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あなたはむし歯になりやすい!?歯医者さんで学ぼう!むし歯のなりやすさチェック機能「デカゴンC」開発秘話


こんにちは!富士通 広報 わたなべです。
皆さんは、むし歯や歯周病になる原因を知っていますか?
甘いものを食べ過ぎたから?あるいは、歯磨きが不十分だから・・・?
実はむし歯も歯周病も、様々な要素が絡み合って発症する多因子性疾患と言われています
その原因を正しく説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。
一方、それらの疾患は、正しい知識を持ち、日々のセルフケアと定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアを実践すれば予防できる、稀有な疾患とも言われています!

富士通では、健康経営の一環として「口腔・歯の健康施策」を定めており、従業員の口腔・歯の健康維持および増進に向けて様々な取り組みを展開しています。
その取り組みの一つとして、富士通クリニック歯科(神奈川県川崎市中原区)を2023年9月に、治療に加え予防も重視する診療所にリニューアルオープンしました。予防型への変革の過程において、患者さん自身のむし歯のなりやすさを可視化し、むし歯の原因やリスクについて理解してもらうことを目的にした「むし歯のなりやすさチェック機能(通称:『デカゴンC』)を開発し、富士通Japanが提供中の歯科医院向け「Fujitsu予防歯科クラウドサービス」の機能として追加しました。2024年1月には、これを、既に本クラウドサービスを導入している他の歯科医院にも提供を開始しています。

リニューアルした富士通クリニック歯科の診察室の写真
リニューアルした富士通クリニック歯科の診察室

今回、「デカゴンC」を開発した富士通Japanの今出に開発秘話を寄せてもらいました。

むし歯のなりやすさチェック機能「デカゴンC」とは?

「デカゴンC」が誕生するまでの経緯やコンセプト、苦労話などなど、開発の”リアル”な裏話をご紹介したいと思います!
ちなみに「デカゴンC」のデカゴンは英語で10角形を表し、CはCaries(むし歯)の頭文字をとって命名しました。一度聞いたら忘れられないと好評をいただいております(笑)。
「デカゴンC」は、患者さんの口腔状態や生活習慣などの情報を歯科衛生士が入力することにより、むし歯のなりやすさの度合いをレーダーチャートでわかりやすく可視化し、むし歯の原因やリスクを伝えるための患者教育機能です。歯科衛生士が患者さんの現在の口腔状態を説明する際や、ブラッシング指導などの予防行動を伝える際に活用でき、登録された情報は患者さんごとに歯科医院で蓄積・管理が可能です。また、分析結果をPHR(Personal Health Record)として患者さんとスマートフォンで共有したり、その場で印刷して紙でお渡したりすることもできます。

「デカゴンC」入力結果の患者側画面イメージ

そもそもなぜ開発に至ったのか

生涯にわたって口腔の健康を守るためには、患者さんが自身のリスクやそれを踏まえた対策を理解し、日々実践していくことが不可欠です。
伝える側と理解する側。つまり、歯科医療従事者と患者さん、双方の役割をサポートする仕組みが必要だと考えました。それを、富士通自ら生み出せないか、さらに、その仕組みを社会にも還元することにより、口腔のWell-Being実現に貢献できないか。富士通クリニック歯科を予防型へと変革するにあたり、関係者で議論する中で、デカゴン開発プロジェクトがスタートしました。

「デカゴンC」開発プロジェクトメンバー

このプロジェクトでは、富士通グループおよび社外の有識者が組織や国境の垣根を超えOne Teamとなって、開発を推進しました。むし歯学(カリオロジー)の世界的権威であるスウェーデンのドーベン・ビルクヘッド先生と、NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会(PSAP)」の理事長で歯科医師の西 真紀子先生監修のもと、むし歯のリスク因子の仕様を具体化し、富士通Japan 予防歯科チームと富士通 デザインセンターでアイデアをかたちにしていきました。さらに、富士通クリニック歯科部の歯科医師や歯科衛生士の臨床目線の意見を取り入れて改良を重ねていき、健康経営における予防歯科プロジェクトオーナーの健康推進本部と健康保険組合、また知的財産チームの全面的なバックアップのもと進められました。

2023年10月に、ビルクヘッド先生(写真中央右)と西先生(写真中央)を講師に迎え実施した全社予防歯科セミナーの関係者集合写真
2023年10月に、ビルクヘッド先生(写真中央右)と西先生(写真中央)を講師に迎え実施した全社予防歯科セミナーの関係者集合写真

コンセプトは「Lagom(ラーゴム)でいこう!」

デカゴンを象徴する一つの言葉があります。「Lagom」です。「ラーゴム」と読み、スウェーデン語で「ちょうどいい、ほどほど」という意味があります。
例えばもし、「むし歯予防のために甘いものを一生我慢しましょう」と言われても、きっと長続きはしないしないですよね(笑)?
「あなたにとって”ちょうどいい”、無理なく継続できるケアの方法を一緒に考えましょう」という想いが込められています。
さらに、システムが出した結果に左右され過ぎるのではなく、”ほどほど”に参考にしながら、歯科医療従事者と患者さんの対話を大切にしてほしいという願いも含まれています!

デカゴンの新規作成時にポップアップ表示される画面。デカゴンの利用目的や位置づけを歯科衛生士から患者さんへ説明する際に活用いただくことを想定
デカゴンの新規作成時にポップアップ表示される画面。デカゴンの利用目的や位置づけを歯科衛生士から患者さんへ説明する際に活用いただくことを想定

“医学的な正確性”と”患者さんにとってのわかりやすさ”にこだわった

開発にあたって苦労したポイントは大きく二つあります。
一つ目は、科学的根拠に基づいたパラメーターや判定基準を採用し、それを患者さんに伝わるように表現することです。
過去から直近に至るまでの論文や文献情報をもとに、むし歯に影響を及ぼす因子を10個(サブグループも含めると15個)洗い出し、影響度合いの大きさなどを考慮して設計していきました。
画面に表示する言葉は、医学的な正確性を保ちつつ、できるだけ専門用語を平易な言葉に置き換えて、患者さんにもわかりやすく表現するように心がけました。
もう一つは画面デザインです。
今回、1986年にビルクヘッド先生を中心として開発された「オクタゴン」という8角形のレーダーチャートによるむし歯リスク評価モデルと、赤・黄・緑の3色によって、ひと目で状態の度合いが分かる信号機モデルを参考にデザインを検討しました。患者さんはもちろん、教育する側の歯科衛生士にとっても使い勝手が良くわかりやすいデザインにするために、色のトーンや配置、親しみやすい歯のアイコンを採用するなど、細部までこだわり抜いてかたちにしました。
ビルクヘッド先生との議論はスウェーデンとの時差も考慮しながら進められ、やり取りは英語が中心。互いに認識齟齬がないように、またベストなかたちを実現するために膨大なやり取りを重ねました。検討に行き詰まった時でも、先生のポジティブでチャーミングな人柄のお蔭で楽しく乗り越えることができました(感謝)。
約半年におよぶ「デカゴンC」の仕様検討の結果、むし歯学(カリオロジー)分野におけるアカデミアの知見と、患者さんと日々向き合っている臨床家の視点、またUX(ユーザーエクスペリエンス)をとことん追求するデザインおよび開発チームの叡智を結集し、「デカゴンC」を仕上げることができました。デカゴンの名称と画面デザインはそれぞれ、商標・意匠として権利を出願しています。

真剣かつ和気あいあいとしたオンライン会議の様子
真剣かつ和気あいあいとしたオンライン会議の様子

利用者の声と今後の展開

実際に利用した方からは、以下のような声をいただいています。

■歯科医院

「レーダーチャートで結果が一目でわかり、リスク因子もわかりやすく表現されているので患者さんの理解を得られやすい
「これから予防にも力を入れていきたいと思っていたところ、デカゴンは歯科衛生士と患者間のコミュニケーションを手軽に助けてくれるのでありがたい

■患者さん

「むし歯の原因をちゃんと理解するきっかけになった」
自分の情報をスマ―トフォンで共有してもらい、モチベーションが上がった!これからは定期的に歯医者さんに行き、セルフケアも頑張ろうと思った」

歯科衛生士が「デカゴンC」を活用しながら患者さんと楽しく対話する様子
歯科衛生士が「デカゴンC」を活用しながら患者さんと楽しく対話する様子

デカゴンは、歯科診療現場以外でも活躍の場を広げようとしています
とある自治体では、歯科検診の現場で「デカゴンC」を活用することにより、歯科検診受診率の向上(無関心層へのアプローチ)や住民の行動変容促進への効果検証を計画しています。
また現在は、スウェーデンの歯周病専門家の協力を得て”歯周病”のなりやすさチェック機能「デカゴンP」の開発にも取り組んでいます
「デカゴンC」や「デカゴンP」を通じて、一人でも多くの人が口腔の健康に関心を持って行動し、生涯に亘って健やかに暮らせる社会の実現を目指していきます。
DX(Dental Transformation)への挑戦は、まだまだ始まったばかりです!

※4月19日に「オクタゴン」に関する情報を一部修正いたしました。

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