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情けは人のためならず

映画監督の道を諦めた後、私はせめてCF(コマーシャルフィルム)の世界に入ろうとした。そしてCF制作プロダクションを受験するも、私の能力を必要としてくれる会社はなかった。

21歳で映画界に入った時、六本木の安アパートで日々シナリオが書けない病に苦しんでいた。そんな時に出会ったのは、喜多嶋隆というCFディレクター出身の作家が書いた「CF愚連隊」という小説だった。
南カリフォルニア大学の映画学科で映画製作を学ぶ主人公がビンボー生活と別れを告げるためLAのCF制作プロダクションに入り、その後帰国したった30秒のCFに命をかけるという痛快な作品だ。主人公の流葉爽太郎(ながればそうたろう)は30秒でも心を射抜くCFの可能性を信じていた。
この小説は日本テレビの水曜ロードショーの枠で2時間ドラマとしても映像化された。それを8インチの白黒のテレビジョンで見て、映画を断念し、CFに移ろうと思った。現実問題として、当時は日本映画が著しく低迷していて仕事先がない状態で、CFかポルノ映画で糊口をしのぐ映画人が多かった。

CFは2時間の大作映画よりも心に刺さることが多い。今日紹介する動画はタイの携帯電話会社のCFだ。私はこれを見て号泣した。情けは人のためならず。最近は間違った意味で覚えている人が多いが、正しい意味でのこの言葉は大好きな日本語だ。



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