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「辞書になった男ケンボウ先生と山田先生」by佐々木健一を読んで

 「辞書」といえば 子供のいる家ならどこの家にも 一冊はある。
家によっては 子供の数だけあるかもしれない。
それもそのはず、「三省堂国語辞典」は 中学生の為に創られた辞書でもあったのだ。
しかし、この辞書という膨大な書物を 私たちは 学習の助っ人としてのみ扱っていたのではなかったか。

だが、佐々木健一氏は この辞書の中に男の人生を読み解く興味にそそられたのだ。そして、三省堂から出版されたこの辞書に込めらた壮絶な二人の男の人生を この本にまとめた。
小説のような又物語のような・・、しかし、これは現実に「国語辞書」と
いう物に関わり 人生を捧げた二人の男の物語であった。

 この二人の先生を取り上げた佐々木健一氏は 同じ三省堂書房から出版
された二つの辞書「三省堂 国語辞典」と「新明解 国語辞典」に「謎」を抱き、それを追ってこの本「辞書になった男」が 出来上がったことは 私にも とても興味のあることだった。

 はじめ私は二人の先生がどのようにかかわりあって行ったか?を年表を
元に書き出してみた。

メモといえど、汚い字で すみません!

 最初、見坊豪紀(けんぼう ひでとし)は 金田一京助先生から声をかけていただいた「辞書づくり」だったが、同級生の山田忠雄氏を加えての辞書づくりになった。
 
見坊(ケンボウ)とは珍しい苗字だったので、筆者はカタカナで表すこととなり、又カタカナで表すにピッタリのケンボウ先生の魅力にハマってしまったようだ。
<例えば>
 辞書の言葉に付随する事例を なんと145万語も一人で集めたケンボウ先生の日常生活は まるで漫画のような毎日であったという。
外へ出れば所かまわず「新しい言葉」「珍しい言葉」を集めるために夢中になり 電信柱にぶつかったり、主賓としての結婚式に大幅に遅刻してしまったり・・
しかし、「言葉集め」の仕事には 誠実で中立な態度を崩さなかった。
理系の頭脳で綿密な言葉集めをしたケンボウ先生の並外れた人柄が「三省堂 国語辞典 初版」から「第4版」まで改版されるまでに至る。

 山田忠雄先生は 自ら「私は最初からケンボウ先生の助手でした」と言い切ったように、ケンボウ先生とは 真逆の性格の堅物だったようだ。
が、面白いことに「辞書」の解説では 山田先生の方が、自由闊達でユニークな解説がなされ、学生には珍しい辞書として知られることとなった。

この解説法の違いが 同じ三省堂という出版社から、ケンボウ先生の「三省堂 国語辞典」と 山田先生の「新明解 国語辞典」を 産み出すことに
なった由縁であったのではなかったか・・

とにかく まだまだいっぱい書き足りないことはありますが「百聞は一見に如かず」と言われるように、この本を読んでみてはいかがでしょうか?

辞書づくりに掛けた二人の男の青春と晩年の執着が、見事にミステリーの如く解き明かされていくことの面白さに、きっとあなたも驚きを隠せないでしょう。

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