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着物警察!24時!!

 ネットの海をほっつき歩いていて「着物警察」なるワードを目にした。語脈からなんとなくその意味は理解できる。
 人様の着物の着方について「あーだこーだ」難癖をつけてくる人々への蔑称なのだろう。そしてそんな熟語が出来てしまうくらい「着物警察」がはびこる世の中なのだろう……恐い!!!(;´・ω・)

 どうも、見知らぬ人にいきなり難癖をつけられたら恐くて泣いてしまいそうな藤野ニコ(漫画家)です。今回は私が出会った「着物警察(?)」についてお話したいと思います。

私は腰が痛かった!

 ので病院へ行った時の事。
 漫画家になってしばらくして私は腰痛に悩まされていた。ずっと座り仕事なので腰が痛くて椅子に座れなくなったら商売あがったり。なので潔く形成外科の病院へ行くこととした。えらいな!自分!
 お医者さんの問診を終えレントゲンを撮る事になった。検査着を渡されそれに着替えて自分の番が来るのを待合室のベンチに座って待っていた。

警察だ!腹ばいになって手足を広げろ!

 私がベンチに座ってすぐ、隣に座っていた見知らぬご婦人が急に私にこう言った。

「それ合わせが逆なんじゃない?」

 合わせとは着物の前面の…まぁググってください。とにかく私の検査着の着方が間違っていることをご指摘下さったようだ。
 私は即座にこう返した。

「え?でもこれ着物じゃなくて検査着ですよ??」

 そう、検査着だ。検査着は左右どちらでも合わせられるような構造になっている。身体の問題や検査の都合でどちらでも合わせられるような親切設計なのだろう。

 さて、私に職務質問をしてきたご婦人は私に反論されてどうしたか?

 答えは「無言」。無言でそのまま明後日の方向を向いたのだ。

 無言かぁ~~、そうきたか~~。
 いや、何か言えや。
 そのご婦人が本当に親切心で「あら大変!この方合わせが逆だわ!教えてあげなきゃ!」と思って私に声をかけてくれたのならそうはならなかっただろう。
 私に反論されても「あ!そういえばそうね!」とか「でも検査着でも不吉は不吉かも?」とか色々話のネタは広がるだろう。

 しかし結果は無言だ。

つまりは…

 件のご婦人が無言で返さざるを得なかった事でご婦人の心情がうっすらと垣間見えてくる。(私は物書きなので人の反応で何を考えているのか想像したり妄想したりする癖があるので正しいとは限らないのでご了承ください)

 ご婦人が「合わせが逆である」と私に指摘した時に想定していた、私が返すであろう反応は

「え?やだ!どうしよう間違っちゃった!恥ずかしい!(*>_<*:)」

だったのではないだろうか? 私は一見すると童顔で大人しそうに見えたのだと思う。しかし残念なことに私はまったく大人しい質ではなくアドレナリン過剰分泌型、売られた喧嘩即買います!!みたいな天上天下唯我独尊タイプなのだ。ご婦人は相手を間違えた。

 さぞかし恐ろしかっただろう。世の中ギャップは重要だ。可愛いものが実はホラーなとき、めちゃくちゃ恐いのと同じだ。大人しそうな人が実はヤベーヤツだったとき…「虎の尾を踏む」ということわざもある。
 ご婦人は焦っただろう、コンマ1秒で臆することなく反論してきたような奴だ。しかも普段の私は人と目を合わせるのが苦手なコミュ障だというのに、その時は急に知らない人に急に話しかけられた驚きでガッツリ目を合わせてしまった。ちなみに目つきは良い方ではない。

『状況が悪い!マズイ相手を小バカにしてしまった!や…やられる!!!』

からのご婦人の取った反応が、目線を遥かなる地平に漂わせ貝のように無言になる事だったのではなかろうか。まるで小さな子供が親に叱られた時に目をつぶってやり過ごそうとするかの如く。かなりの力技だ。

よくある事

 そう、こういう事は世の中よくある。いや貝のようになる事ではなくて「無知な新参者は叩いてしまえ!」という風潮の事だ。
 いわゆる「出る杭は打たれる」というやつだ。
 別に着物に限った事ではないだろう。ただ着物はやはり「伝統的」みたいな想いが強い人がいて、そういう人は黙っていられないのかもしれない。親切心の一種かもしれない。
 もしくは単純に、大人しそうな人や無知な人を辱めて愉悦に浸るサディストか…。

あとがき

 この「着物警察!24時!!」は2020年の2月に書いたまま、下書きとして熟成されていたものだ。
 なんとなくnoteの下書きをまさぐっていたら見つけたやつである。
 そういやこんな事もあったなぁと懐かしい記憶がよみがえった。
 なんで下書きのまま放置してたんだろ?
 なんかいい感じのオチがつかなくて面倒になったのかしら?

 ところで件の腰痛ですが、その時の検査で腰椎の下の部分が変形しているので十分気を付けて生活するように先生から言われたのだけど、特に悪化する事もなく、ずっと座り続ける日々を送っていますが、私の腰は多分元気です。
 いずれ私の腰が爆発しない事を祈る。(2021年11月1日追記)

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