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本読みました(確率過程)


読書感想文

以前もやったが自分のモチベーションにも繋がるので「本を読んだのでその感想を」シリーズをやっていこうと思う。
今回はこちらの本。

これは以前、数理統計学の本を読んだと報告したので、それを更に確率過程という分野に進めた本である。
以前読んだ本。

今回の本も割と前から買っていたのだが、前回の数理統計学よりもすぐ挫折した過去を持つので結構難しいと思う。しかし今回は割とすらすら読めた。しかし、最後はもはや書いている証明とかを読む気力はなく、言っていることだけ理解して飛ばした。

本の趣旨

最初に言っておくとこの本はかなりの名著だと思う。いや、難解な分野である確率過程をライトに書いているのでそういう本は名著という評価を受けづらいという問題上一般的には「名著」という評価になっていかないと思うが、数学的な厳密性を犠牲にすることなく本質的な部分を対話形式で超絶分かりやすく書いていると思う。
特に数学的厳密性を犠牲にすることはしばしば逆に抽象的な分かりにくさを生むのでそれを犠牲にせずに本質のみを話すのは凄いと思う。社会人になると時間がない故、証明とかはあまり読みたくないので助かった。
今回の記事ではまず簡単に確率過程を説明した後、本の内容についてかいつまんで書いていきたいと思う。

確率過程とは

まず数理統計学または確率論を多少分かっている人向けに、確率過程の説明をする。
確率過程とは数列$${a_n}$$あるいは関数$${f(t)}$$がとる各値を確率変数にしたもの$${A_n}$$、$${X(t)}$$の事である。多変量統計学との違いは確率変数が無限なる列であるか、或いは変数の系が時刻に対して連続的に存在するところである。
例えば、バスを待つ客の到着時刻の列$${A_n}$$は確定した時刻の列とは言えないが、背景としてある確率法則$${P}$$を持って到着すると考えられるのでインデックスn一つ一つに対して$${A_n}$$は確率変数である。
標本$${\omega \in \Omega}$$を固定し、得られる実現値$${A_n(\omega) = a_n}$$を基に何らかの式を書くと確定的な式として直感的に分かりやすい反面、数学的文章全体を見て確率法則のメカニズムを考えることになる。この手法は一般的ではなく、一般的に数学理論を展開する場合には式にメカニズム全体を含ませる手口が使われる。こうするととっかかりはしんどくても後々すっきりすることが多い。これは例えば有理数を定義するときに$${\frac{1}{2}}$$の同値類$${(\frac{1}{2})}$$こそを新たな有理数と認定して、式にはそれを書くことと状況が似ている。

マルコフ過程

時間貸し有料駐車場の利用状況を考え、時刻tにおいて駐車場を利用している車の台数を$${X(t)}$$とおくと、これは時刻tにおいて確定した値ではないから確率過程と言える。更に、到着のランダム性、退去は現在時刻の利用時間によってのみ決まるというモデリングをすれば未来の時刻tにおける系内駐車数$${X(t)}$$はその直前の時刻$${t-}$$の利用者数とその時刻における到着および退去をする車のみに依存すると言える。
即ち、$${\{X(u); 0 \leqq u \leqq t\}}$$が、時刻t以後の変化$${\{X(u); u > t\}}$$に対して$${X(t)}$$を通してのみ関係する場合をマルコフ過程と言う。
この場合に対して、最も解析的な結果はあらゆる状態空間(確率変数の値の集合)の元$${x \in S}$$に対して$${T_tf(x) = E(f(X(t))|X(0) = x)}$$が判明することである。これを作用素の半群と見た時の、生成作用素$${\mathcal{A}}$$は直後の変化であるが、これを解析的に求めた$${n \times n}$$行列(nは駐車できる数)に対して$${T_t = e^{t\mathcal{A}}}$$を求めることは容易ではない(また生成作用素$${\mathcal{A}}$$の計算も容易ではない)。更に状態空間Sが無限集合の時は、加算の時でも$${\mathcal{A}}$$は無限次元行列なのでTaylor展開としての半群の計算は不可能だ。

定常分布

ここで解析的解を見つけることをある意味妥協し、時間的に変化のない分布を見つけることに目線を移す。得られる結果は各時刻に依存しないためある意味弱く抽象的な結果だが、その分求めやすくなっていることが期待され、様々な結果が得られている。
ここで定常分布とは$${X(0)}$$の分布をうまく選んだ時において、$${E(T_tf(X(0)))}$$がtに依存しない時の分布の事であり、$${X(t), t \rightarrow \infty}$$の時の分布が定常分布であることが証明できる。
このような分布を求めると、例えば到着した車が満車のため駐車場に入れない確率などを簡潔に求めることが出来る(※アーランB式という)。即ちこの結果は時刻に依らない結果であるので、時刻をマスクした知識だけあれば良いと分かるが、定常分布は時刻を上手くマスクしたマルコフ過程における知見と言うことができる

マルチンゲールについて

少し長くかつ高度になってきたので略すが、マルチンゲールというのはランダムネスの確率過程であり、予測可能な確率過程とマルチンゲールの和の過程をセミマルチンゲールという。
伊藤の公式という有名な公式は確率微分方程式(発展方程式)のセミマルチンゲール表現である。
これを解説するには測度、$${\sigma }$$-algebraの条件付き期待値の定義の理解、フィルトレーションという系の理解という数学&直感の両面からの(結構難しい)理解が必要となるので、断念した。
特に条件付き期待値の定義は結果が確率変数、即ち標本空間の元によって変化し得るものという直感的な分かり難さがあるが、この本ではその辺の説明が上手くなされており、よく読むとその定義の自然性が分かるようになっている。

まとめ

今回は難しかったですね・・・。ここまで読めた人はいますか?
あと、私は社会人趣味数学勢なのでガチな証明はできないです。
次はどうしようか?統計検定やろうか、機械学習やろうか、リスク最適性数学やろうか、確率過程やろうか、ファイナンスやろうか、経済学やろうか迷い中です。
もしこんな風な良書があればコメントで教えてください。

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