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10年前の企画アイデアを蔵出し

フォレスト出版編集部の寺崎です。

私の会社支給のノートパソコンには「新規企画」というフォルダがあり、そこにはフォレスト出版入社以来の企画書が溜まっています。いま見てみたら528個のファイル&フォルダが入っていました。

基本的に企画が通って正式に進行した企画に関しては「Author」というフォルダで著者名ごとに管理しているので、「新規企画」というフォルダは企画アイデアの墓場なわけです。

note記事のネタとして「ボツ企画全公開」みたいなことも考えたことがありましたが、さすがにそれはエグイので、入社した約10年前からの数年にどんなボツ企画を繰り出して撃沈していたのか、振り返ってみました。

では、いってみましょう!

ボツ企画の死屍累々を公開する

まずは、これだな。

■タイトル案
歌舞伎町は、オレの庭。

■帯キャッチ

アイデア次第で儲けたい放題なのが、新宿・歌舞伎町のいいとこだね。

■著者

森下景一(森下実業会長)

■内容

リンリンハウスでテレクラ界に革命を起こし、マンガ喫茶マンボーでマンガ喫茶ブームを呼び起こす。その後もガールズバーの全国的ブームをけん引、現在では日本が誇る歓楽街・歌舞伎町の世界的な名スポットとなったロボットレストラン、世の男たちの楽園・ギラギラガールズなど、歌舞伎町文化を自らクリエイトしてきた森下実業会長の森下景一が語る歌舞伎町の裏歴史。

面白そうです。ちなみに女の子が膝枕で耳かきで耳掃除してくれる風俗(?)の業態を発明したのも、この森下氏だという話は有名です。いまでも食指が動きますが、やはりちょっとヤバそうな裏社会の香りがして、なかなか難しそうな企画。そもそも森下会長とコンタクトを取るのがむずい。ギラギラガールズにたまに姿を現すという噂も聞いたことがあるので、通い詰めるしかないか。

■タイトル案
菊地成孔的東京盛り場ガイドブック

■帯キャッチ
TOKIO CITYでサカるにゃ、この1冊。

■著者

菊地成孔

■内容

東京の盛り場、ナイトスポットを音楽的、文学的に解説する。重要スポットのガイドであると同時に、TOKIO都市論であり、文明論。『東京いい店やれる店』よりも使えるディープな情報が得られることマチガイなし。中沢新一『アースダイバー』読んでも確実にモテないが、本書を読めばモテモテ(かも)。バーでうっとり酔わせる無駄なウンチク満載。

■構成メモ

ビ・バップな戯れ「新宿歌舞伎町」BackTrack:チャーリー・パーカー
弛緩したJKポップ「渋谷道玄坂」BackTrack:少女時代
ブルースな自己憐憫「新宿ゴールデン街」BackTrack:憂歌団
ペンタトニックな演歌の涙「赤坂」BackTrack:八代亜紀
偉大なるカラッポ精神「六本木」BackTrack:ジュリアナ東京(MC)
永遠に終わらないジャイブ「浅草」BackTrack:キャブ・キャロウェイ

その他、恵比寿、上野、池袋、麻布、三軒茶屋、下北沢、錦糸町などなど。
都内の主要盛り場スポットを取り上げてその音楽的色づけ、文学的意味づけを考察していく。

限りなく妄想企画ですね。こういうの考えてるときが、編集者として至福です。少女時代って、時代を感じるな。妄想企画のまま終わってしまっている企画。

■タイトル案
深い意味はありません

■帯キャッチ
吉高由里子のTwitter
ようやく書籍化しました 。

■著者
吉高由里子

■内容
いまや国民的女優となった吉高由里子さんが 2011 年から続ける Twitter が人気に。本人いわく「深い意味はない」という“ゆるツイート” だが、 どこか詩的で格言のようなつぶやきには 200 万人以上のフォロワー がいて 「癒される」「深い」と絶賛される。そこで「詩的なツイート 」+「 写真イメージ 」を配した 、読んで眺めて癒される メッセージブックを企画する。

吉高由里子さんのTwitterで綴られる詩的な投稿が刺さって企画したのですが、あまり企画会議で共感を得られずに気持ちが腐った記憶が蘇りました。他社からも出版されてないということは、何らかの事情があるのでしょう。

■タイトル案
声に出して読みたい「教育勅語」と「国民の修身」

■帯キャッチ
いま見直すべき 、 戦前日本の美しいあり方 。

■著者
齋藤孝

■内容
いい、悪いは別にして「古き日本バンザイ」的なムードが社会的に蔓延している。安倍政権の方針、 2020 年のオリンピック開催まではこのムードが継続するのではないか。戦前の尋常小学校の教科書をリメイクした 渡部昇一監修 『国民の修身』(産経新聞出版)が売れているのも、そんな時代背景があってのもの。そこで、かつてのミリオンセラー『声に出して読みたい日本語』、最近では『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)などの ベストセラーを飛ばしている齋藤孝さんに「修身」と「教育勅語」を現代によみがえらせる「再解釈本」を書いてもらいたい。

これは会議参加者からかなり強いアレルギー反応が出て、即効でダメになった企画ですが、「教育勅語」「修身」は個人的には面白い題材だと思っていて(政治的な立場は別にして)、いつか復活させたい企画のひとつです。著者は齋藤孝さんじゃないかもしれませんが。

これに近い企画がコレです。

■タイトル案
「超」入門!国体の本義

■帯キャッチ
「日本スゴい論」の元祖であり、史上最高の禁断の駄作。


■著者
辻田真佐憲

■内容
第二次安倍政権以降、戦前回帰的な動きが多くみられ「八紘一宇」「天壌無窮の神勅」 といった古めかしい単語がここ数年、政治家の発言に目立っている。戦前のイデオロギー教育の本丸である「国体の本義」を持ちだしてくる政治家も、おそらく出て来るのではあるまいか。
著者の辻田氏によれば「『国体の本義』こそ、戦前日本のイデオロギーの集大成。その内容の充実ぶりは「教育勅語」などとは比較にならない 。 備えあれば憂いなし。『国体の本義』の歴史や内容につ いてあらかじめ知っておくのも無駄ではないだろう 」と語る。そこで「国体の本義」について、 現代風の言葉でやさしく客観的に解説した教養新書を企画した。

戦前の日本の思想的バックボーンになった「国体の本義」。これがいったい何なのかという企画です。政治的な臭いがプンプンして、議論が荒れる系。

究極はコレですかね。

■タイトル案
超訳「わが闘争」

■帯キャッチ
20世紀最大のモンスターといま、向き合う。

■著者
要検討

■内容
ヒトラーの唯一の著作『わが闘争』が読めるのは日本だけ!
倫理的な是非はともかくとして、 いま「ヒトラー」が熱い。2015年 5 月 25 日、ヨーロッパ各国で実施された EU の欧州議会選挙で、ドイツとギリシャ
から極右ネオナチ政党に所属する議員が史上初めて当選を果たす。ドイツでは、ネオナチ政党「ドイツ国家民主党( NPD )」が約 30 万票を獲得。ギリシャでもネオナチ政党「黄金の夜明け」が 9 パーセントを超える票を獲得、ドイツから 1 名、ギリシャから 3 名のネオナチ議員が EU 議会 に誕生 。日本では2015年 3 月、東京都内の図書館所蔵の『アンネの日記』が破られる騒動が起こる 。4 月には東京・池袋で「ヒトラー生誕」を祝う一部の右翼がハーケンクロイツや旭日旗を掲げた集会を行なったことがニュースとなる。こうしたヒトラー再評価(?)をさらに加速させそうなのが、『わが闘争』再出版問題だ 。『わが闘争』の版権は、ヒトラーが住所登録していたバイエルン州の州政府が保有してきた。州政府は、その著作権を盾にドイツ国内での出版を禁じてきただけでなく、世界各国に対しても出版しないよう強く求めてきた。しかし、 2015 年 12 月 31 日をもって版権(著作権)が消滅、誰でも『わが闘争』の出版が可能となる。そこで、本企画ではヒトラー『わが闘争』の批判的読み解き、超訳を試みる。たいへんデリケートなテー マを扱うことになるため、 政治的 、歴史的な価値判断は下さず、 『超訳ニーチェ の言葉 』『超訳ヴィトゲンシュタイン』のようなニュートラルな立ち位置で、 解釈は読者に任せるスタイルとする。

結構、自分としては意気揚々と企画しましたが、見事に否定の嵐で通りませんでした。このあたりは出版社によってぜんぜん事情は異なると思いますが、大手出版社ならいざ知らず、中小零細出版社の場合は慎重にならざるをえません。なにせ、「ハイル、ヒットラー」のポーズをとるだけでドイツでは有罪なわけです。マジで警察に捕まるらしいです。

角川書店から出ている文庫の上下巻『わが闘争』、中公新書の高田博行『ヒトラー演説』も売れているので、売れる可能性はある企画だと思うのですが、あまりに政治的すぎてボツったパターンです。

以上、死屍累々のボツ企画でした。

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