見出し画像

ラッセル、混戦のスプリントを制す!——サンパウロGP

ラッセルがフェルスタッペンとの好バトルを制して、サンパウロGP土曜スプリントの勝利を挙げた。本戦の優勝ではないものの、ラッセルの実力とメルセデスの復活を示す結果。3位のハミルトンがチームメイトを称える笑顔もすがすがしく、彼もずいぶん丸くなったと思った。2位サインツのグリッド降格のため、日曜日の決勝はこの2台が1-2でスタートする。

大番狂わせのマグヌッセンの初ポールと、宴会芸と化したフェラーリのドタバタ

昨年導入されたスプリントでは今回が最も激しいレースとなった。理由としては下記の要素が挙げられる。

  1. 伏兵マグヌッセンの奇跡の初ポール

  2. フェルスタッペンのミディアムタイヤ装着

  3. 仁義なきチームメイトバトル

金曜日のマグヌッセンのポールは素晴らしかった。路面は乾き気味だが、再び雨が降り出しそうなQ3開始前。彼はピットロード出口を、少しでも降雨のリスクを回避できる先頭で待機した。最も1コーナー寄りにあるハースのピット位置が有利に働いた面は否めないが、ワンチャンスで最速タイムを出したマグヌッセンの腕と、的確な状況判断を下したチームを称えるべきだと思う。

金曜日の予選でポールポジションを獲得したマグヌッセン

フェラーリのルクレールは隊列の2番目にいたものの、彼はQ3の10台のうちただ一人、インターミディエイトを履いていた。無線でチームのタイヤ選択に激高するルクレール。Q3開始後、アウトラップを1周終えてもピットインの指示が遅く、そのままアタックラップに入ってしまった。ドライ路面を溝付きタイヤでスライドしながら走る、さらなる醜態を演じた。(結果的にノータイムに)

フェラーリのドタバタは私の文筆力を超えているが、「お約束」「様式美」と呼べる状況はとうに過ぎ、もはや、忘年会の「宴会芸」、それも一度滑ったネタを取り繕おうとしてさらに失笑を買う、そんなレベルに達したと思える。

仁義なきチームメートバトル

スプリントのスタートで、ポールのマグヌッセンが蹴り出しよく1コーナーを駆け抜けた。2番グリッドのフェルスタッペンは上位勢で唯一のミディアム装着で加速が鈍く、序盤はラッセルのへ防戦に追われる展開だった。

マシンの地力に劣るマグヌッセンが徐々に順位を落とし、フェルスタッペンが24周レースの3周目に首位を奪ったころ、後方では仁義なきチームメイトバトルが起きていた。

オコンとアロンソは4コーナーで接触寸前のバトルを繰り広げたのち、3周目の最終コーナー先でアロンソがオコンに接触。アロンソはフロントウィングを脱落し、オコンものちに大きく順位を落とした。

ラスト2戦目のベッテルもバックストレートでストロールを抜く際にイン側に幅寄せを食わされ、ベッテルは車体半分が芝生に乗り出した。ストロールにはのちに10秒ペナルティが与えられた。

いずれも年内でチームメイト関係が終了する2組で、『明日の他人は今日の敵』とでも表現できそうな間柄だが、特にアルピーヌに関してはマクラーレンとのチーム4位争いの渦中で、なぜこのバトルを放置しているのか理解できない。スプリントのポイントを逃すばかりか、決勝のスタート順まで不利になった。

たとえスプリントでも、他人に順位を譲り渡さないドライバー

フェルスタッペンはミディアムの性能に問題を抱えたかペースが伸びず、ラッセルに激しく追い立てられ、15周目に首位を明け渡した。サインツにも19周目の1コーナーでインを突かれ、アウトギリギリを並走したもののフロントウィングの翼端板を失ってしまう。その後ハミルトンにも抜かれ、3位の座も失った。


スプリント導入にあたっては、「決勝を控えるなかで、ドライバーが無用のバトルを仕掛けるはずがない」との懐疑的な声が聞かれた。確かに昨年の3戦はやや退屈だったが、ドライバーという人種がリスクを回避して他人にやすやすと順位を譲る連中ではない、ということを我々は甘く見ていたのではなかろうか?今回のレースを見て、それを感じた。

フェルスタッペンのラッセルに対するブロックは厳しく、その後のウィング損傷もサインツに意地を張りすぎたことが要因だ。激しいバトルは、「チャンピオンシップが決まって自由にレースできるから」という側面もあろうが、それだけでは説明できないような気がする。ドライバーのドライバーたるゆえんか。

スプリントとはいえラッセルの勝利は喜ばしい。日曜日は雨になりそうで、今日とは違うコンディションのレースをもう一度見られることになる。私はスプリントというフォーマットは結構好きだ。もうひと勝負、楽しみたい。


追伸:ラリー・ジャパンに寄せて

ラリー・ジャパンの無事な終了、関係者の皆様お疲れ様でした。予想外のアクシデントに悪天候で、運営の方の苦労は絶えなかったと思いますが、紅葉の、「ザ・日本」とも呼べる田舎の光景をWRCマシンが駆け抜ける姿は最高に絵になりました。

来年、さらに良いイベントとなるよう願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?