彼女がいい子な理由・その4(終)


つまり、この詩にこそ、一体化しすぎた家族のゆがみがあらわれているのだという。

「こういう病気の子供が出る家庭は、はた目には幸福そうに見えるが、あまりにも家庭的であることに執着しすぎるところがある。子供はその理想像に過剰適応してしまい、それがつらくても病気でしか表現できない。母親は、子供の気持ちを理解できなければ親ではない、などと真正直に考えてしまう」

彼女もきっとそうだった。
お母さんのことがいくら好きでも、同じ人間ではないのだから、合わないことがあって当たり前。
そのつらさを痩せることで必死に訴えていたのかな。

でも、お母さんだってかわいそう。
娘が死にそうなほど痩せていくことが、じつはつらさを訴えることだったなんて、普通はわからないよね。

それにしても、彼女がいい子な理由、というのが、死ななきゃいけない理由でもあったとしたら、哀しすぎる。

ある日、夢を見た。

夢のなかで、私は彼女だった。
なぜかダイエットをしていて、お母さんに口答えしていた。

「うるさい。自分が痩せられないからって、いちいち邪魔してこないでよ」

目が覚めて、思ったのは、彼女はきっと、こんな口答えはしなかったんじゃないかってこと。

私は中3くらいから、反抗期というか、母親に口答えすることが多くなったけど、彼女はたぶん、それができなくて、唯一の抵抗が痩せることだった気がする。

私がもし、いい子のままだったら、同じタイプだった彼女の気持ちも理解できて、仲良しになれたかもしれないな。

なんて。

彼女の姿を思い浮かべて、それを問いかけてみるけど、
答は返ってこない。

ただ、楚々とした、儚い笑顔を浮かべているだけ。



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