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インボイス前に考えるべき「判断」と「決断」〜現役フリーランスが考察!

インボイス開始が10月に迫り、これまで消費税のことをあまり意識してこなかった免税事業者も、自分自身の事業形態を分析し、登録するかしないかを「決断」することに直面しています。
まだ「判断」できない、「決断」できない・・・という方の参考になればと以下寄稿します。

個人事業主や小規模法人として事業をしている人(私もその一人です)は、実際に交渉や価格決定の場に立ち会った経験が何度もあると思いますが、
インボイスを前に、事業形態を分析・熟慮し、「判断」した上で登録する決断 ・登録しない決断をしなければなりません。
では、「事業形態を分析」が何を指すか。
その典型的な例をいくつか挙げましょう。


(A)BtoCの場合

客層によって登録の必要性が変わってきます。

(A-1)駄菓子屋のように、客のほぼ100%が一般消費者の場合

登録しないという「判断」が妥当です。

(A-2)居酒屋のように、客の多くは一般消費者だが、たまに企業の接待交際費として利用される場合

それら「たまに」の客にはインボイス受領はあきらめてもらって、登録しないという判断もあります。

(A-3)弁当屋のように、一般客に対しても販売をしているが、固定客企業へ毎日昼食を届けるようないわゆる大口顧客を持っている場合

登録しておいたほうが無難という「判断」もあります。

(B)自身がBtoB免税事業者で、買手が現簡易課税事業者だった場合(極めて特殊なケースですが)

登録はしないという判断が最適となります。
その理由はここでは割愛しますが、「自分」「簡易課税の買手」「さらにその販売先」の3者について、現行の取引状態とインボイス制度の取引状態(誰がインボイス受領を要しているか)を比較してみてください。登録しなくてもいい理由が見えてくるはずです。

これがまさに、「事業形態を分析」することによって最善の「判断」が得られる顕著な一例です。事業者たるもの、常に自分で判断しなければなりません。人から方針を与えられるわけではないのです。だからこそ、判断の一助となる知識を蓄えることは極めて重要です。

(C)BtoBの場合

「免税事業者の売手→本則課税事業者の買手」という関係において、その上流と下流の価格が変わらないままであれば、
(イ)現行制度
(ロ)インボイス後、免税事業者のままでいる
(ハ)インボイス後、課税事業者になる
の3つで、事業者2者の負担合計は  
イ<ハ<ロ の順で大きくなります。

※フリパラ補足※
(イ)免税事業者の消費税納税負担はなく、買手も消費税額控除できていた
(ロ)免税事業者は消費税納税負担はないが、買手は消費税額控除できず負担増
(ハ)課税事業者になり売手の消費税納税負担が増えるが、買手は消費税額控除ができて負担軽減

現行に比べて相対的に、インボイス後のほうが負担額の総計は大きくなります。
そしてまさに、その相対的負担増を売手か買手か、あるいは折半か、どこに求めるかが価格交渉であり、どういう論調でその場に臨むかという「判断」が必要になります。

SNSでは特段リスク無く、自由な論調で主張を展開することができます。
しかしビジネスの現場では、まさに取引先(お客様)相手に、お客様の目を見て言葉を発しなければいけません。
そこで誤った主張を展開してしまえば、最悪取引停止という大きな実害が発生します。常にリスクと隣り合わせなので、交渉の場は戦場です。
※インボイスに限らず、常にお客様との価格交渉はそういうものです。事業者はその覚悟を持って己の事業と向き合っています。

さて、前置きが長くなりましたが、BtoBでのいくつかの判断の例を挙げてみましょう。

(C-1)これまでの価格が、33,000円や55,000円のように明らかに11で割れる数字であり、消費税表記もあり、2019年の増税以前は32,400円や54,000円であった場合。

この場合、法の立て付けはどうであれ、「消費税をもらってなかった」と強弁するのはさすがに苦しいです。登録するのが妥当ですが、3年間の(買手側の)経過措置もあるので、登録しなければどうなるかというのを話し合ってみるといいかもしれません。それを含めての、登録するかしないかの判断となるでしょう。

(C-2)これまでの価格が30,000円などのキリのいい数字であり、消費税表記も無く、2019年以前も30,000円だった場合

これはいわゆる「買い叩き」に相当し、買手側が下請法違反である可能性があります。この場合、登録して、かつ価格を33,000円(税込)に上げるという選択があります。これまで買手は、明らかに売手が免税事業者であることを利用して、不当に値下げをしてきました。
だからこそ、「これからは課税事業者になるのだから、消費税も表記しますし、33,000円にもします」という主張が通りやすくなります。
33,000円になるのなら、課税事業者になったほうが得です。
法律上はこの主張は正当なのですが、今まで以上に周知されつつあります。また、フリーランス協会のような団体が、率先してこの事実を広めておられるという現状もあります。そうした社会全体の風を読んで、慎重に登録するかしないかの決断をしていくことが肝要です。

[まとめ]
ここで数例を挙げただけでも数多くのケースがあり、選択・判断のための材料は多岐にわたります。繰り返しになりますが、「決断」とは登録しない決断 ・登録する決断の両方を含みます。
そのための知恵を、事業者自身が正しく得ることを願って、これにて締めたいと思います。


※今回の寄稿は、SNS上でこの決断ポイントをとてもわかりやすく整理されていた4研DDTさんの許可を得て、一部改行などの整理を加え転載したものです。

寄稿者:4研DDT
工場向けの機械制御やデータ収集などのアプリケーション制作が専門のプログラマー。内部設計からコーディング、テストまでを一人でこなし、全て直接取引にて常時5社ほどと契約している。
https://ww7f-4thlab-ddt.com/freelance/profile/


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