宣戦布告

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 ポーン。
「杉並区は中野区に宣戦布告いたします」
 という回覧メールが杉並区から届いた。
 宣戦布告って。ええーっ。
「びすー。どうなってんだ」
 迷彩ヘルメットを被ったびすがひょいとポケットから顔を出した。
「戦争でチュー」
「まじで? なんで中野区と喧嘩になったんだ」
「漁業境界線の諍いでチュー。あれ?」
「それは岩手県と青森県が揉めてるやつだろう」
「それでチュー」
「杉並区も中野区も海に面してないのに漁業権もなにもあったもんじゃないよなー。宣戦布告された中野区も困っているだろう」
 杉並区の行政はすべてコンピュータが行っているのだが、どうも最近、暴走が目に余る。
「熱暴走でもしたのかな」
「……」
 びすも再起動中だった。困惑が限度を超えると、リセットがかかってしまうのだ。
「中野区が本気にしなきゃいいけど」
「区長」
「なんだ」
「杉並区が宣戦布告してきました」
「またか。今度はなんだ」
「漁業権がどうとか」
「ほっとけ」

(了)

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