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ファストファッションは本当に「悪者」だったのか

かつて一世を風靡したファストファッションブランドが大量閉店をしたことで「ファストファッション時代は終わり」「消費者は質を求めている」というニュースを見かけるが、日本でのGU(ユニクロ)や韓国セレクト系D2Cの伸びや勢いを見るとそうとは思えない。

国内でユニクロはGUも含め8000億以上も売っている。ユニクロのお店を見れば、品質は悪くなく「ベター」。接客も陳列の丁寧さも「ベター」。それに加えて確実にコスパがよく在庫をしっかり積んで「行けばある安心感」があるのだからまさに「最高にちょうど良い」

更にユニクロUのコラボは毎回ファッション関係者でさえ話題にするレベルになった。
服飾学生たちの将来の夢が「ユニクロとコラボすること」になる日はそう遠くない。

ファストファッションはどうしても「悪者」にされがちだ、それはわかる。大量廃棄や労働問題、環境破壊などの点で批判的な意見を見る。既得権益で言ってる人も多いのだろうけど、大人はそういうこともあるから仕方ないよね。業界内でファストファッションに対していい顔をする人なんてあまりいない。


しかし本当にファストファッションとは「ゴミ」を作り、消費を煽り、そしてまた「ゴミ」に帰っていく悪者なのか。

そして果たして僕らが信じてきたビッグメゾンは、ファストファッションを悪く言えるような商売をしていたのか。

僕が業界で働く1人のデザイナーとして考えたいのは、ファッションを時代に合わせて更新していくブランドとしての「姿勢」の話だ。

ファストファッションは、ある意味で僕ら大衆の味方だった。僕は高校時代、アルバイト代を握りしめて原宿にできたファスト系のお店で1万円で全身揃えた記憶がある。その時期に友人から「お洒落だね!」と言われ、ファッションに興味を持った。

ファストファッションはお洒落する楽しさ、自分が認めてもらえる喜びを教えてくれた。

最近、地方の路面店のユニクロに行ったときに店内放送でパートのおばさんが「パリを代表するファッションデザイナー、クリストフ ルメールの新作が並んでおります」とアナウンスしていた。

地方のユニクロの空気と、おばさんから発せられる「ルメール」という言葉の違和感がすごくて笑ってしまった。しかしレジは行列だった。そんな光景をどこのファッション関係者が想像したのか。(失礼だが)お洒落とは言えない人までが、ルメールコラボの商品を試着しまくっていた。それって最高じゃん!

今、ファストファッションは僕らにファッションの最高峰の味さえも教えてくれているのだ。きっと多くの若者がユニクロによって「ルメール」を知り、お洒落に目覚め、コレクションブランドを調べ、憧れ、その道を志すことになる。それって最高じゃん!!!

ファッション業界を守ってきたピラミッドはSNSによる情報の多様化やファストファッションの台頭で溶けてきた。

大袈裟ではなくてこの空気はきっと革命前夜だと思う。既存のシステムはどんどん崩壊している。東京コレクションのブランドも厳しいという話をたくさん聞く。

これから先、ファストファッションが齎した影響はもっと顕著に出てくるはずだ。それならば彼らをただ「悪者」とするのではなく、見習うべき事例を知り、問題点から学び、自分の明日の仕事に活かしていきたい。

最後に自分の話で申し訳ないが僕は運良く、デザイナーとして仕事をさせてもらえて幸福なことに時代の過渡期で挑戦する権利を与えてもらえている気がする。まだまだ先は長いが、最近また次に登るべき山が確実に見えてきたイメージ。

淡々とやるべきことをやりながら、その時をじっと待つ。針の穴に糸を通すような日々の中で、未来を信じて今日を生きる。


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