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松本紹圭さんの記事

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私がみる循環葬 <後編>

私がみる循環葬 <後編>

<前編はこちら>

世界の動きと、ヒューマン・コンポスティングという選択肢今から6年前、金沢21世紀美術館で「DeathLAB:死を民主化せよ」(期間:2018年7月7日-2019年3月24日)が開催された。建築家のカーラ・マリア・ロススタインは、2013年に米国コロンビア大学大学院に「DeathLAB(死の研究所)」を創設。宗教や民族を超えた新たな葬送について、建築、宗教学、地球環境工学、生物学

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お寺を超えて、仏の智恵を-掲載記事より-

お寺を超えて、仏の智恵を-掲載記事より-

昨年、アメリカ西海岸バークレーにある「浄土真宗センター(Buddhist Churches of America)」で開かれた僧侶向け研修会で、講演のご縁をいただいた。

研修に参加されていたKen Yamadaさんから後日取材依頼をいただいて、先日「Higashi Honganji Buddhist Temples」に記事が公開されたので紹介したい。

今回、取材・執筆下さったKenさんは、浄土

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武蔵野大学 百周年記念「カンファ・ツリー・プロジェクト」のpodcast番組が始まりました

武蔵野大学 百周年記念「カンファ・ツリー・プロジェクト」のpodcast番組が始まりました

ここ数年関わってきた、武蔵野大学 100周年記念「カンファ・ツリー・ヴィレッジ・プロジェクト」のポッドキャスト番組が始まりました。

パーソン(person)という言葉の語源は、「声の主(master of voice)」とも言われるそうです。

人それぞれに放つ、それぞれの声。
この世の誰もが、今ここに響く person です。

本プロジェクトの中心にある「対話」では、世界の多様なパーソンとの

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変わりたくない、変わらねばならない。

変わりたくない、変わらねばならない。

終身雇用が一般的だった時代、会社の中には生え抜き社員の方が大半で、転職組は少数だったかもしれない。最近は、企業規模や業種にかかわらず、中途採用で働く人がずいぶん増えた。

産業僧としてさまざまな企業とご縁をいただいている。担当者として対応くださっていた方が、翌月伺った時には、退職されたと知らされることも何度かある。ふだん、住職の方々との付き合いが多い自分にとっては、「僧侶を辞める」とか、「宗派を変

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能力とは、何か

能力とは、何か

能力とは、何か。

「既に備わっているもの」「身につけていくもの」「鍛え高めるもの」と、捉え方はいろいろありそうです。

仏教には「開発(かいほつ)」という言葉があります。開発(かいほつ)は、本来あるものが養われていくプロセスであり、開発されるのは、そこにある仏性という「可能性」と言ってもいいかもしれません。

そこにあるものが、縁(他者や環境要素との関わり)のうえにひらかれ、生かされ、育まれる。

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ダボスにて@世界経済フォーラム 2024(2)

ダボスにて@世界経済フォーラム 2024(2)

引き続き、世界経済フォーラム(2024年1月15日ー 19日) の備忘録をシェアしたい。

◉ イベント:マインドフル・メディテーション with Penny Low

ダボス会議の期間中は、メイン会場で行われる公式MTGの他に、会場外では世界から集まる国や企業、個人が主催するの様々なイベントが行われている。

今回、友人のPenny Low氏からの誘いを受けて、モーニングイベント「Mindful

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ダボスにて@世界経済フォーラム 2024(1)

ダボスにて@世界経済フォーラム 2024(1)

2024年1月15日ー 19日、第54回世界経済フォーラム(ダボス会議)がスイス・ダボスで開催され、今回も参加のご縁をいただいた。

ここ3年続けて出席をしていると、顔見知りも増えてくる。朝から晩まで代わる代わる人に会い、話をして、イベントに参加する怒涛の日々、全力疾走の一週間でもある。

毎回、期間中は追われるように毎日が過ぎていくものの、会を重ねるうちに、宗教者として自分がここに参加している意

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ダボスにて@世界経済フォーラム 2024 -Faith in Action:信頼の再構築へ

ダボスにて@世界経済フォーラム 2024 -Faith in Action:信頼の再構築へ

2024年1月15日(月)~ 19日(金)スイス・ダボスで開催された第54回世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加した。今回のテーマは「Rebuilding Trust(信頼の再構築へ)」。

全日程を終えて、友人に会うためイギリスを経由して帰路に着くなか、印象的だったフォーラム最終日を振り返りたい。

朝、ダボス市庁舎で開かれた静かな「祈り」の場に参加した。

世界の不当な拷問をなくすため宗教を

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バトンをつなぐ循環医療

バトンをつなぐ循環医療

どんな症状の時も、病院に行く度に大抵の場合は行われることがある。

検温する、聴診する、喉を診る。

医療の基本にあるシンプルな「検査」が町のクリニックから大学病院まで、全国、そして世界の診察室で行われている。診察室だけではない。施設や企業への訪問医療、在宅医療、定期検診、さらには山岳医療から災害救助まで、あらゆる医療の現場で行われている。

もし、絶えず世界中で繰り返される「喉を診る」経験を集め

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What is this?

What is this?

師弟関係にあった法然と親鸞は、共に人生を通して仏教者であった二人だが、法然は衣(法衣)を着たまま浄土教の念仏道を説く道を歩み、親鸞は衣を着たり脱いだり「非僧非俗」の身として世俗を生きる道を歩んだ。

スティーブン・バチェラー氏はフランス在住の仏教者で、「セキュラー・ブディズム(世俗的仏教)」を提唱する先生でもある。僧侶として仏教修行を重ねた後、現在は「僧侶」の立場を降りて、特定の信仰や所属を超えた

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『TIME』誌 寄稿 「idea to help rebuild trust in 2024」

『TIME』誌 寄稿 「idea to help rebuild trust in 2024」

米国タイム誌が発行する「ダボス特別号」のヤング・グローバル・リーダーズ特集に寄稿した。特集テーマは「idea to help rebuild trust in 2024(信頼を再構築するためのアイデア 2024)」。

タイム誌の提示する「アイデア・オブ・ザ・イヤー2024」と、2024年の世界経済フォーラム年次総会のテーマである「Rebuilding Trust - 信頼の再構築」を絡めた企画だ

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仏教はOSか

仏教はOSか

人の行動や意識を司るような、身体や精神に染みついたあり方、考え方、行為など、よく、コンピューターのOS(オペレーティングシステム)やアプリケーションになぞらえて語られる。考え方をあらためることを「OSを入れ替える」と表現したり、人生の転機を迎えて「これまでの価値観をアンインストールして、新たにインストールし直す」ーーといった具合に。

宗教もまた、その人の世界観や死生観にダイレクトに紐づくことか

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はざまにあることの苦しみ

はざまにあることの苦しみ

 「上から/下から」「会社から/現場から」。そんなはざまにあって、どうしていいかわからない――。

 産業僧として、さまざまな企業のいろいろな職業、ポジションの方をオンラインで訪ねていると、そんな解消できないジレンマを多くの人が抱えているのがよくわかる。

 上からは逐次、指示や達成目標が降りてくる一方で、下からは「そうはいっても……」と実情に即したリアルな要望が寄せられる。

 同じ立場の同僚に

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