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「自分に、なにも無いのが怖いのです」

「自分に、なにも無いのが怖いのです、」と
 私が言った。
「どうしてそう思うの?」
 自分には、誇れるものがなにも無いのです、と
 私が言うから、切なくなった。
「どうして、忘れてしまったの?」

 忘れていた、受け取ったハズのものの数かず。
 思い出せないものも含めて、出会ったハズのいろいろが
 私にはある。
 解離した私の思い出は、虫食いで
 それでも思い出せる、だいじな出会いのさまざまが
 私にはある。

 空虚なのは、なぜだろう?
 こんなに虚しいのは、儚いのは、なぜだろう?

「自分にも、誇れるものがあったのでしょう。」
 それでも、と私が言った。
「それを表せない自分には、意味が無いのです」
 表現者としての私が言った。

「成果はあとから随いて来るよ、」と
 私が告げた。
「あなたを形造ったものは、そんな不確かなものではないから」
 宣教師のように、清い足の持ち主のように
 福音を。安らいを。告げて
 私は去ろうとした。

「もうすこし、ここに居てください、」と
 泣きそうな私が言った。
 泣けないままの、私が言った。

 . . 𖥧 𖥧 𖧧 ˒˒. .

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