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「学んで蓄積したものを価値に変える」、それがフリーランス~「IBM SkillsBuild Career Jumpstart Japan」受講生座談会~

新しい年を迎え、心機一転「今年こそは新しい学びを始めたい!」と思っている人も多いと思います。一方で、「フリーランスたるもの、常にアンテナを立てて、専門分野を磨き続けなくては!」と意気込むあまり、学びに向かう気持ちに焦りや義務感が交じってはいないでしょうか。ところが、実際に活躍するフリーランスに話を聞いたところ、「知りたい、やってみたいという気持ちが、自然と学びにつながっている」という姿が見えてきました。

この記事では、2023年に開催された体験学習付き無料プログラム「IBM SkillsBuild Career Jumpstart Japan」の修了者座談会から、フリーランスとして働きながら、どのように学び続けているか、学びを仕事に活かすためにはどうすればいいか、など、フリーランスの学びに関する気になるトピックをお届けします。

「IBM SkillsBuild Career Jumpstart Japan」
IBMが無償提供し、フリーランス協会が運営パートナーとなっている「IBM SkillsBuild」にて、2023年6月~8月にかけて開催されたクラウドエンジニアスキルが身に付く体験学習付き無料プログラム。「IBM SkillsBuild」のオンライン講座受講による事前学習と、課題作成を伴う体験型学習から成り立っており、人材不足と言われているクラウンドエンジニアとしてのエントリーレベルのスキルを習得できる内容となっている。
フリーランス協会会員が無料で使い放題となっている「IBM SkillsBuild / Udemy for IBM SkillsBuild」についてはこちら

<参加者プロフィール>
O太さん
エンジニア歴7年。ネットワークとセキュリティのエンジニアとして活動中。フリーランスとして独立して、1年1カ月。

S夫さん
エンジニア歴10年。不動産会社向けにWebサービスの開発を行う。5年前に独立し、2021年に法人化。

K子さん
システムエンジニア歴20年。設計からプログラミングまで、幅広く対応している。契約社員など働き方を変えつつ、フリーランスになって7年程度。


フリーランスは学んで蓄積したものが価値になる

―― エンジニアはテクノロジーの進化に合わせ、常にスキルアップしていかなくてはいけない印象があります。皆さんはフリーランスとして、普段はどのように学んでいますか?

S夫さん 私は本を読むのが好きなので、本屋に行って興味を引かれた本をいろいろ読んでいます。コンピュータ関係の技術書やビジネス書が多いですね。他にも、新しい技術スタックは公式リファレンスなどを見つつ勉強しています。また、オンライン学習プラットフォームである「Udemy」の講座もわかりやすいので、初めての分野はこれで網羅的に学習することもあります。

O太さん 私も本はよく手に取りますが、職業柄Webで調べることも多いです。最近では、AIやChatGPTなど、自分が興味を持ったものを触って試しています。特別に「勉強するぞ」と意識しているというより、自分の興味関心から自然にしていることですが、通常業務で生かせることもたくさんありますね。

K子さん 私は、業務内でわからないことが出てきたりつまずいたりした場合に、インターネットで調べたりするくらいでしょうか。どちらかというと今は、仕事に直結する学びというよりは、プライベートで興味を持っていることについて学びを深めたい時期ですね。

―― テクノロジーを扱うエンジニアでありながら、学びに「本屋」や「紙の書籍」を利用するというのは意外でした。

O太さん 3階建てのような大型書店に足を運ぶと、それまで興味がなかったり、仕事と関係なかったりする本に心が動いたりします。そうした出会いが意外と大事な気がしていますね。

S夫さん トレンドとなる情報はWEBが早いですが、もう少し深く、体系的に学びたいなというときは本屋で探すことが多いですね。きちんと整理された日本語で書かれた書籍は、やはりスッと頭に入ってきます。

紙の本との偶然の出会いは思いがけない学びにつながる

―― 皆さん今回のプログラムは、フリーランスでの仕事を続けながら受講されたそうですね。働きながら学ぶことで、大変と感じることはありますか?

K子さん 今回のプログラムでいえば、体験学習のサポート対応時間が「平日の9時から17時までだった点」が大変でした。土日は質問しても返事をいただけなかったため、サポートしてもらえる平日に少しでも進めるため、通常の仕事の後に1時間でもいいから取り組む必要がありました。これがなかなか大変だったので、働きながら受ける講座の形式としてはハードルが高かったように感じています。

O太さん 働きながら学ぶと、やはり時間を確保するのが大変ですね。私の場合は6カ月の子どもがいますので、今回の講座も時間の捻出に苦労しました。

S夫さん 私はあまり大変だと思ったことがないかもしれません。好きなジャンルの勉強ですし、苦手な科目を無理矢理させられるわけではありませんから。

―― なるほど、頂いたご意見は次回以降の参考にさせて頂きますね。アンケート調査では、学ぶ理由として「新しいことを学ぶのが好きだから」が上位に入った一方で、「フリーランスで講座などを受講する場合、受講料と仕事に時間を使えない分、ダブルでお金が減るのがつらい」といった声も寄せられています。

S夫さん これは私見ですが、フリーランスである以上、それは仕方がないと割り切っています。学んで蓄積したものを提供して、価値に変える。フリーランスは、それでお金をいただいています。ですから、そのために一時的に出費が増えたり仕事が減ったりするのは仕方がないのではないでしょうか。フリーランスは一人の事業なので、自分にどういった価値を与えていくかが収入に直結します。そのため、必要であれば勉強しなければなりませんし、不要なことは合理化していくべきです。雇用されているわけではないので、自分なりに工夫するのが大事ではないかと思います。

やり遂げたことが自信につながった

―― 普段から様々な形で学びを進める中で、今回、本プログラムを受講したきっかけや理由を教えてください。

O太さん フリーランス協会からの受講生募集のメールを見て、面白そうだなと思ったのがきっかけです。元々、ローカルサーバーを使って仕事をしており、クラウドサーバーは未経験でした。でも、フリーランスになってから徐々にクラウド分野の案件が増えてきていたので、「こんなプログラムがあるなら参加してみようかな」と思い、応募しました。

S夫さん 参加を決めたのは、体系的にAWSの利用方法や自分の習得度合いを確認したかったからです。それまでは書籍を読みつつ自己流で行っていたので、きちんと理解できているかを再確認したいと思ったんです。クラウドサーバーは、要件によっては、オーバースペックのものや少し足りていない場合などがあります。また、正しくない作り方をしてしまうと、その後の運用に時間がかかってしまうケースもある。ですから、正しい使い方を確かめたいと思っていました。

K子さん 私は参加した理由が2つあって、一つは働き方の選択肢を広げたかったからです。フルリモートで週4勤務ができる仕事を探していたので、クラウドエンジニアに興味を持っていました。もう一つはJavaを10年以上使っていたので、何か他のことも経験したいと考えたからです。AWSのことはよく耳にするし、勉強してみたいと思い、応募しました。

―― 受講の決め手は何でしたか?

O太さん 体験学習があったことですね。実際にAWSを操作できる点に魅力を感じていました。それに、一緒に受講する人がいれば、その人たちがどれくらい進めているかが見えるので、「自分もやらなくちゃ!」とやる気が出るのではないかと考えました。

S夫さん 私は無料だった点ですね。また、同じような働き方の人と交流する機会があまりないので、ネットワークやインフラ、クラウド系で独立されている方々のご意見も聞けるかなとも考えました。

K子さん 私は、AWSを触ったこともなかったので、触ってみたいという興味が一番強かったですね。

―― 本プログラムは、動画で学ぶ計28時間の事前学習と、専門家のフィードバックやサポートを受けながら、業界が実際に直面している課題を解決する計20時間のオンライン体験学習実際で構成されていました。受講した感想を聞かせてください。

S夫さん 体験学習を終えて、今までより自信がつきました。専門家のチェックを受けて、フィードバックをもらいながらゴールしたので、一定の評価は得られたのかなとホッとしています。今回の経験から、他のシステムアーキテクチャーを考える時に、別の視座からサービス構築ができるようになりました。例えば、今まではGitHubを使ってソースコードを管理していたのですが、AWSにも同じような機能がある。ですから、今後は要件に合わせて「どちらを使うのがいいか」と考えられるようになったのがいいですね。使うサービスによってコストや安定感が違いますから、AWSを知ったことで視座が広がったと感じています。

O太さん 今回の体験学習は、今の仕事とは直接関係ないこともあって、わからないことだらけでした。でも、調べながら進めて理解できたので、今の仕事でも調べる力や理解する力を補えたのではないかと感じています。やり遂げたことで自信もつきました。

K子さん 講座をすべてやり遂げたことで、これまでの経験も生かしながら、AWSを使った仕事もできそうだと自信が持てました。今回の講座では、何かにつまずいた時に、答えを教えてもらうのではなく「調べ方を教えてほしい」とお願いすることを意識していたんです。そのようにして進めていく中で、新しい環境でもこれまで培ってきた考え方ややり方が十分通じることがわかり、自信がつきました

―― 反対に、不安だった点や改善した方が良いと感じた点があれば教えてください。

O太さん 事前学習と体験学習で、難易度に大きく差があったように感じました。私はエンジニアなので対応できましたが、未経験の方にとって体験学習はかなり大変だったのではないでしょうか。例えば、サーバーのコマンドや、「階層」などネットワークやサーバーの基本知識にあたる部分の解説が事前学習にはありませんでした。そのため、そこの知識の有無が、体験学習の冒頭部分に対応できるかどうかに影響したのではないかと思います。

S夫さん 体験学習では要件が与えられ、それをAWSのサービス上で構築するのですが、その際にさまざまなエラーが出る仕組みになっていました。しかし、そういったことを事前学習では全然触れていない中での体験学習だったので、自分で調査する能力や、学んだ知識を応用して対応する力などが求められる内容でした。フロント系のエンジニアやデザイナーさんは大変だったのではないでしょうか。

学びは「仕事に直結」しなくてもいい

―― 今回の講座で学んだことが、何か仕事に生かせていますか?

S夫さん 学んだことをそのまま仕事に生かせているかというと、まだ難しいですね。でも、新しい技術を知ることで自分の能力が伸びるので、学んでおく、行動してみるのは自分の応用範囲を広げるために必要だと感じています。違うアプローチの仕方を考えられると、他のフリーランスとの差別化になると思うんです。例えば、「この方法で構築すれば、もう少しコストダウンできますよ」と提案できる。学んだことは、そういった形で使えるのではないでしょうか。

O太さん 私も、学んだことを直接生かす機会が目の前にあることはなかなかないと思っています。でも、結果論かもしれませんが、将来「あの時に学んだことが生かせたな」と思えたら、進化しているということかなと感じています。

K子さん 残念ながら今はまだAWSの仕事はありません。しかし、今回の講座をこれまでの経験も生かしながら終わらせることができたことと、答えではなく調べ方を教えてもらう方法でカバーできたことがよかったです。新しい環境だったとしても、そういった方法で進められるということがわかったのは自信になりましたね。

―― このような講座を利用しながらアップスキルを目指すフリーランスに向けて、アドバイスをお願いします。

S夫さん チャレンジすることで得られる技術や考え方は少なからずあると思います。機会があり、時間に都合がつきすこしでもモチベーションがあるならば、仕事の一部と思ってやってみるのもありじゃないかなと思います。

K子さん 例えばAWSは初めてでも、コマンドはLinuxやUNIXなどがわかっていたら、基本は似ているので扱えると思います。ですから、未経験の技術も経験しておくと何か新たなきっかけになるのではないかと思います。

O太さん スキルアップには2つの力が必要かと思っています。「自分がスキルアップしたいことを見つけること」と「それを実行すること」。この記事を見ていらっしゃるということは、ある程度前者の力が備わっているように思いますので、あとは実行するだけだと思います。
「やる時間がない」「できる自信がない」「無駄な時間かな?」と私も思ったことがありましたが、やったらなんとかなります。正直、大変ですが、その大変より「やってよかった」の方が強いので皆さんも積極的に行動していきましょう!

ライター/神代裕子
ライター・エディター。福岡県在住。出版社や制作会社で14年半、編集・ディレクターとして勤務。企業の広報誌やオウンドメディアの編集長などを務める。2019年に「LANKAWORKS」として独立。現在は、ビジネス系 Webメディアや企業のWebサイト・広報誌、書籍などで執筆するほか、講師としても活動中。趣味は日本酒、旅行、美容など。
@sakurakuma165
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