最期

 ひさしぶりに神戸の実家に行ったら、掘りごたつにじいちゃんが座っていて、思わず「ひっ」と叫んでしまった。
「なんだよ、これは」
「剥製だよ」
 と母親が言った。
「じいちゃん、と声をかけたら、死んでおったもんでな。あんまり面白かったから、そのまま置いてある」
「バカじゃないの」
 まだ心臓がばくばく言っている。
 その母親も、宅配便の納品書にサインしながら亡くなるという面白い死に方をしたので、そのまま玄関で剥製にされてしまった。
 来客はみんな挨拶をしてから不審な顔をし、最後に腰を抜かす。
 どうもうちは面白い死に方をする家系らしい。
 遺産として神戸の家を引き継いだオレも、いつかなにかをしでかしてやらなきゃと虎視眈々とタイミングをねらっていた。
 そんなある日、トイレで大便をしている時に、でかい心臓発作が来た。
「うわっ」
 と叫びつつ、しめたとも思った。
 これでトイレはオレのものだ。
 邪魔だから、埋葬されちまうかもしれないが。

(了)

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