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台にアニバーサリー

医学部に合格し、東京は常盤台近くの古い一軒家の二階に下宿が決まり、
上京した日が僕の独立記念日だった。
勉強ばかりで家事などしたことがなかったから、当然まかない付き、トマト嫌いの僕は下宿のおばさんから砂糖まぶしのトマトを出され、初めて食べた。甘いトマト記念日もここで経験した。

国家試験合格と同時に、大学病院のある旗の台に引っ越した。ここが僕の医者としての一歩を踏み出した記念の地である。

僕は希望どうり心臓外科医として、運び込まれる患者たちの病気を治すために、毎日手術台に向き合っている。ここで手術を受け、再生記念日を迎える人たちを一人でも増やすために。

いつまでこの仕事が続けられるかわからないが、命が果てる日まで、僕は使命を全うする。最後の日患者として僕もこの手術台に上っているだろうか。いや、手術が成功し、台の横でメスを握ったまま、倒れたい。医者としての僕の命が消える日を、誰かの再生の記念日にするのだ。

          おわり(405文字)

たらはかにさんの企画に参加させてください。
たらはかにさんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします。

アニバーサリー(記念日)と台を組み合わせて書いてみました。
ああ、医者になりたかったなぁ・・・気の弱いわたしには
どうがんばっても到底無理、せめて物語で・・・


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