中山はじめ(ファクトリーパートナー中山・代表)

コンサルタント。横浜国立大学大学院工学研究科修了。企業の国内外グループ会社社長、本社事…

中山はじめ(ファクトリーパートナー中山・代表)

コンサルタント。横浜国立大学大学院工学研究科修了。企業の国内外グループ会社社長、本社事業部長、執行役を歴任。現在、プリント配線板、小型機械設備、金属・樹脂部品の企業に事業戦略の立案、予実算管理、技術管理、現場管理などを支援中。2020年から中小企業基盤整備機構アドバイザー。

最近の記事

私の工場経営ノウハウ(17) 品質管理と品質保証

 最近、大企業でも品質に関する問題が多く聞かれるようになりました。 その理由を考えてみると、終身雇用に問題があるのではないかと思えてくるのです。 1つの会社でしか働いたことがない、これがプロ意識の形成を邪魔しているのではないでしょうか。 一度会社を辞めた人が他社を歩いてまた戻ってくるのも良いと思いましたが、日本ではあまり聞かないですね。 仕事ぶりが、やらされ仕事になっていて、仕事の中身が浅くなっていないか気になります。  昭和から平成にかけての時代、愚直に、一つの仕事に打ち込

    • 工場長、工場管理者の仕事

      それは「相互信頼」と「万事徹底」の実践です。そのために必要なのは「わが身を惜しむなという気構え」です。これまで紹介してきた予算編成と月次業績フォローも経営管理における徹底と言えると思いますが、ここでは日々の現場活動について書いてみました。 私のいた工場にはある標語看板が立っていました。そこには、「顧客が安心して使え、喜びを感じる製品を世に送ろう」とありました。私はこの言葉が大好きでした。工場長になってからは、山本五十六の名言「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてや

      • 製造業成功の条件

        製造業成功の条件にはヒット商品の発明などが簡単に思い浮かぶかもしれませんが、結局は安定した収益性と継続性になると思います。私の経験から反省するのは、特定の製品にのめりこんで後で工場を赤字にしてしまったことです。 世界的に有名な携帯電話機の部品に採用されると、同じモデルの部品が大量に要求され一定期間生産能力を超える要求が続きました。固定費は回収過剰になり大きな利益が出ました。開発部門は次機種の部品開発と試作に全力で掛かりました。しかし、あるとき失注します。理由は顧客の購買責任

        • 製造業運営管理の要点

          久しぶりにノートします。中小企業を中心にご支援してきましたが、より簡単な説明が必要と感じました。これまでの説明は詳細なノウハウ紹介でしたが、ここで立ち止まり製造業運営管理の基本を私なりにまとめました。 私たち製造業者は形あるものを作って社会に貢献し、自分の頑張った証を残したいわけです。最終的には自分が満足しなくてはいけないけど、客観的な評価はモチベーションを上げるわけです。 客観的評価とは何と言っても売上高と営業利益ではないでしょうか。製品の付加価値を認めてもらい、それに

          私の工場経営ノウハウ(13)経営戦略とロードマップ

          1.経営戦略の構造 経営戦略は以下のような構造をしています。まずは、このフレームを使って自分の経営戦略階層図を作ってみてください。 次に、具体的に戦略を考えるため下図「経営戦略実践の図」を参考に、会社の将来について「ありたい姿」「あるべき姿」をいろいろ考えてください。それが長期戦略になっていきます。もちろん、ありたい姿は時間の経過と共に変わるのもですから都度長期戦略は修正していいでしょう。但し、中期計画になると関連投資も始まっていると思うので、慎重に立案し、できるだけ実現で

          私の工場経営ノウハウ(13)経営戦略とロードマップ

          私の工場経営ノウハウ(12)大震災の教訓

          あと数分で東日本大震災から9年になりますが、あの日のことは今でも鮮明に憶えています。私は東日本の地方工場長でした。応接室で打合せをしていたら、いきなり未経験の大きな揺れに襲われ、同時に中庭に面した3m程度の高さのガラスの壁が割れて崩れました。揺れがおさまったのを見計らって、あらかじめ防災訓練で決めてあった工場内の神社境内に行って、従業員の避難状況確認をしました。その後、製造現場に取り残された人がいないか、金めっきラインが倒壊していないか確認させる必要がありましたが、酸素ボンベ

          私の工場経営ノウハウ(12)大震災の教訓

          私の工場経営ノウハウ(11)モノづくりの継承

          工場経営では、相続に関係する「承継」とは別に、技術的ノウハウの「継承」が重要です。前者は社長交代の時などですが、後者はベテラン技術者や熟練作業者の引退などで発生します。そのため、社長になったら次の社長候補を、部長なったら次の部長候補を決めておけと言われますし、部長は社長の立場で、課長は部長の立場でものごとを考えろとも言われます。 終戦後1950年代に製造業を起業した人が多く、それが高度経済成長につながったのですが、創業社長の背中を見て育った二代目が今引退の時期になります。従

          私の工場経営ノウハウ(11)モノづくりの継承

          私の工場経営ノウハウ(10)5SはJIS規格

          よく聞く「5S(ごえす)」は日本産業規格JIS 8142-5603に定義されている日本製造業の行動指針です。ちなみに、JIS(Japanese Industrial Standard)は1949年以来「日本工業規格」と呼ばれていましたが、法改正により2019年7月1日より「日本産業規格」に改称されました。JIS規格は主務大臣である経済産業大臣が制定した日本の国家標準です。英語表記はそのままです。5Sは、1930~1940年代に生まれ1950年代に日本能率協会からトヨタなどの企

          私の工場経営ノウハウ(10)5SはJIS規格

          私の工場経営ノウハウ(9)ワンチームの工場

          2019年のラグビーワールドカップでは「ワンチーム」という合言葉のもと、日本チームの活躍が素晴らしかったですね。工場運営もこの「ワンチーム」が大切です。こちらのワンチームは、社長・工場長の方針と目標のもと全従業員が各々の持ち場で、目標を達成すべく努力することです。また、目標達成するためSWOT分析をもとに勝てる作戦とそれを可能にする準備・トレーニングがあることです。また、その仕事ぶりが顧客に感動を与えればファンが増え、成果が膨れ上がります。 まずは現在の「ワンチーム度」を計

          私の工場経営ノウハウ(9)ワンチームの工場

          私の工場経営ノウハウ(8) 品質管理(民生用と自動車用)

          品質管理は、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の品質マネジメントシステムISO-9001の考え方で実施すれば民生用製品は十分です。自動用は、管理レベルのより厳しいISO/TS(Technical Specification) 16949を使います。実践した経験からポイントだと感じたことを簡単に紹介します。 ISO-9001の認証は会社運営上必須ではありませんが考え方は有効で、認証取得を発注条件

          私の工場経営ノウハウ(8) 品質管理(民生用と自動車用)

          私の工場経営ノウハウ(7) 不良対策の作法

          社外不良は、法律問題であり技術問題なのです。不良対策には作法があります。 ❶不良の定義:  不良とは、納入仕様書や製品規格から逸脱しているものを言います。性能に問題なくても傷や変色が規格をはずれていれば不良です。逆に、期待している動作をしなくても規格内なら不良ではありません。買主と売主(メーカ)が問題だと共に認識した「不具合」があっても、仕様書や規格で定義していなければ不良ではありません。その処理は費用も含めて双方の話し合いで決めていくべきものです。  不良問題は、債権者(

          私の工場経営ノウハウ(7) 不良対策の作法

          私の工場経営ノウハウ(6) ロボット化のメリットと注意点

          ロボット化は実際どうなのでしょうか? そのメリットと注意点について記します。 ❶結論:  ケースバイケースで圧倒的に有利な場合と、効果の出にくい場合があります。よく調査して適用可否を決めてください。ここでは、産業用ロボットの導入について記します。 ❷メリット: 1) 従来の加工設備、検査装置が使えるため、自動化するに当たって、これらの設備を改造する必要はありません。また、ロボットは設備を選びませんから、生産終了した設備に使っていたロボットを他の設備に使うことができます。

          私の工場経営ノウハウ(6) ロボット化のメリットと注意点

          私の工場経営ノウハウ(5) 生産性の評価と改善策2

          ステーション作業、自動化ラインとも標準作業時間で生産性や生産能力を評価できることは前回お話しました。今回は、その標準作業時間の話をします。 ❷標準作業時間(ST):教科書的に言うと、設計と技術で決めたQC工程表と作業基準に従い、認定作業者が作業に要する時間を言います。作業とは、特定品種の特定工程における部材準備・治具交換、設備保守点検、機械条件確認、部材投入、加工、取出し、工程内検査等、関連するすべてのルーチン作業を言います。作業内容を詳細に決めてあれば、認定作業者の誰がや

          私の工場経営ノウハウ(5) 生産性の評価と改善策2

          私の工場経営ノウハウ(5) 生産性の評価と改善策1

          これからしばらく、生産性に関する話題をシェアします。 ❶ステーション作業型製造と自動化ライン型製造の違いと生産性  ステーション作業とは、機械を作業毎にステーションに停止させて作業者が組立等を行う作業で、作業者の作業時間の経過と共に完成度が上がっていきます。例えば、フレーム部組立、駆動部品組み付け、電装品組み付け、配線、カバー取付、仕上げ、試運転・検査などです。  一方、自動化ライン型製造は、部材製造などに多く、投入段取り、投入、操作盤操作、取出しを何回か繰り返します。設備

          私の工場経営ノウハウ(5) 生産性の評価と改善策1

          私の工場経営ノウハウ(4) 製造現場の歩き方

          工場経営者は、どんな View Point Management をしながら製造現場を歩くのでしょうか。 ❶テーマを絞って歩く:よく社長、工場長が製造現場を歩く姿を見ますが、彼らはどんなことを考えながら歩いているのでしょうか? 工場長が現場で見るべきは、業績会議で話題となったボトルネック工程、品質問題工程など生産性、品質問題の実地確認がメインテーマですが、その他に安全衛生面、5S、設備の稼働状況(ゲージ表示、異音・異臭、チョコ停の有無)、設備・ユーティリティーの保全状態、作

          私の工場経営ノウハウ(4) 製造現場の歩き方

          私の工場経営ノウハウ(3) うまくいった?話3/3

          私は経営ノウハウ(1)でお話したVPM(View Point Management)を工場長視点から事業部長視点に変えると次のようになりました。 ❸グローバルアロケーション:高信頼性電子回路板について自社の国内、海外の複数工場を認定しておいて、各社のコストパフォーマンスに応じて物量配分すなわち「グローバルアロケーション」を行いました。技術力のある工場は比較的コストが高い傾向にあります。国内工場にそういう傾向がありました。一方、機械設備や自動車、ロボットなどを作る顧客は難度も

          私の工場経営ノウハウ(3) うまくいった?話3/3