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終電に乗れなかった【オンガク猫団コラムvol.3】

忘年会に行き、深夜まで呑んでいた。呑んでいたといっても、オイラはゲコなので、ずっと温かい烏龍茶と少しのつまみでなんとなくその場にいたのである。久しぶりの忘年会だった。全く、何年振りだろう。どうぞいらしてください、という温かいメッセージを頂いたのだ。

知らない人だらけの忘年会だったけど、ノンアルコールでコミュ障のオイラでも居心地は悪くない。確かに、オイラはどこか異邦人のように所在がなかったが、それでも楽しい時間が流れた。

宴は佳境だったけれど、終電のこともあるので、おいとまして駅に行くと、車両故障の影響で電車は全線がストップしていた。構内のアナウンスをする駅員は、選挙の最終日の演説みたいに、声を荒げている。駅に集う帰宅者も殺気だっていて怒号も聞こえてきた。

どうしよう。こんな日に限ってタクシー代もない。この辺りはコンビニもないからなあ、お金も下ろせない。仕方がないので歩いて家まで帰るとしよう。天気予報では明け方に雨が降るとかいっていた。生憎傘もないし、予報通りなら、ずぶ濡れになってしまうだろうな。

運の悪いことに、スマホのバッテリーがレッドゾーンの残量になっている。方向音痴のオイラは、日々スマホのGmapをあてにし過ぎているから、踏んだり蹴ったりだ。とにかく、こういう時は線路にそって歩き続けるしかない。家に着くまでどれくらい時間がかかるんだろう。こんなことは、学生時代以来だ。オイラは黙々と歩く。ただひたすら。

線路が大きな川に差し掛かった時、オイラの後方から声がした。「川ですね、二手に別れて橋を探しませんか?」びっくりして振り返ると、某有名バンドのドラマーだ。こりゃ、驚いた!こんな状況で、こんなことってあるんだな。こういうのをドラマーチックって言うのかも。

CDも持っているし、オイラのスマホにも数曲データが入っている。最近はあんまり聴いていなかったけどね。どうやら、そのドラマーも終電に乗れずにオイラとおんなじように、線路際の道を歩いていたようだ。そのことが、直感的にオイラにはすぐに判った。

「じゃ、ボクはこっち側を探すんで逆側をお願いします。橋が見つかったら必ず呼びにきますから」オイラはそう告げる。ヤバいな、今にも雨が降りそうだ。それに喉もカラカラ…。

そこで、オイラは目を覚ましたんだ。久しぶりの夢だった。好きなドラマーに会えたのはラッキーだったけど、電車に乗れなかったのは不愉快だな。一勝一敗の夢だった。

昨晩、久しぶりに忘年会に行ったのは本当で、だからあんな夢をみたんだろうなあ。ちなみに夢に出たドラマーは、昨日の忘年会には在席していません。夢の中で喉がカラカラだったのは、オイルヒーターが付けっぱなしで寝たせいだったみたい。

クリスマスが終わったら、街中はお正月ムードに一変する。25日の深夜は徹夜で模様替えをする業者が沢山いたことだろうな。来年の初夢は、100%良い夢がみたいもんだ。今から「獏飼い」しておいて、お正月に備えたいっス。

オンガク猫団(挿絵:髙田ナッツ )

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