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アキレス腱痛症の臨床評価とテーピング処置【サブスク】

アキレス腱痛症と分類

アキレス腱の疼痛や腫張による機能障害をきたす疾患を、総じてアキレス腱痛症(achillodynia)¹⁾と呼びます。

アキレス腱痛症は、アキレス腱の踵骨付着部から近位2〜6cmに発生する非付着部アキレス腱症(non-insertional achilles tendinopathy)とアキレス腱踵骨隆起付着部に発生するアキレス腱付着部症(insertional achilles tendinopathy)に分類¹⁾²⁾³⁾されます(図1)。

図1 アキレス腱痛症の2分類

非付着部アキレス腱症はさらに、アキレス腱実質部の変性を主体としたアキレス腱症(achilles tendinopathy)とアキレス腱周囲のパラテノンの炎症を主体とするアキレス腱周囲炎(achilles paratendinopathy)に分類¹⁾されます。

オランダの調査では、アキレス腱症の有病率は1000人当たり 2.01人と比較的頻度の高い疾患である⁴⁾とされています。

アキレス腱症の病態

アキレス腱症の好発部位である踵骨付着部から近位2〜6cmは、血液供給が乏しい領域です。微細損傷が起こり、その修復が不完全であると再損傷を容易にきたす¹⁾とされています。また、この部位に反復ストレスが加わることが発生メカニズムではないか²⁾と考えられています。

アキレス腱症の病態については、以下のようにメカニズム⁵⁾が説明されています(図2)。

図2 アキレス腱症の病態
1)より画像引用

非付着部アキレス腱症には、腱の変性による肥厚性有痛性病変を伴うアキレス腱症、アキレス腱周囲のパラテノンの炎症であるアキレス腱周囲炎、さらにその両者が合併し、腱とパラテ ノンが最終的に瘢痕化し癒着するもの¹⁾も含まれます。

アキレス腱の機能解剖学

アキレス腱は、腓腹筋とヒラメ筋の共同腱です。捻れ構造がその特徴として挙げられます。

アキレス腱の捻れ構造

【アキレス腱の捻れ方向】
アキレス腱の捻れ²⁾は、右側は反時計回りの方向に、左側は時計回りの方向にそれぞれみられます(図3)。

図3 アキレス腱の捻れ方向

【アキレス腱の捻れの程度】
捻れの程度は
、以下のように報告によってさまざまです。

アキレス腱は90°回転し、内側の繊維は後方へ、後方の繊維は側方へ回転します。

6)より引用

アキレス腱の平均的な捻れは、34.59±16.8°であり(図4)、大腿骨の捻れとの相関関係を認めた。

7)より引用

図4 アキレス腱の捻れ角度の計測
7)より画像引用

Van Gilら²⁾⁸⁾は11〜65°の捻れであった、Smigielskiら²⁾⁹⁾は30〜150°捻れているとも報告されています。

【アキレス腱の捻れ分類】²⁾¹⁰⁾¹¹⁾¹²⁾
アキレス腱の捻れは、Type1〜3に分類されています(図5、図6)。

図5 左アキレス腱の捩れ分類(後上方より観察)
(A;前側、P;後側、L:外側、M;内側、Sol;ヒラメ筋からの繊維、LG;腓腹筋外側頭からの繊維、MG;腓腹筋の内側頭からの繊維)
10)より画像引用

図6 左アキレス腱のタイプ別各繊維束の捻れ構造
(I-b、II-b、III-b;各繊維束の模式図、L;外側、M;内側、LG;腓腹筋外側頭からの筋膜、MG;腓腹筋内側頭からの筋膜、Sol;ヒラメ筋からの筋膜
赤線: 腓腹筋内側頭からの繊維束①〜⑤番
青線: 腓腹筋外側頭からの繊維束⑥〜⑨番
緑線:ヒラメ筋の繊維束⑩〜⑭番)
10)より画像引用

Type Ⅰ(least)は、ほとんどねじれていないタイプで、ヒラメ筋の付着するアキレス腱線維束のみが踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type Ⅰの出現率は24%¹⁰⁾、50%¹²⁾と報告されています。

Type Ⅱ(moderate)は、中等度ねじれタイプで腓腹筋外側頭とヒラメ筋の付着するアキレス線維束が踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type Ⅱの出現率は47%¹⁰⁾、67%¹²⁾と報告されています。

Type III(extreme)は、重度ねじれタイプで、腓腹筋外側頭の付着するアキレス腱線維束のみが踵骨隆起の深層(踵骨側面)に付着します。Type IIIの出現率は7%¹⁰⁾、9%¹²⁾と報告されています。

アキレス腱と足部アライメントの関連

アキレス腱と足部アライメントとの関連について、距骨下関節回内はアキレス腱の内側に大きな歪み(伸長ストレス)を生じさせ、距骨下関節回外はアキレス腱の外側に大きな歪み(伸長ストレス)を生じさせる¹³⁾と報告されています(図7)。

図7 距骨下関節の回内/回外に伴うアキレス腱の伸長ストレスの違い

これは、アキレス腱の疼痛部位と足部構造との関連性を評価する上でも重要と考えられます。

アキレス腱の血管分布

腱への血液供給源は、内的(筋腱接合部と腱付着部)外的(パラテノンや滑液鞘などの腱周囲の結合組織)の2種類に大別³⁾されます(図8)。

図8 アキレス腱への血管分布
(A;腱骨接合部(内的供給)、B;腱間膜(外的供給)、C;筋腱接合部)
14)より画像引用

アキレス腱の栄養血管は後脛骨動脈であり、パラテノンと呼ばれるアキレス腱を被膜する結合組織に覆われています(図9)。

図9 アキレス腱周囲の解剖(パラテノンの位置、上方より観察)
15)より画像引用日本語改変

アキレス腱痛症の原因となるメカニカルストレス

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