基本と常識』。この中の、同人誌に関する箇所を、一部抜粋、本記事用に改編してお届けしましょう。


二次的に創作した著作物

原作(原著作物)を改変して二次的に創作した著作物のことを「二次的著作物」といいます。
たとえば、アニメ化されたマンガでは、マンガが「原著作物」でアニメが「二次的著作物」となりますが、この二次的著作物は原著作物から独立した著作物として保護されます。二次的著作物の著作者も独立した著作権者となります。
なぜわざわざ二次的著作物と呼ぶかというと、二次的著作物を複製・上映などで利用する場合には、利用者は原著作物の著作権者の許諾も合わせて得る必要が生じるからです。
具体的には、二次的著作物としては、
・翻訳、編曲、変形(美術の著作物の表現形式の変更など)
・脚色(小説等の内容を演出等の目的で書き換え)
・映画化(小説等の著作物を映画として表現)
などがありますが、いずれも、原著作者の許諾を得て創作されるものです。
ただし、単に原著作物を参考にしたという場合は、二次的著作物とはなりません。

「二次創作物」は同人誌の分野で

一方、俗にいわれる「二次創作物」は、著作権法上における二次的著作物と一部重なりますが、実情はさまざまに異なる点があります。二次創作物とは、多くの場合、原作である創作物に登場するキャラクターを利用して、第三者が二次的に創作した独自のストーリーのマンガ、小説、フィギュアなどの非公式作品で、おもに同人誌の分野で使われます。
もともとは、パロディの言い換えとして生まれた表現といわれ、原著作者の許諾を得ずに創作されたものが大半です。
原著作者の許諾を得ずに創作されたものは、原著作者の著作権や著作者人格権(複製権、翻案権、同一性保持権)を侵害していることが明らかです。
また、原著作物に関わる名称やキャラクター画像などが商標登録されている場合には商標法違反、あるいは原作との混同を生じさせるような作品については不正競争防止法違反となる場合もあります。
ところが、こうした著作権者の使用許諾を得ていない二次創作物について、著作権者が刑事告訴や民事訴訟を行うことは多くありません。それは、実際には、原著作物の利益を損ねることは少なく(同人誌の発行部数は少なく、社会的影響力も弱い)、もともと原著作物のファンの活動の一環なので否定しにくい、むしろ原著作物のファンを拡大する一助になるといった理由があるからです。
しかし、これはあくまで著作権の行使を保留している状態です。性表現や暴力の行き過ぎた表現など、著しく反社会的な内容の作品であった場合、原著作物への社会的評価を毀損したり、著作者人格権を傷つけたりする可能性があります。
その場合、著作権侵害で訴えられてもしかたなく、争いを避ける余地はありませんが、どこまで許されるかは、原著作権者の受け止め方次第であり、ケースバイケースです。


最後までお読みいただきありがとうございました。

(編集部 いしぐろ)

*参考


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