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初めに、ことばがあった。そしてホテルは造られた。


4月15日(月)、Nサロン主催でなんとも贅沢なトークセッションが開催された。『伝統産業を、デザインとクリエイティブで再定義する。』と題した本イベント。ホテルプロデューサーの龍崎翔子さんと星野リゾート代表・星野佳路さんの2人が、自身の経営観と日本ホテル業界のこれまでとこれからについて語り合った。

プロフィールやイベント内容は、こちらから読める。

<noteとの共同コミュニティNサロンを運営する日経新聞の記事>

<Nサロン参加者による詳細レポート>

時代と土地を折り込んだ新しいホテルを提案しつづける龍崎さん。日本発のホテルを世界に発信しつづける星野さん。2人の共通点は、ホテル経営の手腕だけではない。
モデレーターでMATCHA代表の青木優さんも言っていたが、両者“言葉の力”が圧倒的に磨かれているのだ。ホテル経営など1mmもかじったことがない私がここまで前のめりで話を聞いたのも、その力によるところが大きい。

たとえば、「選択が早くなっていく時代にどう選ばれ続けるか」の質問に、星野さんはこう答える。

常に新しい魅力を作る力。箱=舞台、役者=社員。モチベーションの高い社員たちが、毎年進化できるような形に持ち込める。新しく作ったものが全て真似されるという覚悟はしてる。常に新しい部隊を作り続けるソフト力が重要だ。

あるいは、「原稿執筆パック」が話題になった温泉旅館THE RYOKAN TOKYO YUGAWARAのコンセプトを、龍崎さんは次のようにたとえる。

熱海が新婚旅行なら、湯河原は不倫旅行。言うなれば、湯河原はケ、熱海はハレ。温泉街の部屋の中にこもって温泉を楽しむイメージ、湯ごもり。

短く、端的に。素人相手にもわかりやすく、だがエッセンスがここまで詰まった言葉を、ホテル経営者という生き物は操れるのかと、圧倒される。
言葉のセンスは、一朝一夕で身につけられることではない。社内外のプレゼンや広報、従業員とのコミュニケーション、さらには公私を超えたを通じ、表現は常に鍛えられる。

老舗ひしめく伝統産業・ホテル業界で、独自のブランドを築いてきた。それも無謀とも見られる若さで、無理だと思われていた土地に、そして想像を超えるスケールとスピードをもって、事業を展開してきた2人は、ホテルにとって神とさえ呼ぶべき存在だ。
新約聖書にも、こんな箇所がある。

1 初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。2 この方は、初めに神とともにおられた。3 すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない。(ヨハネの福音書1章)


常に新しい事業を展開してきた背景には、頭と手で組み立てた事業を言葉にし(これを2人は「解像度を高める」作業だと話す)、人に伝え、巻き込んできた経緯がある。ただひたすらに言葉を尽くすのではなく、ときにはデザインの力も借り、種々の制約において最も伝わる言葉選びをする。

熱量ある言葉は、ホテル経営にかぎらず、すべてのビジネスにとって重要であろう。神のような存在……と仰ぎ見るだけでなく、2人をはじめとする各界リーダーから学び、想いを解像度高く表現する“言葉の力”を鍛えたい。

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