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「セミの抜け殻」のマイクロノベル 他3篇 #58

 やっと地上に出られる。これで空を飛び、鳴くこともできるんだ。期待に満ちて夕暮れの木の幹を登っていったのに、脱皮して抜け殻として残されるなんて考えもしなかった。でもそうしないと飛べないんだよな。あばよ。

 けなげやのう、伐採された街路樹がここにいた証にと、夏の間は道路に影ができる。それは、切られた街路樹が化けて出てるのと違いますか。昼間から出るのか。でも、そんな影の木に効く除草剤売って奴いるそうですよ。

 老朽化した未来都市の建物に囲いが作られ、解体されていく。いや、囲いの中では解体ではなく、地面に埋めているのだとも聞く。五十年も経って忘れられた頃、レトロ未来遺跡として掘り出し、一儲けする皮算用らしい。

 子どもの頃、拾ってきた散歩道。そこには自転車が置きっぱなしになっているけれど、季節もずっと新緑のままだから、時間の流れが違うのだろう。いまでもたまに散歩に出かけて、あとは大切に引きだしにしまってある。

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