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140字小説の詰め合わせ

noteアドベントカレンダー2017 12月11日担当の結紀はるかです。
140字小説を詰め込んでみました。
クリスマスっぽさは無くなってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。

【クリスマスプレゼント】
「クリスマスに欲しいものある?」
「何でもいい?」
「可能な範囲なら」
「クリスマス、私と一緒に過ごしてほしいんだ」
「そんなのでいいの?」
「そんなのって。貴方にしかできないことだよ」
「……それはズルすぎるな」
「ダメ?」
「ダメな訳あるか。喜んで一緒にいさせていただきます」


【雪】
雪が降ってきた。灰色の空から舞い降りてくる白い結晶は、手の平に触れると消えてしまった。
「儚いね」
雪も人も。溜め息は雪と落ちていった。らしくもなくセンチメンタルになっているのは、待ち人が来ないからだ。もう約束の時間を二十分も過ぎている。
早く来て。心の中で祈りながら手を握った。

【サンタクロース】
「サンタさんを捕まえるんだ」
そう言って12月24日の夜、虫取網を携えて窓の外を睨んでいる私を、母は困ったように笑いながら嗜めていた。
結局寝てしまって翌朝がっかりした。
そんなほろ苦くて可愛らしい思い出を、幼い頃の私と同じように虫取網を片手に駄々をこねる娘を見て思い出していた。

【廊下】
廊下から聞こえてくる笑い声。
頬杖をついて横目で見れば、友達と談笑している彼がいた。
今の季節、廊下は冷え冷えとしている。
寒くないのだろうか。
心配半分見れた嬉しさ半分の複雑な気持ちで見ていると、彼と目があった。
そらさずに小さく手を振ってくれる。
彼のそういうところが好きだ。

【クリスマスソング】
クリスマスソングが町の至る所で流れている。後二週間でクリスマスだから仕方ないと言ったらそれまでだが、いい加減に聞き飽きた。
隣を歩く彼女が鼻歌を歌い出した。今かかっている曲にあわせて、楽しげに。
すると途端に歌が新鮮味に溢れた。
これならクリスマスまで憂鬱にならなくて済みそうだ。

【待ち合わせ】
先程まで着ていたコートは腕にかかっている。
冬というよりは春と言いたくなる暖かな今日。
僕は駅前で彼女を待っていた。
『明日暇?』
簡潔なメッセージに二つ返事で頷いたら、あれよあれよという間に出掛ける約束をとりつけた。
昨日のやりとりを思い出し、緩む口元を押さえつつ彼女を待った。

【イルミネーション】
イルミネーションが駅前を鮮やかに彩っている。
この時期にしか見られない光景に暫し足を止めて眺めた。
「綺麗だね」
「君の方が綺麗だよ」
「鳥肌たったけど」
「だよね。俺も鳥肌たったし」
「じゃあ何で言ったの」
色気も何もあったものではないが、私と貴方にはこれくらいがちょうどいい。

【氷】
水溜まりが凍っていた。足を乗せ、少し力をこめるとパキリと音をたててヒビが入った。足を退けると、踏んだ所を中心に四方八方へヒビが伸びていた。小学生の時は面白がってよく踏んでいたことを思い出し、懐かしくなった。
たまには童心にかえってみるのもありかもしれない。もう一回足を踏み出した。

【手を繋ぐ】
「寒いね」
ぐるぐる巻きにしたマフラーに顔をうずめ、君は呟いた。
僕は無言で頷いて君の隣を歩く。
今にも雪が振りだしそうな灰色の雲を見上げ、溜め息一つ吐き出した。
「ね。手、繋ごうか」
「寒いから?」
「寒いから」
氷みたいに冷たい君の手は徐々に僕の手と同じ温度に変わっていった。

【炬燵】
寒がりなご主人はストーブを点け、炬燵に潜り込んでいる。寒い寒いと丸くなっている姿に冬の到来を実感した。
「おいで」
顔だけあげたご主人に呼ばれた。ストーブの前、程よく暖かくて動きたくない。でもご主人の横が心地好さそうだったから、伸びをしてにゃーと一声鳴き、ご主人の横に寝そべった。

【雪だるま】
“雪だるま作ったよー”
メッセージに添えられた写真には小さめの雪だるまが写っていた。
目は石、手は木の枝、頭にはバケツという定番スタイルの雪だるまだ。
カメラを向けている彼女はどんな顔をしているのかは、残念ながら想像するしかない。
彼女の顔を想像しながら僕は返事を考えたのだった。

【風】
太陽は出ているのに吹き付ける風は冷たい。
「洗濯物がよく乾きそうな天気だよね」
ベランダで揺れる洗濯物を見ながら彼女は呟いた。
「外には」
「出たくなーい」
「じゃあ今日はダラダラしようか」
「さーんせい」
ふふ、と笑った彼女は洗濯物から僕に視線を移した。久しぶりに目があったね。

【海】
海に来ていた。真冬の海辺に人気はなく、閑散としている。
「やっぱり寒いんだね」
自分の体を抱くようにしながら、彼女は波打ち際を歩いている。
冬に海に行こう、なんてどういう風の吹き回しなのか。僕には解らない。
それでも、彼女の提案に二つ返事で頷いてしまう辺り、僕は彼女に惚れている。

以上13作品でした。
クリスマスまで後二週間。怪我や病気などしないように楽しく、過ごせるように祈っています。

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