杉並区、西へ

「きちゃったねえ、東国原」
「まさか総理になるとは思わなかったでチュー」
「なにするんだろうなあ」
「日本解体でチュー」
「どういうこと?」
「あのひとは宮崎県のことしか考えてないでチュー」
「まあ、そうだろうなあ」
「東大や首相官邸やマスメディアや黒字企業はすべて宮崎にもっていくそうでチュー」
「おお、すげえな、それは」
「これからは宮崎の時代でチュー」
「ということはその格好は?」
 びすは三度笠を掲げて、
「一宿一飯の恩義、忘れないでチュー」
 と言った。もっと世話した気がするけどな。
「このたび、わが杉並区役所も宮崎県に移動することになったでチュー」
「わけがわかんないよ」
「杉並区出身の宮崎在住者にサービスするでチュー」
「じゃ、おれも行こうかな」
「やったー」
 びす大喜び。
「宮崎に杉並街を作るでチュー」
「おーっ」
 よくわからないなりに盛り上がっていると、びすはいそいそとポケットに潜り込んだ。
「なんだ、自分で旅するんじゃないのか」
「宮崎は、ネズミにはちょっと遠いでチュー」

(了)

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