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シクラメン《心情㉘》

今日がどんな天気か知らなけりゃ、どんな気温かも知らない。
知りたいとすら思えなかった。
部屋着で泣き顔を隠すように青白いライトを浴びて、誤魔化すようにノートを広げペンを持つ。

僕の世界はこの広いとは言い難い家と、どこにでもいけてどこにも実態がないこの脳みそだけ。

ここが全てプログラムされた電脳世界であればどれだけいいだろう。

世界があったところで居場所があるわけではない。
精一杯捨てられないものを端に寄せてつくった1人立つをことを許されたスペースに無理やり理想の自分を押し込めた。
現実の自分ははみ出たまんま。
自分のことを鏡もない世界で見れたりしない。
見えているのは理想の自分だけで、理想を理想と気がつく度に、理想の自分さえその場所から押し出されてしまいそうだ。

いらない。こんな自分。
無い。そんな自分。

逃れられない自身が受け入れられなくて。
知らない自分がこわくて。
こんなの私じゃない。と零しそうになってはそんな私しか知らない故、じゃあ私はどこに在る?とまた問い始める。

どんなに押し入れをあけようと、冷蔵庫をあけようと、布団をひっぺがそうと、お菓子の箱をひっくり返そうと、結局在るのは無理くりつくったひとりぼっちのスペースにだけ。

いつここから追い出されてしまうのだろうかと不安そうな表情をする理想をみて、僕はより一層怯えるのだ。
他の誰かがどれだけ気づかなくても、見たけが変わらずとも、空気が振動した波形が変わらずとも、君への愛情が変わらずとも。
ただここにいる。
そこにある自身が受け入れることが出来なければ、化け物と相違無いのだ。

理想を迎えに行こう。
連れ出そう。

そんな狭い場所にいるのはもうやめにしよう!

僕はその手を取って、薄暗くて足音の響く廊下を一緒に駆けるから。

だから、理想のその脳味噌の中に私の居場所を用意していて。
ね?


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