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絶賛ロス中『おっさんずラブ』

『おっさんずラブ - リターンズ -』が終わってもうすぐ一週間。
不思議な気分で過ごしている。
ロスである。
ロスといってもリターンズが終わったことへのロスではない。
いや、それもある。もう春田や牧や部長や愛すべき天空不動産の面々に会えないのかも、と思うととてつもなく寂しくなる。
でもそれだけではない。
心の中に何もないのだ。
凪いでいるわけでもないけど昂っているわけでもない。
自分でもよくわからない。

2024年3月1日深夜、『おっさんずラブ - リターンズ -』(以下、リターンズ)が終わった。
終わった瞬間は、ただ普通に終わって良かったなと感じた。普通に、というのは変な終わり方をしなかった、という意味だ。面白いとか面白くないとかそういうのではなく、普通に終わったことに、ホッとした。

翌日は、昔からおっさんずラブが好きだった民友さんたちと集まったが、同じように安堵の表情を浮かべていた人が多かったように思う。
帰りにふと思い立ち、一番よく行っている聖地に立ち寄った。ここはおっさんずラブ(2018)でもリターンズでも出てくる聖地である。
聖地は変わらずにいてくれて、私は居心地が良かった。

リターンズで春田と牧が再会した場所

そしてまた日常に戻った。

『おっさんずラブ - リターンズ -』の放送が無い毎日に戻った。

仕事が忙しいこともあり、Twitter(X)での呟きが少なくなってきた。
というか、呟こうにも何も浮かばないのである。
春田と牧がこんなに好きなのに、好きだという気持ちは変わらないのに、呟けることが無い。

かといってリターンズ以外のことについても呟こうと思えない。
この間見た舞台がとても良くて、忘れないうちに呟いておきたいと思っているのに、どうにも頭が回らなくて、ツイートする気にならない。
美味しいお菓子を食べたのに、面白い記事を読んだのに、呟く気になれない。

なんだこれは、と思っているうちに今日に至った。

それで気が付いた。あぁこれはロスだと。
ロスという言葉を調べたら、『喪失』と出ていた。
そうだ。『喪失』なんだ。
私は自分の中の『おっさんずラブ』を失ったんだ、と思った。
もちろん私はリターンズを含む『おっさんずラブ』の全部を喪失したわけではない。『おっさんずラブ』の多くの部分は、今もとても大切な心の宝箱の中に入れてある。
でも、一部を失ったのだと感じた。

リターンズは私が見たかった春田と牧の生活を見せてくれた。二人が揺るぎない絆で結ばれている姿を見せてくれて、それは涙が出るほど嬉しかった。
実際、一話が終わった直後は興奮のあまりに眠れず、当時サイネージの展示をやっていた品川駅に始発で駆けつけ、そのまま一話で登場した神社にお参りして、「俺も一緒だよーー!」と心の中で叫んだほどだった。

だけどリターンズを見続けているうちに私の中の大切な何かが削られていった。
それは、またいつか別に書くかもしれないけれど、シーンのつなぎ合わせのような展開、過度なバトルシーン、明らかにおかしな武川さんのキャラ設定、仕事シーンのチープさなどによって生じていった。一言でいえば リターンズは『おっさんずラブ2018』とは全く違う作品になっていたことへの失望が私の心を削っていったのである。

もちろん演じている俳優さん達は今回も素晴らしかった。
春田と牧だけではなく、部長も三輪車に乗っているだけで面白くて何度も笑わせてもらったし、新しく加入した和泉さんのぽやぽやした可愛らしさや菊様のせつなさも良かった。

だけどどうにもこうにも話が面白くない。
物語の芯が弱いので、俳優さん達がどんなにいい演技をしていても惹かれないのだ。

そのことが私自身とてもショックだった。

5年も待った『おっさんずラブ』の続編である。
あの傑作の『おっさんずラブ』の続編である。
ずっとずっと待っていて、ほぼ毎週 "わんだほう!” の話数ツイートをして、時々要望のハガキを出したり局にメールをしたり、心の底から続編を願ってきた『おっさんずラブ』の続編である。
好きすぎて、いくつもnoteなんて書いてみたりもしてしまったほど私を変えた『おっさんずラブ』の続編である。
それほど楽しみにしていたのに。
楽しめていなかった。
何なら毎週どんな展開になってしまうんだろうと不安で不安で仕方なかった。
楽しめない自分に嫌悪感を感じてしまうほどだった。

失ったのは『おっさんずラブ』を好きな自分でもあった。

私は『おっさんずラブ』ほど好きになったドラマはなく、この作品の持つポテンシャルを信じていた。
続編ができたら、それこそ日本を変えてくれるんじゃないかと思っていた。
それほどのブームがまた来ると思っていた。
でも、そうではなかった。
実際にTVerのお気に入り登録数でもヒット作品の目安である100万人には遥か到達せず、最高でも90.5万人ほど。
あの“おっさんずラブ” がこの数字止まりというのがとても寂しかった。
(ちなみに同性カップルの “日常” 生活を描いた『きのう何食べた』は2024年1月時点で105万人の登録数。)
お気に入り登録数が作品の良さや個人の好みと一致することはないけれど、少なくとも作品の人気とはリンクするだろう。

もちろん今冬のドラマでも『不適切にもほどがある!』が133万人、ラブコメの『Eye Love You』が115万人、その他にも2つの作品が100万人を超える登録者数となっている。

え?なんだこれ。
おっさんずラブってこんなもんじゃないよね?どうしてこんな所に甘んじてるの?おっさんずラブこんなんじゃねぇよ、っておっさんずラブ教(狂)信者の私は思ってしまうのだ。
でも、この位置が今回のリターンズへの世間の評価なのだ。とても残念で悔しいけれども。

なのでストーリーに惹かれなかったこと、世間的にも爆発的な人気を得られなかったことが、私の喪失感の一つの理由なのである。

そして、ストーリーが同性カップルを十分エンパワメントする作品になれなかったことも残念だった。
(今回のリターンズでエンパワメントされた方がいることは知っています。でも、2018のおっさんずラブほどポジティブなパワーを発することはなかったし、残念なポイントは以下の苔さんのブログに余すところなく書いてあります。)

https://x.com/KOKE_1515/status/1763922834269876444?s=20

これらの事で私の中での『おっさんずラブ』への何かがなくなった。
これがロスの一つ目である。

そして、もう一つ大きかったのは、リターンズがおっさんずラブ2018を上書きしたことである。
リターンズで上書きされたおっさんずラブ2018は、私の中でとても大切なものだった。
おそらく作り手は、良かれと思って、ファンが喜ぶと思って、いくつかのシーンやモノを上書きしたのだろう。本当に善意で。
だけど、私はそれを喜ぶことができなかった。

私はおそらく ”おっさんずラブ2018&劇場版原理主義者(ストーリー推し)” なのだ。(下記ツイートの図参照)
ほんの少しのことでもおっさんずラブ2018や劇場版に何かが加えられたり、ましてや上書きされることを拒絶してしまうタイプだ。

こんな厄介なタイプにとってリターンズでの上書きはかなりショックを与えた。

自らが自らを上書きしたのである。
だから、私の喪失感の中には、おっさんずラブ2018(の一部)を失ったことへのロスもあるのだ。
そしてそれはすなわち "おっさんずラブ2018を好きでいた自分” の一部を失ったような気さえするものなのである。我ながらなんてめんどくさいんだとガッカリするし、たぶん普通の人には大袈裟だと思われるだろうけど、私はこの5年間ずっとおっさんずラブと並走して生きてきたからこそ身体の一部をもがれたような気がするのだ。
心の中に大きな空洞(ロス=喪失感)があるような感じなのだ。

(ここで話が少しずれるが、リターンズは劇場版おっさんずラブの上書きはしていない(たぶん)。結果として劇場版は純度を保ったまま存在していることとなり、私の中では逆に重要度が上がった。(原理主義なので))

この自分の何かを失ったことも今回のロスに繋がっている。たぶんものすごく自分勝手な感覚なので共感してもらえないとは思うけど、これが今の気持ちなので仕方がない。

せっかくの春田と牧の新規映像がたくさんあるリターンズ、見返してみたらきっと楽しいのはわかっている。
それでも見返すことがなかなかできない。見たらまた何かを失ってしまうかもと思うと怖い気持ちもあるからだ。
というわけで、絶賛ロス中である。

たぶんまだ自分の中で消化ができていないのだとも思う。
時間が経ったらドラマを見返して、怒涛のような萌えツイートをしているかもしれない。
もしかしたらそれは明日かもしれないし、ずっとその日は来ないかもしれない。

自分の心の中はわからない。
でも一つだけ言えるのは、私はどうやってもおっさんずラブが好きで、それはリターンズの一部も含んでいるということだ。
リターンズの中でも一話の春田と牧の再会、本社前での雪のシーン、神社で叫ぶシーン、そして結婚式前夜~結婚式のシーンは何度見ても毎回泣いてしまうほど好きだ。
こんなに好きなシーンは無いと思うほど好きだ。

だからおっさんずラブから卒業することはできないと思う。
だけど、今はなかなか呟くことが出来ない。
それほどまでに失ったものが大きいのだ。
(あくまで 『私』 の話です)

最後になるが……
私は最後までリターンズを楽しむことができなかった。
それは私が作り手の感覚と合わなかったからである。
そして私が ”おっさんずラブ2018&劇場版原理主義者(ストーリー推し)”だからだ。

けれど、作り手の皆さんには リターンズを作ってくださったことに心から感謝している。あれだけの人気俳優のスケジュールを揃えてキャストを全員続投させてくれるなんて、どれだけ大変なことだったかと思う。
全員続投のお知らせを聞いた時の感動を忘れることもないだろう。
作り手の皆さんには、感謝してもしきれない。

そして、俳優の皆さんの熱演も素晴らしかった。春田と牧は生きているという思いは変わらないし、その他の皆さんの演じた役も忘れられない。
今回もすごいものを見せていただいた、という気持ちは変わらない。

もう少し経ったら、また見え方も変わってくるのだろうと思う。
でも、今はこんな風にロスになっているということも含めて、おっさんずラブが私の中に占める大きさをひしひしと感じている。

読んでいただき、ありがとうございました。

あと、今までのおっさんずラブに関するnoteのリンクです。拙い文章だけどめっちゃおっさんずラブが好きなのは伝わるかなと思います。
こんな文章書いててごめんだけど、本当に好きなんだよ。それだけは最後に言いたいや。


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