幽霊花の咲く頃に ~第八話~

※ 流血表現があります。苦手な方はご注意下さい。

【靴】
靴が転がっていた。赤と白の彼岸花が一面に咲き誇る野原のような場所に靴が片方だけ転がっている。もう片方は何処なのか。靴を始点に伸びる赤い跡を追いかける。何かを引きずったような赤い跡に嫌な予感が募っていく。これ以上は追いかけない方がいい、と脳が警鐘を鳴らしている。しかし目は赤い跡を追いかけ続け、ついには靴の主の元に辿り着いた。
喉元まで出かかった悲鳴を飲み込む。血溜まりに倒れ伏す人影の正体は見当もつかなかったが、傍らに佇む人物には見覚えがあった。
俯き加減の横顔には長い黒髪がかかっており、表情は窺えない。それでも目の前の人物が笑っているのは容易に想像がついた。
なんで、と呟いたが声にはならなかった。それなのに目の前の人物はゆっくりと顔を上げてこちらを見た。
「何でって本当は解ってるでしょ?」
口元に浮かべた笑みとは不釣り合いな冷たい声。若干の間を置いて再び冷たい声が鼓膜を震わせて、聞きたくなかった事実を突き付けてくる。
「だって私は貴女だもの」
目の前の人物、もう一人の私は笑みを深めた。

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