このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」。
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を（株）遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年12月号』より、「伊万里市」「町田市」を紹介します。

★伊万里市

異例の立体交差化？ JRと松浦鉄道の
線路を「分断」し、市街地を貫く道路を整備

佐賀県の西端に位置し、長崎県と接する伊万里市。市域北部は入り組んだ伊万里湾を介して玄界灘に開けている。古くは伊万里焼の積出港として発展、明治期以降は石炭の積出港としての機能も担った。なお、伊万里焼は積出港である伊万里の地名からそう呼ばれているが、その多くは隣接する有田・波佐見・三川内などで生産されたものである。

現在の人口は約5万人。中心市街地は伊万里湾南端の細い入り江付近に広がっており、古くからの繁華街はJR筑肥線とJR松浦線を引き継いだ第三セクター・松浦鉄道が接続する「伊万里」駅周辺に集中している。

同駅が一風変わった形で、その姿を大きく変えたのは2002年のこと。JRと松浦鉄道は、同駅で一つのレールで結ばれていたが、02年に西側に松浦鉄道の行き止まりの駅舎が、東側にはJRの行き止まりの駅舎が設置された。両駅の間には、市街地を南北に貫く幹線道路が新たに整備され、線路によって南北に分断されていた市街地を一体化する一方、旧国鉄時代には相互乗り入れも行なっていた両鉄道は完全に分断。言わば、高架化も地下化もせずに、中心市街地の立体交差化を図った格好だ。もちろん、この施策には賛否両論
があった。車社会の同市では、線路を分断してでも道路の整備を優先すべきとの声の一方、この先未来永劫、筑肥線への直通列車が走らないことへの不安の声もあったという。ただ、分断以降は、駅周辺でマンションやホテルなどの建設などが進み、市街地を南北に貫く道路によって、交通流動の風通しが良くなったという印象は受ける。

少子高齢化や中心市街地の空洞化といった課題は同市も例外ではないが、線路の分断という、同市による「ある種の英断」が、今後長い年月を経て、最終的にどのような結果をもたらすのか、注目されるところだろう。

★町田市

ベッドタウン、商業都市、学園都市として
急速に発展。南町田の駅周辺に新たな拠点

東京都多摩南部に位置し、神奈川県に大きく食い込む形で接している町田市。現在の人口は約43万人と、都内では23区、八王子市に次いで多い。戦後、主に市域の北部で宅地開発が進んだことで人口が急増し、急速にベッドタウン化が進んだ。JR横浜線と小田急小田原線が交差する「町田」駅周辺には商業が集積。東京都多摩南部だけでなく、横浜線・小田急線沿線を中心とする神奈川県北部にも広大な商圏を有している。

市内には大学や短大、私立高校などが多数立地していることから、通勤人口とは対照的に、通学人口は流入超過となっている。広域からの集客に加えこうした若年層による消費行動も、「町田」駅周辺のにぎわいを支えている。

ベッドタウンであり、商業都市であり、学園都市でもあるという、多様な顔を持つ同市だが、急速な発展による課題も抱えている。主に北部の丘陵地帯ではスプロール開発が進み、道路網が未整備だったことから、市域を南北に貫く鎌倉街道や南東から北西へ貫く町田街道などの幹線道路に自動車の流入が集中、慢性的な渋滞を引き起こしている。人口の急増や繁華街の発展に対し、警察のキャパシティが追い付いていないとの指摘もある。

また、他のベッドタウン同様、旧住宅公団や住宅供給公社により高度成長期に整備された大規模団地では、少子高齢化が進行。団地周辺では小学校の合併や廃校が進んでいる。同じ市内でも、子育て世代の流入が続き、新規の学校開設もある新興住宅地とは対照的だ。

なお、市域の南端・東急田園都市線「南町田グランベリーパーク」駅周辺では、町田市と東急電鉄による再開発が進んでいる。多様な顔を持つ同市にあって、「町田」駅周辺とは別の新たな拠点としての発展に期待したいところだろう。

※PDFファイルをダウンロードいただくと、実際の誌面をご確認いただけます
※（株）不動産流通研究所の著作物です。二次利用、無断転載はご遠慮ください

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆地場で活躍する不動産会社から大手までさまざまな企業を取材し、不動産業界の最新のトレンドを紹介する業界誌『月刊不動産流通』

★★　購読お申込み・試し読みはこちらから ↓　★★

☆☆　【最新号２月号も解禁📌】noteでも試し読みができます！↓　☆☆

◆不動産業界の最新ニュースを毎日お届けするWebサイト「R.E.port」

◆不動産用語集サイト「R.E.words」

🔐不動産ビジネスの最新情報を更新！フォローするだけで業界トレンドをリアルタイムで把握　不動産流通研究所公式Twitter