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落ち葉と雪が出会うとき

落ち葉が舞う秋の終わり、根雪になる前の雪がちらほらと降る冬の始まり。
そんな季節になると、「今年は落ち葉と雪は出会えたのかなー」と思います。

小さい頃、青い鳥文庫の「クレヨン王国」シリーズが大好きでした。

クレヨン王国はゴールデン国王、シルバー王妃、カメレオン総理大臣、12色のクレヨンの大臣たちが王国を治めている異世界みたいなところ。

このシリーズには大雑把に言うと2種類あって、
①クレヨン王国に住んでいる住民たちのお話
(『クレヨン王国の十二か月』を中心にして「夢のクレヨン王国」としてアニメにもなっていました)
②クレヨン王国に迷い込んだ少年少女たちのお話
となっています。

厳密に言うと『クレヨン王国の十二か月』にもシルバー王妃のお供をする現実側の女の子がいたり、『クレヨン王国の月のたまご』はどちらの要素もあったりするけれど……。

私は特に②が好きでした。
『クレヨン王国まほうの夏』『クレヨン王国黒の銀行』……中でも一番好きだったのは『クレヨン王国のパトロール隊長』です。

ノブオは五年生の男の子。大切な義理の妹が自分のせいで事故にあい、家庭は不安定。担任の先生とは特に理由もないけれども馬が合いません。星座観察の日、先生に叱られて山の中に走り出したノブオはクレヨン王国に迷い込みます。フクロウからクレヨン王国の第七七七代パトロール隊長を任せられたノブオは、王国で過ごすうちに自分の心と向き合っていきます。
しかし、王国では火の精と水の精の争いが起ころうとしていました。

この中で、カエデやモミジが「今年こそ雪ん子に会うんだ」と落ちないように頑張っている場面が出てきます。

雪ん子とカエデの葉はもう何百年も前から文通していて、カエデの葉は雪ん子の真っ白な姿に憧れていて、雪ん子は燃えるようなカエデを一目見たいと思っていました。

けれど、どれだけ雪が早く降ってもそのときにはカエデの葉は残っていないし、春にカエデの葉が出てきても雪は溶けてしまってもう残っていません。

この後、水の精のスージーがカエデと雪ん子を会わせてあげるように取り図らってくれます。

話の本筋には関係のない場面なのですが、とてもよく覚えていました。
というのも、雪と落ち葉が会うことはふつうじゃないの?と思ったからです。

私は生まれてこの方ずっと北海道に住んでいるので、カエデやモミジの上に雪が積もっている場面を何度か見たことがあるのです。

そうか、地域によって気候が違うのか、と初めて意識したのはこの出来事がきっかけだった気がします。

以来、落ち葉の上に雪が積もっていると「今年も会えたんだね〜」と思うようになりました(笑)。

(今日、イチョウの上に雪が積もっているのを見て思い出したのでした。カエデでなくイチョウだけど……)

幼いとき、いつもクレヨン王国の入り口を探していた気がします。

クラスメイトと突き進んだ草むらの中。
学校のグラウンドにあった百葉箱の裏。

「現実とクレヨン王国がもしかしたらつながってるかもしれない」という期待は、「ここじゃない世界があるかもしれない」という希望になり、小さかった自分にとっては広い世界を意識するきっかけだった気がします。

現実で落ち葉と雪が出会っていると、現実と物語がつながっている気がします。

そうするとまだやっぱり、ここがクレヨン王国の入り口かもな、と思うのです。


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