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MANABIYA Report vol.01【武田重昭さん】

2016.12.16(金)18:30~21:00/00.Work Shop space & Office

『シビックプライド~都市と市民の関わりをデザインする~』
大阪府立大学 生命環境科学研究緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室 助教 武田重昭さん

1.シビックプライドとは

まちは市民の誇りや愛着によって作られる
現在の日本人はまちに誇りや愛着を持っているのは半分くらい

郷土愛:自分が生まれたまちという感覚 【受動的】
シビックプライド:自分が関わっているまちならどこでもOK【積極的】

自分はこの都市を構成する一員であり、都市をより良い場所にするために関わっているという意識を伴う。

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当事者意識による自負心
欧米では主に都市キャンペーンとして使われている。
・バーミンガム You are your city あなた自身があなたのまちです。
・バルセロナ B+B+B ひとがいっぱい集まるとバルセロナがニッコリする
・アムステルダム I amsterdam

I amsterdamとI Love NYの違い
I Love NY 私とNYはちがう、外からNYを愛する
I amstrdam アムステルダムと自分が一体となっている

2.シビックプライドの概念

(1)シビックプライドの始まり
産業革命期(1837-1901)のイギリスが始まり
都市を造るのが王侯貴族から富を得た市民に変わっていった
象徴的なのが建築物
まちに流入する人びとに市民意識を植え付けるため、都市間で争うように建物が建設された。

(2)シビックプライドの再燃
イギリスの都市再生
Towards an Urban Renaissance@アーバンタスクフォース(1998)

都市の再生において重要なのはなによりも「人」
物理的環境の再生だけでなくソフト的な社会再生の視点
日本の都市再生のお手本

(3)日本の都市再生
日本の都市再生 都市再生特別措置法:経済の再生、不良債権問題の解消→人はどこへ

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3.都市の作り方

(1)これまでのまちの”つくられ”方

計画→設計→施工→管理

ブラジリア症候群:空から見た都市作り→美しく車にとって機能的な都市は人にとって住みやすい都市ではない。
都市デザインと人がすれ違いを起こしている。

ケビン・リンチ 都市のイメージを構成する要素
①アイディンティティ/②ストラクチャー/③ミーニング
であるにも関わらず③ミーニングを除いて都市整備をしていた。

①+②:ハード、客観性:とらえやすいもの
③:主観性、主体性:とらえにくく複雑なもの

(2)これからのまちの”つくり”方
①+②と③をつなぐものがシビックプライド
複雑であり挑戦的、多様な現在では建築だけで人はつながらない。
さまざまなコミュニケーションポイントが必要。(図-1)
中心に位置するのは都市情報センター
都市の情報が日常を感じながら発信できる場所
コミュニティースペースが情報発信の可能性を秘めている。

図1

図-1 都市のコミュニケーションポイント
(シビックプライド シビックプライド研究会)

イギリス CABE
【it's our space】 Perpare→Design→constract→use
作ったら終わりではなく、useをどう考えるか。
これからはuseを中心に考える必要がある。

(3)どうすれば市民がまちの魅力をつくることができるのか?
まちを魅力的にするには、まちの魅力を構成する要素を知る必要がある。
①自然的な要素
②人工的な要素
③生活の要素
使えば使うほどオフサイトで効果を発揮する。→媒介効果(図-2)
まちを使いこなすには使い方を想像する力が大切である。日常、非常さまざまなシーンでの利用を考える。

日本のパブリックは豊かであるか?プライベート重視では?

図2

図-2 パブリックスペースの効果

【パブリックスペースが豊かな都市の事例】
・ニューヨーク、コペンハーゲン、メルボルン
・富山(グランドプラザ)大阪(中之島、グランフロント)姫路(駅前広場)

4.良質なパブリックライフ

【パブリックライフ】
公共空間で他者と直接的、間接的に関わりを持ちながら過ごす社会的な生活
何となく時間と空間を共有する

ジェーン・ジェイコブス
人が集まる場所に人は集まる

ヤン・ゲール(図-3)
必要活動 環境の質に作用されない
任意活動 環境の質に左右される
合成活動 任意活動の多さによる
任意活動が多い空間ほど良好な都市空間である。

図3

図-3 屋外活動の三つの型
(屋外空間のデザイン ヤン・ゲール)

都市へのアプローチ方法(図-4)
①個性【デザイン力】【主体性】
象徴的なモノを作る(キャラクター、シンボルツリー)

②関係【主体性】【包容力】
空間を操作して人が関わるチャネルを作る(プレーパーク、NYブライアントパーク、寺社の境内)

③共感【デザイン力】【多様性】
同じ時間と場所で他人どうしを意識できる関係性

④意味【多様性】【包容力】都市の歴史、空間の意味を知り都市空間の存在を感じる

図4

図-4 都市への4つのアプローチ

5.市民参加の形

まちの使いこなしをはぐくむのは人

仕掛ける人が大切
イベントなどのプログラム 10,000人/回より100人/100回

楽しんでいる人たちを見ることが出来るのはイベントを仕掛けている人たち

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Bryant Park Web http://www.bryantpark.org/ より

継続的なまちの運営を支えるのは公共空間を介した弱いネットワーク

【日本】
芝生で遊ぶの禁止
どこまで市民参加する必要があるのか?
参加のはしご
行政←1,2,3,4,5,6,7,8→市民 ※すべてを市民がする必要はない。
市民はビジョンやマネジメントに参画すればよいのでは?市民(アマ)と専門家(プロ)のコラボ

良質なパブリックライフにより豊かな人生を!

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6.参加者からのラブレター

NPO法人シミンズシーズ/株式会社加古川まちづくり舎
阪口 努 さん

vol.01 阪口努 R

「都市」や「まち」はどこかでだれかが考えて、つくられるもの。と捉えてしまいがちですが、一気に「わたしたち」と「まち」の距離感を縮めてくれた第1回でした。

シビックプライド–
一人一人が誇りをもち、自慢できるようなまちをどうしたら作れるのか。いくら優秀な国や行政が考えても、それでは実現することは不可能で、市民一人一人が、暮らしのなかでまちをつかっていく、そんなプロセスのなかでしか、実現できないことがポイントにあると感じます。

今回のテーマで切り離すことができない言葉に、パブリックライフという言葉がありました。公共空間で、他者と直接的、間接的に関わりをもちながら過ごす、社会的な生活という意。では、「日本のパブリック=公共は、豊かなのか?」という問いについてはどうか。どうもカチンコチンで、柔らかさがなく、関わりにくさを感じてしまいます。

もっと、パブリックをダイナミックにつかっていくこと。

そして、武田先生の数ある事例を聞くたびに、自分を含め、一人一人がまちを、加古川をつくっていく一員である、ということを優しく教えられました。

さいごに、MANABIYAは、そんなまちのやわらかさを生み出す、まちへの参加の機会として、大きな大きな意義があると、感じています。

全部で2933文字でした。(タイトル除く)

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