幽霊花の咲く頃に ~第一話~

【雨】
雨音が聞こえた。重たい目蓋をゆっくりと上げ、違和感に気付いた。まず視界に映ったのは畳の目、ついで木製の箪笥や机などの家具の数々。自らの部屋とは異なる趣に意識は一気に覚醒した。勢いよく体を起こして辺りを見渡す。
正面には襖、背後には障子が貼られた小さな窓、左右の壁沿いには家具が整然と並んでいる。
「此処は何処?」
部屋に響く自分の声が震えていた。つい先程までは学校で授業を受けていたはずなのに、瞬きした一瞬で見ず知らずの場所に連れてこられたのだ。動揺しない方がおかしい。
それなのに頭の片隅では冷静な自分が現状を分析し、何をすべきかを導きだしていた。
まずは部屋から出よう。このまま此処にいても何も進展しないから。
立ち上がり、ふらつく足を叱咤して扉に向かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?