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【時に刻まれる愛:2-8】心に刻め
サタデーランチ母のアトリエの裏には、薔薇の庭園がある。
そこに、ちょっとしたテーブルが置いてあって、ボクらはそのテーブルでよくランチをした。
決まって土曜日。
父と母とボクの3人で、そのテーブルで昼食を摂るのだ。
まるで、母が描いていた絵のように、ボクらは毎週のその時間を楽しんだ。
いつも土曜日に、薔薇の庭園で食べるランチには、母がサンドイッチを用意してくれた。
そして、ボクも父も、母
【時に刻まれる愛:2-7】父に刻まれたボクの記憶
幼い子供城のアトリエにある、母が描いた絵をボクはしばらく見ていた。
父と母とボク。
3人が楽しそうに食事を摂っている絵だ。
本当にあの頃は幸せだった。
ボクはしばらく、その絵を見ながら懐かしんでいた。
ふと我に返ると、ボクはアトリエの中を見渡した。
ん?アトリエの隅にも、イーゼルに絵が立てかけてあるな。
こっちの絵は何だろうか?
ボクはその絵に近づいた。
「これは・・・。」
ボクは
【時に刻まれる愛:2-6】アトリエ
無限に広がる薔薇母のアトリエは、中庭の先にある。
絵を描いたり、薔薇を飾ったりと、母が趣味を楽しむための場所なのだ。
ボクは中庭を抜けて、アトリエの方に歩いた。
地下室での謎を解いた後だからか、風がとても気持ち良い。
あの地下室は、冷んやりとした感じだったが、風は全く通っていなかった。
それに比べて、中庭にはいつでも気持ちの良い風が吹いている。
風に乗って、微かに薔薇の香りがする。
【時に刻まれる愛:2-5】第二の手紙
成長地下室の根のような柱から、ボクは第二のヒントを見つけた。
第一のヒントと同じような封筒だ。
中にはやはり、同様のアイテムが入っていた。
手紙。カード。懐中時計。
ボクはまず、封筒から手紙を取り出して読んでみることにした。
それは、難解で独特な言い回しではあるものの、この手紙に辿り着く過程のボクをまるで見ながら書いたかのような内容だった。
そうだ、地下室を調べながら、ボクはたくさん
【時に刻まれる愛:2-4】父の背中
つながりを抱いてそれにしても、本当に驚いた。
ボクと爺やが10年も住んでいる、あの湖のほとりの隠れ家。
その湖を、紺色のセーターの男性が、毎朝ゆっくりと船を漕いで行く。
夕方になると、その男性が、湖の向こうから、またゆっくりと戻って来る。
この光景を、よくボクは部屋の窓から眺めていた。
まだボクが、父の死のショックに耐えかねて、塞ぎ込んでいた時期に。
話したこともないし、今後もないだろう。
【時に刻まれる愛:2-3】ふたりの絆
執務室隠された地下室の、さらに奥にある、誰も知らない部屋。
それは一目で、執務室だと分かった。
手前にある研究室とは、雰囲気がまったく違う。
研究室のエリアは、難しい本や資料が机の上に山積みにされており、きれいに整っているというよりは、生々しい努力の積み重ねが感じられる雰囲気だった。
それに比べて、この執務室は、とても綺麗に整っている。
机の上には、ほとんど何も置かれていない。
黒い
【時に刻まれる愛:2-2】隠された部屋
本当の研究室城の地下に隠された、秘密の部屋。
扉を開けると、そこは一目で父の隠し部屋だと分かった。
正面に大きな机があり、その上には難しい書物が山積みにされていた。
部屋そのものは、そこまで広くはない。隠し部屋らしい狭さだ。
それなのに机が大きいものだから、回り込んで椅子に座るのがやっとという様子だ。
机の後ろは、壁一面が本棚だ。
これまた、明らかに難しい書物がずらりと並ぶ本棚だった。
【時に刻まれる愛:2-1】第一の手紙
手紙この城の、象徴的な存在である大きな柱時計。
その裏側に隠されていた、父からの手紙を目にしていた。
手紙には、こう書かれていた。
相変わらず、独特な言い回しだ。
記憶の中での父の声が、ボクの心の中でこの手紙を読んでくれた。
低く、力強く、安心感のある、父の声だ。
手紙の冒頭に書かれている、
最初の贈り物
とは、この城のことだろう。
その後にも、受け継ぐ、という言葉が使われてい
【時に刻まれる愛:1-10】手紙の真相
追伸ボクは爺やと一緒に、父からの謎めいた手紙に目を通していた。
「ほら、この追伸だよ!」
ボクは急かすように爺やに言った。
爺やはボクの横で、改めて追伸を読んだ。
『たしかに、お父上らしい
独特な言い回しですな。』
爺やの指摘はその通りなのだが、ボクが言いたいのはそれではなかった。
「爺や、違うんだ。
まるで円盤を駆け巡るように
永遠に時の中を
周り続けるのだろう。
っ
【時に刻まれる愛:1-9】震える心
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いざ、過去との対決母の病室を後にして、ボクは病院を出た。
病院の外では、いつものように爺やが待っていた。
ボクを車に乗せると、爺やは尋ねた。
『坊っちゃま、隠れ家の方へ戻られますか?』
爺やが、今の家のことを隠れ家と表現するのは珍しかった。
ボクが父の家、いや、もうボクの家なのかもしれないが、そこに向かう決意をしたことを知っているので、あえて今の家のことを隠れ
【時に刻まれる愛:1-8】父からの贈り物
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裏側爺やと、もう一度、書物庫の奥にある隠し部屋へと歩いた。
その間、ずっと爺やの言葉が気になり続けていた。
『坊っちゃま。
真実を知りたければ、
裏側までよく見ることです。』
あの言葉の意味はいったい・・・。
書物庫に着くと、今度はボクが秘密の扉を開けた。
書物庫の一番奥には、父の家から持ってきた父の本だけを収納した本棚がある。
その中でも、特に古い本
【時に刻まれる愛:1-7】決意
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推理それにしても驚いた。
ボクが20歳になったら、父の、お城のような邸宅を、ボクに譲ることになっていたなんて。
いや、おそらく最初からそう決まっていたわけじゃない。
当然だ。
それを決めたのは、父が、自分の身に何が起きるのかがはっきりと分かって、覚悟した後なのだろう。
つまり、de・hat社に父が開発した薬の存在を揉み消された後だ。
人類から死の悲しみを消し去
【時に刻まれる愛:1-6】バースデーイブ
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20歳を前にその日、大学から家に帰ると、いつにも増して家の中が綺麗だった。
キッチンからは何やら良い匂いがしてくる。
「爺や・・・。」
そう照れ笑いしながら、ボクは爺やに、ただいまと言った。
『おかえりなさいませ、坊っちゃま。
今日は、特別なディナーですぞ!』
今日の爺やは、いつになく張り切っている。
朝、出かける前にも張り切っていたから、その意味はボクに
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【時に刻まれる愛:1-5】爺やの仕事
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二人の生活母が入院し、爺やと二人の生活が始まった。
最初は少し寂しさも感じたが、すぐに慣れた。
それには二つ理由がある。
一つは、今の家に引っ越してからというもの、母はこれまでも部屋で寝込む日々が続いていたから、爺やと二人の生活はあまり今までと変わらないということだった。
二つ目は、母のためにもボクがしっかりしないといけない、という意識がどこかにあったこと。
【時に刻まれる愛:1-4】孤独の極地
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母のスープ敷地内の森を父と走り回って家に帰ると、母はいつもスープを作っていた。
幼い頃の記憶だ。
父は偉大で優しい。
そして、母はいつでも穏やかだった。
母の作るスープには野菜がたくさん入っていて、ボクはこのスープが大好きだった。
「カエルが、死んじゃったんだよ・・・。」
ある日、大切に育てていたカエルが死んでしまったのを見て、ボクは涙が止まらず、母に話しかけ