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「セツブンソウ」のマイクロノベル 他3篇 #78

 鬼は外の声に、豆が飛んで来る。やめてくれ、どうしてそんな嫌うんだ。逃げる途中、鬼はそっとしゃがんで大きな手でセツブンソウを摘んで去って行く。セツブンソウの花言葉は「人間嫌い」、鬼がつけたとも言われる。

 この辺りでは、仏さまはこうやって地面から生えてくるのだよ。たくさんの仏さまがいらっしゃるよう、丹精にこの木を育てるんだ。よかったら、この木の種子をあげよう。この木も、ほかの惑星から持ち込まれたそうだ。

 夜道で梅の香に誘われて、ぼんやりと薄明るい夜道を歩くのは心地よかった。闇の中に香りの灯りが見えるように進んでいった。気がつくと、夜明けの梅林にいた。ここの梅は香りが強く、「道知辺」という名だと知った。

 懐かしいな。そのスノードロップは、中学校の生物工作で作ったやつ。地植えにしたら気温と日長の変化を感じて、いまでもちゃんと咲いてくれる。しかも、香りはバニラ風に変えたはず。ほら、葉っぱに名前も入ってる。

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