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人が支配する宇宙③「宇宙の建築物」

人が支配する宇宙③「宇宙の建築物」

様々な経済活動には低コストな輸送手段が必須であり、輸送コストの低下には大質量を高頻度に輸送できる手段の実現が望まれる。これは宇宙開発においても同様である。

基本的に設備や機材などの固定費は輸送回数が増えるほど、人件費や燃料費などの変動費は運行ごとの輸送量が増えるほど、トータルの輸送コストは低下する。特に再使用型ロケットで地表から地球周回軌道まで輸送すると、運行毎に輸送量の約40倍の推進剤が必要なため低コスト化に限界がある(飛行機より燃費が悪い!)。

そのため「オービタルリング」という地球を1周するリングから地表にケーブルを垂らした輸送手段が提案されている。詳細は後で書くが、地面から宇宙まで続く鉄道と考えて問題ない。宇宙エレベータとよく似ているがオービタルリングの方が技術的に簡単なため実現は早いはずだ。地球外のオービタルリングは金星のCO2井戸や火星の鉱物資源輸出やタイタンなど、ガスを持つ惑星や衛星に建設されやすい。また木星大気の汲み上げは普通の宇宙エレベータを使うが、これは木星が巨大すぎるため木星を1周するリングを建造できないからだ。その他、月のような大気のない天体では超電導リニア新幹線の約20倍の速度が出せるマスドライバという発射装置で宇宙への輸出ができる。

月は適度な重力や鉱物資源の入手性など、鉄鋼や半導体、太陽光パネルや核融合燃料、エネルギ輸出用の反物質製造など様々な宇宙重工業地帯の設置が適切に思える。なおマスドライバが月面に建設された場合、最も大量に輸出される月の商品はレンガになる。太陽エネルギで月の砂を焼き固めたレンガはオービタルリングのリング部の建材として、あるいはスペースコロニーのデブリや放射線のシールドに利用できる。

こうして月や火星や小惑星などから輸送された資材によりスペースコロニーが建造可能になる。

スペースコロニーの用途はおおむね次の7種類に分類可能と思われる。
・月や火星など低重力に長期滞在する人が健康維持のため短期滞在する施設
・ある天体に降りられない場合に、地表のロボット等へリモートアクセスする施設
・冷凍睡眠せずに旅客輸送をするための惑星間サイクラ(定期運行フェリー)
・宇宙空間を運ばれてきた物資を地表に下ろす前に保管や加工する施設
・極端な高温や低温、あるいは無重力や高真空が必要な工業製品の量産施設
・バイオテクノロジーなど危険な技術の実験を安全に実施するための施設
・富裕層の保養地や資産としての施設

参考文献
・Starshipスペック https://twitter.com/ZplusC1Bst/status/1492847472971968515?s=20&t=qdHX4yolo46xAH3zH-vnYg

・コスト100分の1へ、再使用ロケットが壊す宇宙の常識と残る課題(宙畑) https://sorabatake.jp/6690/

・オービタルリング(英語wiki) https://en.wikipedia.org/wiki/Orbital_ring

・火星サイクラー(wiki) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E6%98%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC

・アナログハック・オープンリソース:宇宙利用-地球圏 https://w.atwiki.jp/analoghack/pages/35.html

・アナログハック・オープンリソース:宇宙利用-地球圏以遠 https://w.atwiki.jp/analoghack/pages/40.html

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