友、近場より来たる

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「今日は友だちを紹介するでチュー」
 ん?
 びすの後ろから恥ずかしそうに顔(なのか?)を出したのは、真っ赤なミニカーである。
「ポルシェのポルくんでチュー」
「例によって杉並区役所のひと?」
「ひとじゃないけど、例によって例のごとくでチュー」
 杉並区のコンピュータの考えていることは、いまいちよくわからない。
「ポルちゃんは、いま、後学のため、杉並区内を放浪しているでチュー」
「いいんじゃないの」
「そこでお願いでチュー」
「なんだい」
「電源をお借りしたいでモス」
「ポルちゃんは、これでも電気自動車なのでチュー」
「そりゃすごい。ハイテクだなー。何時間走れるの」
「三分間でチュー」
 ウルトラマンかよ。
「そこらへんのコンセント使っていいから」
「ありがたいでモス」
 びすの友だちは、結局、泊まっていった。
 三分走るために十時間の充電が必要だそうだ。
 杉並区の技術力もまだまだだな。

(了)

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