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誰しも人生を変えてくれた作品が一つくらいはあるのではないか。

こんにちは。
フォレスト出版・編集部の美馬です。

この業界で仕事をしていると、人生を変えた1冊は何か、なんて話になることがあります。先日編集部に仲間入りしたばかりの新入社員は、人生を変えてくれたとある著者の1冊に影響を受けて、わざわざ引っ越しを決めたと言います。

私にもそんな作品があるかもしれないと、ふと記憶を探ってみると、確かにありました。私の人生を変えた3つの作品をご紹介したいと思います。


まず、始めに言っておくと私の人生を変えてくれた作品は、ビジネス書ではありません。ノンフィクション作品を取り扱う出版社に勤めておきながら、ゴリゴリのフィクション作品を紹介しますが悪しからず……。

これから紹介する作品に出会わなければ、前職を退職してまで出版社に勤めたい! とおそらく思うことはなかったかもしれません。そういった意味では私の人生を180度変えたと言えるでしょう。

「編集者」の存在を初めて知った少年漫画

2008年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載がスタートした『バクマン。』(大場つぐみ・小畑健)という作品。

漫画家を目指す2人の少年の熱い人生を描いた作品です。

当時10歳だった私は、兄の影響で漫画やアニメの魅力に引き込まれ、勉強もおろそかになるくらいかなり熱中していました。ただ、制作側のことに関心を持つことはありませんでした。漫画家という煌びやかな職業の存在はもちろん認識していましたが、その裏側に「編集者」なる者がいることは知りません。

本作では、漫画家としてデビューを果たした主人公たちを支える、敏腕編集者の「服部哲」というキャラクターが登場します。モデルになった編集者は実際に『ONEPIECE』を担当していたりと、かなり凄腕の方のようです。

そんな編集者の仕事も垣間見えるこの作品で、なんとなくですが「漫画家よりもカッコいい仕事だなー」と思った記憶があります。この業界に入ってから、「編集者は黒子であれ」という言葉を聞くようになりましたが、作中の服部哲の行動を振り返ってみると、まさしく黒子に徹している姿が見受けられます。

本作に出会わなければ、のちに編集者に興味を持つこともなかったかもしれません。できることならいつか実際に、服部哲のモデルになった編集者の方にお会いしたいものです。

ちなみに、子どものころ自分のお小遣いで初めて買った漫画は、同じく週刊少年ジャンプの『BLEACH』(久保帯人)という作品。

これも私の中でかなり思い入れの強い作品です。

働く女性編集者ってカッコいい!!

続いても漫画作品、安野モヨコの『働きマン』(講談社)です。

こちらは週刊誌の女性編集者、松方弘子が主人公。寝食も忘れ、凄まじい勢いで仕事に没頭する彼女の姿勢には、憧れが強く芽生えたのを覚えています。何よりも彼女の編集者という仕事にプライドを持ってブレずに困難に立ち向かう姿に、働く女性なら誰しも胸を打たれると思います。

私は飽きっぽい性分ですがその代わりかなり影響を受けやすく、典型的な形から入るタイプです。松方はいつも納豆巻きを食べながら仕事をしているのですが、私もこれに影響されて気合を入れたいときは納豆巻きを食べています。(影響される部分がおかしすぎ!)

週刊誌編集と書籍編集ではかなり仕事のやり方に違いがあるものだとは思いますが、この作品に出会って明確に「編集者になりたい!」と思ったのは間違いありません。今でも私のバイブル的な作品の一つです。

編集者は地味な仕事である

最近ではドラマや映画などの作品で、ファッション誌の編集部を題材にしているものが多いような気がします。記憶に新しいものだと、TBS『オー!マイ・ボス恋は別冊で』や、日本テレビ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』などがそれでした。

編集者の中でもファッション雑誌の部署は特に華やかなイメージを持たれがちです。実際には私もわかりませんが、ドラマ通りであれば、究極にオシャレで綺麗で素敵な女性が集まる選ばれし集団なのかもしれません。(笑)

そんな部署にも多少の憧れを感じつつも、その真逆と言っても過言ではない部署の編集者たちを描いた作品に強く胸を打たれました。三浦しをんの『舟を編む』(光文社)です。

本作は、生真面目で変人扱いされていた馬締光也という元書店営業マンが、辞書編集部で新しい辞書『大渡海』を編んでいく物語。

辞書編集、これがかなり地味なんです。そして驚くべきことに、新しい辞書をつくるには十数年もの歳月を要するのです。10年間毎日コツコツと「言葉」を拾い上げていく作業を行なうなんて、さすがに気が滅入ってしまうかもしれません。

しかし、本作で登場する辞書編集部員たちの十数年の人生、そして言葉と向き合う姿勢には心熱くするものがあります。言葉を編んでいく編集者としての在り方はこの作品から学ぶべきことがたくさんありました。特に影響を受けた、印象に残っているシーンがあります。

「右という言葉を説明できるかい」

これは辞書編集部の上司、荒木浩平が、馬締をオファーする際に投げかけた問いです。これは一見単純な問いですが、「言葉」と向き合うことの本質に近いものが込められているのではないかと思っています。冷静に考えれば良い説明が思い浮かんできそうですが、面接の場なんかで聞かれたら軽くパニックになりそうですよね。いつか私が上司になって採用面接をするときが来た日には、この問いを投げかけたいと思っています。(影響されすぎ!)馬締が返したその答えはぜひ作品を読んで確認してみてください。

以上が私の人生を変えた作品の数々です。これらに出会わなければ、今の私はいないと断言できる、本当に大切な作品です。今日こうして改めて振り返ることができてさらに仕事が好きになった気がします。皆さんもこの機会に人生を変えた作品を見つけてはいかがでしょうか。


余談ですが、私は元々漫画編集ができたら良いな~なんて考えていたくらい漫画やアニメが好きということもあって、いまだに本棚はビジネス書よりも漫画が多い状況です。というよりも、両者比例して増え続けているので追い抜くことはないかもしれません。

本棚に入りきらなくなった漫画を収納しているのは、実はこれ食器棚。

ただ、いざ業界に潜り込んで感じたのは、好きを仕事にしないほうが良い、ということ。漫画やアニメが好きだからこそ、それは趣味に留めておくべきで、仕事で疲れた心を癒すためにあるべきだと思うようになりました。仕事でも漫画のことを考えて、プライベートでも漫画ってなんだか窮屈ですよね。そんなわけで、私にとって今の環境は最もベストなのだな、と感じる毎日です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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