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【読書感想文】『希望の糸』東野圭吾著

東野圭吾さんの作品ばかり読んでいた時期がありましたが、最近遠ざかっていたこともあり、久しぶりに東野作品に触れてみました。

今回読んだ作品は2019年7月5日第一刷発行の『希望の糸』です。

ミステリーの印象が強い東野さんの作品ですが、ストーリーはどれも人間味あふれるものばかりです。この作品はある殺人事件を軸に、複雑に絡まった人間模様の糸をほどいていくような印象でしたが、どこか悲しい気持ちが残るものでした。

ミステリーなのでネタバレになるような詳細は省きたいと思いますが、最近小説の勉強を始めた私にとっては、やはりプロは凄いと思わされた作品でした。

まず最初の章が、予想もしていなかった展開で始まります。
次の章は読み進めていくうちに、「あぁ、これの伏線だったのか」とわかるのですが、読み始めた時は唐突な印象を受けます。

先月、某小説家の小説教室に参加した際に先生が仰っていた、予定調和にならない予感というのがこれか!と思いました。

途中まで全く犯人の予測もつかないし、事件の原因の予想もつかないのですが、あるとき急に謎が解明されます。
そしてその背後にある、人の優しさや悲しさなどが見えてくると、ミステリーが単なる謎解きではなくなります。

それぞれの登場人物の心情に感情移入してしまい、行動の裏に秘められた感情、やさしさ、悲しさに胸が詰まります。
人はなんと複雑な生き物なのだろう、と思わされた作品でした。

主要な登場人物である汐見夫妻、芳原亜矢子、花塚弥生、綿貫哲彦、綿貫萌奈、それぞれの立場に自分が立たされたとき、自分はどのようにふるまうだろうか、と考えさせられた物語でもありました。

ミステリーであり、人の心の美しさも醜さも露わにする純文学のようでもあると感じた作品でした。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ミステリー好きの私にとって、単なる謎解きだけでなく、緻密でありながらどこか余韻のある東野圭吾さんの作品はどれも大好きです。

この秋は色々な作家さんのたくさんの作品に触れてみたいなと思います。
今週が良い一週間になりますように。


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