【陸上競技・長距離】電子ペーサークラファン成果を考察する。~真昼間対策をどうするか?
陸上ファンにとって北海道の夏といえば、ホクレンディスチャレンジ(ホクレンDC:日本陸連主催)ではないでしょうか?
これまで外国人選手やトップランナーがペースメイクしてきましたが、2023年は電子ペーサーも加わり、さらに手厚いサポート体制になりました。
導入経費をクラウドファンディングで調達。ファンの「応援したい気持ち」を目視化できました。素晴らしい!と共感したので、早速自分も寄付させていただきました。
これに加えて、陸連ホクレン事務局にお声がけいただき、私のGGNレポもクラファンPRのコンテンツになりました。「ならば現地レポしなきゃ」とスイッチが入った次第です。
電子ペーサーってどんなもの?
タイムテーブルと電子ペーサーの設定
使用する電子ペーサーは、「WaveLight」(ウェーブライト)
株式会社アームティー(英表記:ArmT Inc.)さんが運用担当されています。
第3戦 網走大会のタイムテーブルには、電子ペーサー「WaveLight」の設定が書かれていました。観戦する側にもありがたい記載です。
熱い、暑い、網走!
2023.7.8 14:30現在のグランドコンディション
天候:晴れ
気温:27.0℃ 湿度70%
風向:東南東 風速 0.4m/sec
真夏の太陽ギラギラ。
オホーツク海沿岸は涼しいと聞いていたけれど、違うよ。体感温度は30℃超えていたはず。
この日の日没は19:07。女子5000mAあたりから、電子ペーサーの位置を見つけるのが楽になりました。
女子5000mA
女子5000mAの設定
🟢Green Target 15:40.0(75.2)
🔴Red Target 15:50.0(76.0)
⚪White Target 16:00.0(76.8)
電子ペーサーがレース展開を可視化させた!
ライトは1m間隔とのこと。観戦者はスケール代わりに使えますね。
10000mA
🔴Red Target 27:55(67.0)
2人の間隔は約1m。タイム差に換算すると、67秒/400m=0.167秒
ライトのおかげで秒差の可視化ができました。
平林選手の左足下のライト。よく見ると4つの電球列であることが確認できました。
時間帯によって違う電子ペーサーの見え方
今大会は、写真撮影に合わせて、電子ペーサーを体験する選手に感想を伺ってみました。
駒澤大学には事前に大学広報課を通して「電子ペーサーに着目した取材」をお願いし、レース後にコメントをいただきました。出場した6選手とも初めての電子ペーサー体験のようです。
15:15スタート 男子5000mC
赤津勇進選手(4年)、赤星雄斗選手(4年)、庭瀬俊輝選手(3年)、安原海晴選手(1年)の4名が出場。
赤津勇進選手(4年)は組トップで自己ベスト更新。
🟢Green Target 13:50.0(66.4)が後ろに!
フィニッシュタイムは13:43.79
「赤津はこの暑さの中、電子ペーサーをうまく使って勝ち切りました。強かったです。」藤田敦史監督が嬉しそうに言葉を添えてくださいました。
18:30スタート 男子5000mA
日没30分ほど前になり、トップライトから斜光線になってきました。
↑はレース序盤戦
2人の後方に⚪White Target 13:45.0(66.0)
安原選手が先着して13:46.10でフィニッシュ。⚪に約6.6m及びませんでした。(筆者計算値)
「この話題で座談会をしたら、盛り上がりそうだな。」ニヤニヤしながらコメントを読ませてもらいました。気づきが沢山あります!
組2着(日本人1位)だった太田智樹選手(トヨタ自動車)
ゴール直前は🟢Green Target 13:20.0(64.0)と追いかけっこ!
今季絶好調、経験豊富な太田選手のコメントがTwitterに上がっていました。
太田選手の投稿から、🟢Green Targetを見ながら走っていたのが解りますね。
電子ペーサーが見え難い時間帯をどう凌ぐか?
選手自身で対応出来ること
頭上から太陽光が降り注ぐ昼間の時間帯は、どうしても見えづらいようです。駒大以外の選手からも「全く見えませんでした!」というお話を伺いました。
電子ペーサーの見え方に個人差はあると承知していますが、見えなかったという選手たちと同じレースで組トップだった赤津選手が、常に🟢Green Targetで位置確認していましたので、「見える見えない」は電子ペーサー導入の理解度合や、天候や体調などに左右されると考えます。
安原海晴選手の「”少し”見にくかった」は、サングラスの遮光の有効性を示していると感じました。帽子やサングラスなどの小物で目に飛び込む光量を軽減すると、電子ペーサーの効果が高まるのではないでしょうか。
電子ペーサーがあろうとなかろうとチームスタッフは変わらずラップを取ります。電子ペーサーと合わせた状況判断が出来るよう、言葉を選ぶのも良いかも。勿論事前の打ち合わせが鍵を握ると思われます。
運営側で対応出来ること
レース中はノリのいい音楽を流しながら、運営のマイクパフォーマンスで選手を鼓舞します。
聴覚による情報は、選手自身の意思に関わらず否応なく耳に飛び込んできますが、視覚による情報は選手自身の意思によって取得可否が決まります。
一旦電子ペーサーを見失うと視線を上下左右に動かさないと捉えることが出来ません。視線の移動はメンタルにマイナス作用するのではないかと考えます。
ですが電子ペーサーの位置を視覚で見失っても、聴覚で取得できればリカバリーできるのではないでしょうか。
レース前に電子ペーサーを見失ったときのリカバリー方法を想定しておくのが良いのではないかと感じました。
ホクレンDCでのマイクパフォーマンスは、いちばん遅いターゲットの「白」を基準に行われていて、「白についていったら何秒台」というフレーズが多かったと記憶しています。これだと白と自分の位置関係は解りません。
そこで提案するのは「緑はバックストレート」「赤は2コーナーに入る」「白は1コーナーに差し掛かる」などトラックの位置を伝えるアナウンスです。
知りたいライトの色を見失っても聴覚で再確認できます。
観客目線で考えること
本稿を書き進めるうちに、もしかしたら観客目線が相互理解の一助になるのかもと感じ始めました。
東京マラソンの時に浅草で体験した警察の「DJポリス」を思い起こしています。観衆が滞留しないための声掛けは、「立ち止まらないで」とか「ダメです」などの否定的な言葉はありませんでした。
きつい言葉で檄を飛ばしてOKだったのは、過去のこと。
マイクパフォーマンスの担当者さんへ、選手側から「こんなことが知りたい」「このアナウンスが良かった」「この言葉は聞きたくなかった」などの感想が届くと、次回のアナウンスに役立つと思いませんか?
アナウンスの言葉選びについての考え方は、運営側に伝わればうれしく思います。
「逆転の発想」が進化を促す・・・
ここまで、「トップライトのときは、電子ペーサーが見えないのは困る」的な論調で進めてきましたが、ちょっと目線を変えて考察します。
大会スケジュールが進み、日が沈んで夜になっていくほど、電子ペーサーの視認度は高まってくることはお解りいただけたと思います。
1つでも遅い組になれば電子ペーサーの恩恵は大きくなり、より多くの恩恵を受けようとするなら出場資格タイムをあげていくことが重要になってきます。
「今年は定数オーバーで出場できなかったが、来年はターゲットナンバーに届くように!」
「今回は早い組だったけれど、持ちタイムを縮めて遅い組になれば、もっとライトが活用できるかも!」
このような未来志向で考えていくことで効果が上がりそうなのは、大学生ランナーじゃないかな?
思い通りに走れなかった選手を、指導者が見守り導いていく場面に出会いました。
今回出走した選手には自身の体験や先輩たちの体験をもとに電子ペーサー対応の事前準備を考えてみて欲しいな。そして後に続く後輩たちに伝えて欲しいな。こういうディスカッションが全体の底上げにつながるだろうと感じました。
自己実現を目標に競技に取り組み、人生で一番ストイックな時期を過ごしている大学生たちを見るにつけ、電子ペーサー導入クラウドファンディングの成果検証は「目標額に届く」「PB更新したのは●人」など数値のみで評価するのは、早計ではないかと感じてしまいます。
数字では図りしれない「意識」の部分にもクラファンの成果があるハズ。この視点での成果検証が待たれます。
ラストの1枚はこちら
暑くて、熱かった、網走をギュッと凝縮。
「電子ペーサー」に導かれるランナー。
見守る観客。
支える企業の看板。スタッフたち。
ここに集うみんなが一つになった瞬間でした。
次回予告
電子ペーサーレース経験の少ない選手を主眼において検証してみましたが、経験値が増えると異なるものも見えてくるようです。次回では、今季3レースを経験し、自己ベストを更新された宍倉健浩さんのインタビューをお届けします。
取材協力:日本陸連ホクレンDC事務局様、株式会社ArmT様、駒澤大学広報課様、同陸上競技部様
ありがとうございました。
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