もう一つの人生

娘が毎週観ているテレビで、「卒業文集に将来の夢を書いたのは叶ったか」について話ていたのをチラッと観て、そう言えば小学校の卒業文集には「劇団に入団したい」と書いたことを思い出しました。

小学校高学年から、2か月に1度、母親と弟、そして近所の親子友達と演劇を見に行っていました。様々なジャンルの演劇はとても刺激的で、強い意志ではないけれど、「やってみたいな」と思っていたので将来の夢に書いてみたくなったのです。
でも、やっぱり恥ずかしさもあったので、当時エレクトーンを習っていたので、「エレクトーンの先生」と書き直そうとしましたが、友達たちが面白がって「そのまま!」とお願いするので、その勢いに負けて「劇団に入団」のままとなったのです。

その劇団入団は人生で全く関係ない事柄だと思っていましたが、私にも「夢」が叶ってしまうかもしれない状況があったのでした。

小、中学生からの親友で、高校はばらばらになっても仲良くしていた友達がいました。高校を卒業してから、私は短期大学へ進学、友達は進学はしませんでした。短大時代はその子に誘われて、同じ場所でアルバイトをしました。

短大2年生の2月まで就職が決まらず、卒業旅行だけ計画している危うい状態でしたが、ぎりぎりになって地元の事務職に就職することが出来ました。

就職が決まったのを友達に報告すると、「私は春から劇団に入団すると決めたんだけど、もし☆らん☆が就職決まらなかったら、劇団誘おうかと思っていた」と打ち明けられたのです。
私はどんな反応をしたのか忘れてしまいましたが、そんな気は一切なかったので、「誘われても断るな」と考えたのだけは覚えています。
何故なら、小学校の時の卒業文集で書いた夢は、なんとなしに書いたもので、映画や演劇は好きでも、自分が役者になりたいとは一度も考えたことが無かったからです。

でも、友達が誘ってくれたことが嬉しかったし、劇団に入団することを一度考えてみました。
「そんな、もうひとつの道を歩んでいたかもしれないのか」
就職が決まらず、友達の強い勧めで劇団に入団し、役者を極める人生。
全く無いとも限らなかった、もうひとつの未来。

人生は選択の連続だけれど、今回のように、選択されなかった道を選んだ場合について考えてしまうことがあります。

その場合、私の周りにはどんな人たちがいて、どんな景色をみていたのだろう。

卒業文集の懐かしい記憶から回想し想像するように、「もしかして、私が選ばなかった道を選んで生きている、もう一人の私がいる世界があるのだろうか?その私を見に行きたいな」など、そんなことまで考えてしまいます。

生きているうちに、パラレルワールドへ行けるように進化することはなさそうです。だから、想像して楽しむことで、選ばれなかった人生も、私の人生の一部になった気持ちになるのです。

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