幽霊花の咲く頃に ~第十話~

【恋】
恋しい恋しいと誰かが言う声が聞こえた。声が大きくなるのに比例して視界が明るくなっていく。最初にはっきり見えたのは泣きそうな顔で見下ろしているリンだった。目があった瞬間、目の縁に溜まっていた涙が一粒溢れ落ちた。
「よかった……リコちゃん……起きてくれた……」
「……何があったの?」
記憶の糸を辿ってみるも襖を開けてからは何も覚えていない。体を起こしながら尋ねる。
「中に入った瞬間倒れたんだよ。何回呼んでも起きてくれないし……このまま目覚ましてくれないかと思った……」
話ながらしゃくりあげ出し、途中から聞き取るのに一苦労だった。自分では何も覚えていないが、随分と心配をかけてしまったらしい。このままでは泣きすぎで干からびてしまいそうだ。
「心配かけてごめん」
泣きながらリンは首を横に振った。その姿に懐かしさを覚えたが、今はそれどころではないと頭から追いやることにした。

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