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「ザ・コーチ 最高の自分に気づく本」

いよいよ最終回です。

星野が最後に大蔵に会ってから1ヶ月が経っていた。大蔵は、学校を建てるという自身の夢の実現に向けて動き出していた。星野も、仕事をする目的と自分にとっての生きがいが結びつき、まさに「やらなければならない」が「やりたくなる」へと変わり出していた。

その後も星野は大蔵から、ゴール設定をさらに効果的にする方法として、自分の価値観に合った言葉、自分が惹かれる言葉で夢やゴールを表すや、常に目標に向かって何らかの行動を続ける、その過程では、他人の行動特性と自分の行動特性を比べない、といったことを学び、『目標の達人ノート』に記録していた。

月日が流れ3年が過ぎた。

星野「プロ・コーチになります」
人は新たなゴールに向かう時、勇気のいる決断を迫られる。決断とは、勇気を持って今あるものを手放し、新たな道を選び、その道に進むこと。それが自分の人生を自分で歩くことだ。自分にとって今がまさにその時だ。

さらに5年後に、星野はプロ・コーチの道も軌道に乗り、大蔵にあの公園で教えてもらった、目標の達人になる方法をまとめた原稿が出版社の目に留まり、『目標の達人』というタイトルで本を出版、初版部数の2倍の増版とヒットし、出版記念パーティーを開くこととなった。その席上での挨拶で、

星野「もう一人、特にお礼を言いたい人がいます。実は、この本は8年前、ある公園で、その方と出会ったことで生れました。当時、私はダメな自分を悔やんでばかりで、生きる目的を見失っていました。ある日、営業の失敗に疲れて、さぼりに行った公園にその方はいました。たまたま、公園のベンチで隣り合わせたことがきっかけで、毎週その方と会うことになったのです。その方は、戦後の日本で、一から成功をつかみ取った方で、私はその方の生きてきた物語を聞いて、心が震えました。そこから、幸せな成功を手にする方法の授業が始まりました。
この本は、その方が木漏れ日の中で私に伝えてくれた数々の教訓と知恵が元になっています。『未来の自分は、今の自分の心の描き方で大きく変わる』その方は私にそれを教えてくれました。その方が私に伝えてくださったように、私も多くの人に伝えるのが使命だと思い、この本を書きました。
これから先、この本を手に取ってくれた多くの方々が、私が教わったヒントを得て、実行して、最高の自分を生きてもらえたら、その方に、少しでも恩返しができるのだと思います」

大蔵は会場にはいなかった。そして、サイン会の最後に、大蔵の妻から大蔵は1週間前に来世に旅立った事を告げられる。
大蔵の妻からは、真っ黒に陽に焼け、口元から白い歯をのぞかせ笑う大蔵と周りには満面の笑顔の子どもたち、後ろにはオレンジ色に塗られた学校が写った1枚の写真と、見慣れたスケッチブックが星野に手渡された。

大蔵の妻「星野さん、悲しまないでください。あの人は十分すぎるほど幸せでした。帰宅すると、あなたと話したことを、いつも話してくれました。
私たちには、子どもがいませんでした。だからあなたは、大蔵からバトンを受け取ってくれた子どものようでした・・・・
大蔵の想いは繋がりました。この本はその証です。どうか記念に、ここにサインをしていただけますか。私が旅立つ時は、大蔵に持っていってあげようと思います」
涙があふれて止まらなかった。老婦人も微笑みながら泣いていた。二人の涙が、サインの文字を滲ませた。
気づくと僕は、両手を広げて、目の前の小さな女性を抱き寄せていた。彼女は僕の腕の中で、透明になって僕と同化した。。。

最後はぐっと胸が熱くなる、感動のフィナーレでした。

まさに、夢と現実とのギャップに悩むすべての人に贈る ”生涯最高の自分” に気づく物語! 久々に心が震えるほどに感動しました。

全6回にわたり最後までお読みくださり、ありがとうございました。(完)

僕の手にある大蔵さんから渡されたバトンは、ところどころに土の染みが付いていて、それは、少しだけ遠い国の匂いがした。


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