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分かち合いの経済-前編-

今日の経済の特徴は「貪欲」「利己主義」「争い」

今日の経済の特徴は「貪欲」「利己主義」「争い」であるー

そう述べているのは経済学者であり教育者、作家のスロベニア人ロック・クラリ氏です。彼は、協力の原則と物の公正な分かち合いの原則に基づいた代替的な経済モデルを開発し促進しています。

クラリ氏:今日の経済は「貪欲」「利己主義」「争い」であり、経済学者は競争という心地の良い呼び方をしています。競争と利己主義はスポーツにおいて受け入れ可能であるとしても、経済の分野ではそれらは完全に破壊的です。なぜなら、それらはある人々に極端な富をもたらしますが、大半の人々には苦痛と不必要な死をもたらすからです。人類すべてに属するものを求めて競争し、多数の犠牲の下にそれを所有することは、現代社会の最大の諸問題ー飢餓と貧困、軍事や社会紛争、気候変動と環境問題、経済危機、移民などーの根本原因です。

この彼の認識により、私の中でパズルのピースが埋まるような感覚がありました。地球は、わたしたち人間と、地球上に存在する動物や植物や鉱物など様々な構成要素で均衡を保ちながら成り立っています。しかし、「所有する」という欲望を人間が持ち、現在のような「物質至上主義」に至った結果、一部の人間が地球の資源を「独り占め」することになり、世界の不均衡が起きて、貧困の拡大や繰り返される戦争や紛争が起きているのだ、と。
人間の「所有する」欲望そのものは無くならないし、自然な欲求です。
しかし「利己主義」ー自分さえよければ、他の人はどうであってもいいーという不調和なあり方が、私たちが見つめる必要があることだと私は認識しました。

協力と分かち合いに基づいた経済

クラリ氏:経済がすべての人々にとって効果的であるためには、協力と分かち合いの原則に基づいているべきです。そのような経済制度は「分かち合いの経済」と呼ばれます。この制度の本質は、すべての人が基本的必要に満たされることのできる物にアクセスすることができるように物を分かち合うことです。基本的必要とは、世界人権宣言において基本的人権として明記されているものです。それらは、食料、水、衣服、住居、医療、教育です。分かち合いの経済は地方で国家でグローバルなレベルで組織し、実行可能なものであり、家族や家計の中で常に存在してきたものです。

「分かち合いの経済」が新しい時代の経済を動かしていくことを提言しているクラリ氏のコメントを読んで、その可能性の大きさに驚嘆しました。シンプルだけど、いまの「貧困」や「戦争」や「環境破壊」を解決しうる手段です。そしてそれを阻んでいるのは、「自分と世界は分離している」という幻想です。
今の日本で、もし近所の子どもが学習困難な環境にあったら、勉強道具を提供したり、自分の知識を教えたり、学校にいけるようにお金を集めたり。やれる範囲で目の前の人を助けるでしょう。そんなふうに社会全体、世界全体まで意識を拡大していくことによって、クラリ氏のいう「分かち合いの経済」の顕現が可能なのではないかと思います。

つまり協力と分かち合いの経済の本質とは、利己主義や利他主義をも包含した大きな愛の表現の仕組みです。
利己主義や自国第一主義は、これからの世界がどうなるか分からないという不安・恐れによって現在、世界中で拡大しています。一方、愛に基づいた環境問題や人権問題を解決しようとする市民レベルの活動も広がっています。

人間は「愛」と「恐れ」を両方持っています。これからの新しい人類の未来においてそのどちらを顕現させるか・・・。わたしたち一人ひとりの日常の考えや行動が、パズルのピースのように世界を織り成す上で重要になっている時代だとあらためて感じます。
では、人々の意識の変化が起きるのと同時にどんな仕組みが「分かち合いの経済」に必要でしょうか?後編で見ていきます。

後編につづく



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