《詩》己の残虐性を恐れろ

1
俺の作品でてめえの心を引っ掴んで
思いっきり引っ張って
体から出して
返り血にまみれて
笑ってやるぜ

いえ
いけません
人を傷つけてはいけません
人を優しく包み込む
美しい作品を作りましょう

あ?
俺は演劇人だ
演劇ってのは俗にまみれた
故にあまりのはしたなさに歴史から消えた時期もあった
そんな芸術を扱ってる俺が
ヤワな作品作るわけねえな

違います
どうしようもなく美しく
多くの人に受け入れられる
そして
作品を一つでも残す
その夢を叶えるのでしょう

ははは
確かに俺は俺の作品を残してえ
その夢は合ってるぜ
でも夢は一つじゃねえ
俺の作品が誰かの心にぶっ刺さって
俺はそいつの中で生き続けてえ

あなたは残虐な人

知ってるよ
んなこたあ


2
言葉には表せない叫びが
慟哭とも呼べる叫びが
あまりにも感情を
如実に表していたので
言葉は本当に不自由だと
そんな言葉を使ってお前は何がしたいんだと
気付きたくもないことに
直面した夕暮れ


3
作品の中ではせめて
格好いい奴になりたい
ありのままの僕は
たいして面白くはないからさ


4
引き金をひけ
お前は武器を持った
さあお前は今から
世界に傷跡をつけるんだ


5
他人を憎むのは容易い
世界を恨むのは容易い
どうしようもない
名付けようのない
この苦しみで
人を傷つけるのは容易い
誰もが持ってる
どっか狂った部分
隠して隠して
怖いから
俺は誰かを傷つけたくないよ
世界に希望を持っていたいよ
人を好きになりたいよ
泣きじゃくりながら
その手には銃
もう何発撃った?


6
急激に世界がつまらないように感じて
新聞、テレビ、インターネット
煩わしくなり
ただ、風と、風に揺れる葉の音を聞き
胸のあたりを圧迫する暗い鉛が
早くなくなってくれと
祈りながら眠る


7
僕の作品が残らない
それは寂しい


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