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私の工場経営ノウハウ(13)経営戦略とロードマップ

1.経営戦略の構造
経営戦略は以下のような構造をしています。まずは、このフレームを使って自分の経営戦略階層図を作ってみてください。

経営戦略階層図

次に、具体的に戦略を考えるため下図「経営戦略実践の図」を参考に、会社の将来について「ありたい姿」「あるべき姿」をいろいろ考えてください。それが長期戦略になっていきます。もちろん、ありたい姿は時間の経過と共に変わるのもですから都度長期戦略は修正していいでしょう。但し、中期計画になると関連投資も始まっていると思うので、慎重に立案し、できるだけ実現できるように作りましょう。その流れの中に来年度予算があるはずです。

経営戦略実践の図

2.経営戦略の議論
経営戦略を立てる上では、議論する相手が必要です。社長と工場長、各部門長で「合宿」をして寝食を共にして議論できれば最高です。しかし、日々忙しい方々は充分な準備をせずに集まってしまうかも知れません。上長と部下の不満大会になっては本来の目的が達成できません。
 この種の会議は、「ルール」と「準備」、「熟成」によって成案を得るのがプロセスです。
ルールでは、会議の時間割と当日のアジェンダ、到達目標をスタート時点で確認すること、参加者全員が発言をすること、議事録を作成し最後に内容を全員で確認すること。
準備では、事前に宿題を出しておくこと。参加者は各自宿題の結果を持ってきてプレゼンテーションすること。
熟成は、会議を複数回実施して煮詰めていくことを意味します。会議毎に出席者を加えていくことになります。最初は幹部と経理の皆さんが大枠である売上、損益について決めます。これは、前年度の成果と反省や近い将来の市場や競合などの「状況分析」と「あるべき」から議論して、プラス「多少のストレッチ」を加えて作っていきます。

3.年度予算
予算は売上、損益に加え、これを実現させる「各部門の業績貢献項目(KPI)」を作り、さらに各人の「個人予算」や「個人目標」にステアダウンされなければ達成が不透明になります。各項目は、予実算管理である業績会議で、5W1Hで構成されたPDCA表によって管理・改善します。KPIの最初にくるものは、売上高と営業損益でしょう。次に経常損益、棚卸増減、完成高、限界利益、製造原価、変動費率、人件比率、労務費、材料費率、時間生産性、不良率、直人パープロ、総人パープロ、新製品比率、減価償却費率などでしょう。
結果であるOUT PUTを出すためには、IN PUTが必要です。ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源をどのように投入するかは予算編成や中長期計画では考えなければなりません。特に人材は時間が掛かります。
予算では翌年度の投資による減価償却費の変化や、年度越えに伴う棚卸評価損などを考慮します。次に、売上、損益を達成するための条件について、各部門の実施・到達点を議論します。ヒト、モノ、カネ、情報の投資内容や組織の見直しについても議論します。組織の見直しでは若手にチャンスを与えるのもいいでしょう。将来への備えとして後継者育成も重要な項目です。これまでの成果と反省から宿題を出しておくことが大切です。最後に、売上、損益を達成するための原価構成詳細を決定します。経理部門が作業することになりますが、元データは各部門から提出します。新製品があるときには、製品原価マスターと関連購買マスターを登録します。その他の項目については、対策費用と対策効果が原価構成に反映されます。
全てを予算会議で見出すことはできないので、「期中積み上げ」として年度予算内や中期経営計画期間内の宿題とします。

4.ロードマップ
 経営計画では、ロードマップを作成しておくとよいでしょう。投資ロードマップや新製品上市ロードマップ、技術ロードマップ、人材育成ロードマップ、いろいろあります。ロードマップを確認することで、各種案件のスタート時期を逃さないようにできます。
特に注意すべきは設備老朽化による更新ロードマップです。設備の耐用年数はメーカーの説明期間より長いですが、交換部品の供給がなくなる場合があります。設備によっては購入メーカーがなくなっていることもあります。さらに、生産に使っている設備は「ランニングチェンジ」が基本です。すなわち、新設備を据え付け、条件出し、試作、品質評価を製品品種毎に行う必要が出てきます。設備の種類にもよりますが、順調でも1か月、トラブルがあれば半年、新設備への移行が遅れます。生産が止まってしまうことによる経営的に大きなダメージを避けなければなりません。このように、同様の設備を追加で据え付けるには場所とユーティリティーの確保が必要になります。早い段階からの準備が必要な理由です。
 次に人材育成ロードマップです。将来のリーダーになってもらう人材には、広い視野を身に付けてもらいたいです。そのため社内や取引先などでの関連職場実習は効果的です。人材ローテンションを含めて中長期計画に入れておきたいです。

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