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線形代数は何がしたいのか?(その1)


線形代数の意味を知りたい

大学で理工系分野において最初に習う必須科目が線形代数であるが、「線形代数は何の意味があるの?」と聞かれたら皆さんは答えられるだろうか?
恐らくは「行列の対角化できる」とか「固有値を求めて・・・」とか或いはちょっと分かる人でも「線形写像の理論を学んだ」で止まる人が多いのではないだろうか?線形代数の専門家はいないのだが、その理由が有限次元の行列の話はある意味で完全に解析できているからだと聞いてピンとくるだろうか?
主に応用の為に存在する行列の理論は膨大で私は殆ど知らないのだが、実は(平均的な)初学者が知りたいところは確定的に決まっている。即ちそれは行列の対角化(ジョルダン標準形)なのだが、もう少し俯瞰で見ると行列の(一般)スペクトル分解であり、(一般)固有空間への直和分解である。
・・・今からそれを記事に起こしたいのだが、どこへやったのか家を探しても線形代数の本はなく、15年くらい見てないので以下に書くことは少してきとうかもしれないが先に進むために困ったことは殆ど無いので頭の中にあるものだけでいく。

表現行列

まずこれが線形代数の始まりであると言っても過言ではない。行列というのは線形写像の表現である。(※以下、正方行列のみ念頭に置く、つまり線形写像は線形変換である)
即ち$${n \times n}$$の行列Aが与えられたとき、それは情報として頭の中で変換して$${f(x) = Ax}$$、$${x}$$はn次元列ベクトルとみよう。故に行列Aを与えることは関数fを与える事なのであるが、逆に考えて何らかの条件を付した関数fを与えることは行列Aを与えることと同じである。「この何らかの条件」が関数fの線形性である。そして、このfに対するAをfの表現行列と言う。fは線形性と言う制約を考えているだけで構造がぱっと見分からない、対してAは$${n \times n}$$の情報しかなく、応用上でも理論上でも扱いやすい。故に我々はfではなくAを紙面上に出す。しかし、Aとfは同じであり、Aを考えるという事は常にfの構造を考えているという事を念頭に置かねばならない。

線形空間~線形変換Aの舞台~

線形空間という概念は初学者には難解だが、原点を含み足し算とスカラー倍が定義された空間の事である。「え、私が困ってるのはそうじゃない!本の定義はもっと意味不明なんだよ!」と思うかもしれない(※多分表現行列に関しても本では「基底がうんぬん・・・」とか言っているだろうからそこに関しても思った人はいるかもしれないが・・・)が、定義がだらだら書いてあるのは足し算(スカラー倍)を足し算(スカラー倍)と呼べるための性質である。
例えば1+1=2と(1, 1) + (1, 2)=(2, 3)は我々は平気で受け入れているが、前者と後者の+の意味は違う。これは直感的に誰しもが認められると思うが、では適当に考えた演算で1 + 1 = 89274として「これは足し算だ!」と言い張っても必ずしも認められない場合が存在する。つまり足し算を足し算と呼ぶためのプロパティが延々と書かれているのである。

行列の対角化

さて、xの舞台としての線形空間Vとその上での線形変換fとしての行列Aという演者が整った。この上で「さて何をしようか?」という事なのだが、もし線形変換という名の$${n \times n}$$の無機質なマトリックスに対して、その動き(※即ちどの点xをどの点yにうつすか)を幾何として完全に把握出来たらそれは完全解析と言えるのではないだろうか?
線形代数の良いところは、これが極めて理想に近い形で言えるという事である。
これに対応するのが行列Aの対角化又はジョルダン標準形である。即ち完全に最もシンプルに把握出来る幾何の場合、それを行列サイドで見た時のパターンは対角化と呼ばれ、準シンプルに把握できるパターンをジョルダン標準形と言うのだが、結論として「ジョルダン標準形には常にできる」し行列の$${n \times n}$$の情報を観察することで対角化可能に出来るパターンも知られているのだ。

次に向けて

次は「幾何として完全に把握出来たら」という部分を一体どういう幾何なのか、固有値と固有ベクトルから書きます。このことで固有値などの理解が出来るでしょう。
更に一般スペクトル分解、(一般)固有空間への直和分解という概念を紹介します。このうちの後者が一言でいう所の「線形代数(有限次元)は解明されている」なのだと私は思っています。
次いで一般的に線形代数の本では二次形式が出てくるかもしれませんが(※しばらく本は読んでないですが、出てきそうな気がしてます・・・)、それがどういう立ち位置で出てきているのか紹介したいと思います。
最後に無限次元に向けてのモチベーションと似ている結果と違う結果を簡単に紹介して終わりにしたいと思います。


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