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海の街で出会っていく人たち

朝起きて、窓を開ける。暑くもないけど寒くもない。ちょうどいいくらいの朝の空気が部屋へと入ってくる。その窓の外ではいつもの猫たちが一時停止して、こちらをチラリと見たのち通り過ぎていく。たまに知らない猫も通り過ぎる。最近はお水の減りが早いため、器をもう1つ増やしてみた。2つあれば自分がいない間でも少し長くもつ。

着替えて化粧をし、出かける前に配信ライブをした。話したいことがある時、コミュニケーションを取りたい時、歌いたい時にするようにしている。活動のために無理にやったりすると承認欲求が暴発して、数字のためや、寂しさを埋めるためにやるようになってしまい、これはメンタルによくないなとコロナ禍中に感じた。SNSは依存させるように本当に上手くできている。自分がただやりたいからやる方が、視聴してくれている皆さんにもきっと楽しさが伝わる。世界中のどこにいても繋がれる便利なツールだからこそ、大事に使っていきたい。


自転車へ乗っていつもの坂道を下ろうとすると、ご近所さんたちが井戸端会議をしていた。どこへ行くの?と聞かれて、宇佐美までと答えると、えー!あんなところまで〜!と驚かれる。ここは車社会のため、少し離れた場所へ自転車で行く感覚がないのだろう。おそらく交通の便がいい都会人の方が自転車に乗っている。自転車は都会の乗り物なのだとここへ来てから知った。収穫楽しみにしてるねと言われたから、冗談で貝殻いっぱい拾ってきますと言うと、笑いながら行ってらっしゃいと見送られた。行ってらっしゃいと行ってきますが言える場所というのはこんなにも心が温まるものなんだなあと、ほっこりした気持ちを抱きながら坂道を下ってゆく。


少し風が強いため、自転車をゆっくり走らせながら浜辺を眺めていると、見覚えのあるシルエットの人物が子供たちと遊んでいた。だけど確信が得られない。自転車を止めてしばらくそちらの方を見ていると、その人物が近づいて来る。やっぱり海岸沿いをよくお散歩しているおじいちゃんだった。8月の個展に来てくれたらしく、ずっとお礼を言いたかったのだけどなかなか再会できなかった。やっと会えたね〜と互いに喜ぶ。夏の間は暑すぎて散歩していなかったらしい。色々話したいと言われたから、今日の夕方に毎日通っているというカフェへ行く約束をした。連絡先は知らないため、どちらかに何かがあったら会えない。令和の時代に口約束の待ち合わせがなんだか面白かった。

それから海岸沿いをひたすら走り、ハトヤを越え、宇佐美の海岸が見えてくる。伊東の海とは違い波が高く、サーファーも多い。ドッパーーーンとダイナミックに音を立てながら打ち寄せる波がカッコいい。本日の目的地である喜喜哀楽へ着くと、店主が出てきて迎えてくれた。名物の台湾メシを食べに来たのだけど、どうやら売り切れらしい。お茶だけにしようかなと思っていたら、一人分なんとかしてくれることなり、滑り込みアウトで滑り込ませてもらう。店内へ入るやいなや来ていたお客さんたちを紹介されて、自然と台湾メシを囲いながらのお食事会になった。

私は気がつくと知らない集まりの中にいることが多い。ずっと同じ場所にはいられないけれど、たまに止まり木にちょこんと座らせてもらい、色んな刺激をもらって、またしばらくすると飛び立つ。そんな人生らしい。宇佐美で何やら新しいことを始めるようで、面白いこと一緒にやりましょうなんて話をした。ただお昼ご飯を食べに来ただけなのに、まさか新しい繋がりができるとは思いもせず。隣町にも少しずつ繋がりができ始めている。


宇佐美の浜辺へ立ち寄り、穴から出ては引っ込むカニを写真に撮ろうと狙っていたけど素早すぎて撮れず。続々と現れるサーファーたちは、海の中へと入っていく。隣同士なのに、宇佐美と伊東でこんなにも海が違うなんて面白い。

出てきてくれないカニ。

約束していたカフェに着くとおじいちゃんを発見し、無事に待ち合わせ成功。もう何度も会っているけれど、待ち合わせして会うのはこれが初めてだった。どういう人なのか全く知らなかったけれど色んな繋がりを持っているおじいちゃんだったらしく、今度人を紹介してくれることになった。海岸沿いをプラプラしていただけなのに、まさかそんな展開にまで繋がっていくとは思いもせず。期待しているから何か起きても気づけないのか、期待していないから何が起きても気づけるのか。きっと身の回りで起きている出来事の数は変わっていない。日常は自分の捉え方次第で変わるものなのだと感じている。


帰路へ着こうと自転車を走らせていた時、週末の午後にしかやっていないR-Creationsがまだやっているのか気になり立ち寄ってみることに。店は開いていたけれど、どうやらちょうど閉店時間だったらしく、それにも関わらずマスターがコーヒー1杯飲んでいく?と言ってくれたので、ここでも滑り込みアウトで滑り込ませてもらう。私とマスターは同時期に伊東へ移住してきたいわば同期みたいなもので、お店の前を通る度にお客さんがたくさん入っているのを見ると、勝手ながら自分のことのように嬉しかった。

すると常連さんたちが店へ入ってきてお酒を注文。閉店のはずが夜の部開店。私がシンガーソングライターだと紹介されると1曲歌ってほしいと言われて、商売道具だから本当はよくないのだけど、いつもサービスしてくれるマスターのお店だからなと思い歌うことに。すると歌声が好きだと言ってくれて、投げ銭を渡してくれた。芸事にもちゃんとお金を払ってくれるかっこいい人だった。芸事は仕事として捉えてもらえないことも多く、タダでやるのも当たり前な世界だったりする。そこでサラッと対価を払ってくれる姿勢に驚いたと共に、自分もこういう人間でありたいなと改めて思った。


帰り道はさすがに疲れ切っていた。朝の配信ライブから始まり、行く先々でずっと誰かと喋っていたから当然だ。全部が一日の間に起きたことだなんて、若干信じられない。これから1週間は引きこもっていよう(笑)でも嫌な疲れではない。たくさんのプレゼントをもらったような、温かい気持ちでいっぱいだった。

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